きみ去る夜よ

去る、さよなら、いかないでが言えなくて。
はしれ、このまま、見たくないものすっ飛ばして。
さけぶ、声を、喉の奥で飲み込んで。

君はいない、もういない。もしかしたら最初からいなかったのかも。
ここにいない、もう見えない、あの後ろ姿さも今はとうに。
聞こえない、君の声が、もう僕の耳には届かなくて。
笑えない、笑ってくれよ。この惨めな僕をほら。

心なんていつも自分勝手。
勝手に期待して、期待した分だけ膨らんだソレが、見事に破裂して。
痛みより恥が買って。逃げ出したい、逃げられない、笑われて。笑ってくれよ!

今叫ぶよ、届かなくても、喉が潰れても、声出なくても。
届かなくても叫び続ける。今を、今を、今を。

見届けたいよ、君の背中、伸ばした手は掠りもしない。
だとしても、そうだとしても、僕は目を逸らさないよ、もう。

君の声が聞こえた気がした。

僕の全て賭けたっていい。買っても負けても、勝負に出なきゃ、ずっと負けだろ。
見えなくても、言えなくても、聞こえなくても。
笑ってくれたら、笑えたのなら。

猿でもわかるさ、大事なことは一つだけ。
何かに届いた、応えがあった。

夜空に浮かぶ、月が綺麗だ。

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