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平日に読む、

疲れ切った平日夜に読んでほしい本たち

月曜日

おやすみなさい、また明日
明日は月曜日、 ちょっと憂鬱な日ですね、 

そんな時に読んでほしい本が遠藤周作のぐうたら人間学です これは狐狸庵(遠藤周作の一人称)先生が日頃感じているエッセイ集 読んでいると本当にくだらなくてふふっと笑ってしまうことが多い文章です、とある学生の尿検査の試験管に焦げ茶色の物体が詰まってきた話とか…狐狸庵先生の日記みたい、 なんだか人生こんなに息を抜いて生きてもいいんだな、と感じさせてくれる本です 

息の詰まりそうな月曜日にぜひ、

火曜日

課題も仕事も山ほどあって他人からはよく分からないことを言われて面倒な火曜日 

そんな日に読んでほしいのは 円城塔 「後藤さんのこと 」
最初から断っておきます、意味がわかりません。後藤さんというんだから人なんでしょう?なんていう前提をつけてかかってはいけない、そんなことをしていると早々に作品からグーパンで殴られます。 しかし、だからといって読者を置いてきぼりにせず、丁寧に説明してくれるから後藤さんを分かった気になってしまう、ただその事実を鵜呑みにして自分の常識の範疇で後藤さんという存在を仮定してしまうと、次の文章との齟齬が生まれてくる 「あ、後藤さんって、なるほどそういう存在だったのか(もう後藤さん=人という概念は文章の前半で早々に砕かれているため存在になる)」 …「?あれ…後藤さんとは…?もはや実体がない…? 」 の繰り返し。 正直読んでいて気分のいいものではありません、あまりに丁寧な説明と常識の範囲で収まらない展開は面倒です 

まあ目には目を、歯には歯を、面倒には面倒を 

このくらい面倒なものを読んだあとにふっと息を吐くことで 面倒なことの糸口が見つかるかも知れません、 

水曜日

1週間の真ん中 何もしたくない、重だるい仕事や課題も全部ふっ飛ばしたくなってしまう水曜日に読んでほしいのは、平山夢明の他人事 胸糞悪い話のオンパレードです 特に秀逸なのが短編集の題名でもある「他人事」 倫理って?道徳って? 私たちが今まで生きながら一生懸命学んできた、体得してきた、平和な世界をつくる概念をこの作品は一瞬で破壊します 交通事故によって幼い娘と同乗していた奥さんが瀕死、主人公の男も脚を挟まれ身動きがとれない状態に そこに現れた1人の男に主人公は助けを頼みます、しかしその男は無駄な屁理屈ばかりを叩いて一向に助けるそぶりを見せません。(ドアを開けた瞬間に血を流している女や赤ちゃんから菌が移って破傷風になったらどうするんだ、と) 一般的な物語なら主人公マジック(最悪な状況下でも奇跡的に救いの手が差し伸べられるシステム)が働いてもおかしくないシーンでも自由落下した卵がそのまま割れてしまうような当たり前さでストーリーはより残酷により暴力的に進みます、 救いひとつないこの作品の展開はある種の爽快感を誘うほどです、理不尽・身勝手というようなチープな言葉では収まりきらないこの言葉の暴力をぜひ味わってみてください

それでは、おやすみなさいまた明日 

木曜日

まだまだ週の真ん中、木曜日
頭を空っぽにして楽になりたいときもあるはず、 

そんな時に読んでほしいのが中原中也全詩集 、ここで突然の詩集?となりますが、詩集です。 ゆあーんゆよーんゆあゆよんのサーカスで有名な彼の作品は独特の文字遣いとリズムによって、優しい描写ができることが特徴的だと思っています 私が特に好きなのは、春日狂想 



愛するものが死んだ時には、 自殺しなきゃあなりません。 愛するものが死んだ時には、 それより他に、方法がない。 けれどもそれでも、業(ごう)(?)が深くて、 なおもながらうことともなったら、 奉仕(ほうし)の気持に、なることなんです。 奉仕の気持に、なることなんです。 愛するものは、死んだのですから、 たしかにそれは、死んだのですから、 もはやどうにも、ならぬのですから、 そのもののために、そのもののために、 奉仕の気持に、ならなきゃあならない。 奉仕の気持に、ならなきゃあならない。    -後略- 

中也の詩にはあまり喜びとか俺頑張る、みたいな正の感情は多く出てきません。その場におかれた人にとっては至極辛く悲しいような状況を軽快なテンポと優しい口調で歌い上げている なんだかそのギャップにふっと笑いがこみ上げてきてしまいます、 時にはぼんやりと口に出して、自分の中の負の気持ち悲しい気持ちを認めてあげるのもいいのかも知れません 

それでは今日も一日、

金曜日

あとちょっとでお休み金曜日

月曜日から走って走って息切れ気味な金曜日に読んで欲しいのが、米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」 最後の1文に殺されます。 これほど、物語の終わり方が分かりやすくしあわせで、おぞましく綺麗な物語はなかなかありません、 

こちらの物語は5つの短編集で構成されています。
 ・完璧主義によって倫理を踏み外してしまった女の子の話
・欲に任せて兄を殺した女の子の話
・冬の山荘にお客様をもてなすために人を消した女の子の話
・自分の敬愛する主人に尽くすことどんな命令にも応えることで喜びを感じる女の子の話
 ・自分が好きな読書会に入りたいが故に狂気に走る女の子の話 

この物語に出てくる女の子はみんな自分の好きなものを手に入れようと必死です。自分の完璧なイメージを保ちたい、お客様を招いてもてなしたい、自分の崇拝する主人に尽くしたい…ちょっと身近な人の命は無くなってしまうけれど、この物語の全ての第三者的な視点から見た最悪な結末は、彼女たちが自らの至上の喜びを叶えるために、行動した結果なのです。 だから、 この本はしあわせな物語です 走りきってがんばったみなさんもぜひ読んで幸せな気持ちになってみてください


1週間お疲れ様でした、

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優しさに感謝します。好きです。
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いとうという名前でいろいろ書き綴ってます。ミスiD2019 文芸賞。物書きと被写体と映像と服作りとマルチクリエイターを気取ってます。

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