マガジンのカバー画像

45
詩をまとめました。
運営しているクリエイター

2021年5月の記事一覧

質量

その張りつめた君の魅力が
どこから来たのか知ってるよ
たらふく飲みすぎた泥水は
飽和点なんかとっくにこえて
君のバランスを崩すわけだけど
ぷっつり糸が切れる前の
最期の痙攣が伝わって
背筋を伝う憎悪の甘みと
奈落の吐息で身罷る快感
舌でころがし脳汁すすって
同族嫌悪でしめつける
裏腹の優しさと
滑らかな憎しみを
今日も非生産的に抱きしめようか

かじりとった憐れみの
果汁がしたたり鎖骨を濡らす

もっとみる

マシュマロの町

ここに来て得たのは退屈だった
認めたくはないけれど
きっと張り合いがなくなったんだ
今の僕は死んでいる
殺される直前ほど
生きたいって思うのは
やっぱり当たり前のことみたいで
甘い香りが一面漂う
マシュマロみたいなこの町は
僕の気力を奪うだけ

排水溝に飛び込めばいい
淵めがけて飛び込めばいい

でも今の僕には
願うだけで何もできやしない
最低限の興味すらも
最低限の気力すらも
マシュマロみたいな

もっとみる

羅刹

羅刹になりきり不幸を喰らう
どうせ有限その他大勢
はき違えの個性で優劣つけようと
無我夢中で貪り尽くし
嚥下し消化し血肉にし
覚悟もないのに踏み入れた

ぬかるみ冷たく腐臭を放ち
気づいた時には空まで覆った
汚泥の天井光は届かず
目隠しされた百鬼夜行が
本能のままに踊り狂う
求め続けた退廃と
広げられた空洞で
羅刹になりきり不幸を喰らう

見知らぬ苦悩は羨望し
馴染んだ苦悩は忌み嫌う
羅刹になりき

もっとみる

いつかの夜

傷口から溢れる優しさを
必死で舐めとろうとした君と
傷口から溢れる優しさに
必死で夢を見出そうとした僕は
世界の隅っこの湿気だらけの部屋の中
お互いの憂愁を天秤にかけ
危うい綱渡りに身をやつした

背負った重みの優劣を
比べる必要はなかったけれど
脆くて頼りない砂の城を
なんとか守りぬけたのは
比べて蔑み同情し
絡んでもつれてこじらせて
憤怒と慈愛と嫌悪なんかをないまぜにした
強固な城壁を築くこと

もっとみる

日陰生まれすみっこ育ち

すでに来世に期待しちゃってる
コールド確定消化試合
見込みがないなら見られてもない
そんならさっさと踊ろうか
開き直ってとんたたた

子宮の中からこんにちは
すでに10点ビハインド
どうしてこんなになっちゃったかな
コウノトリさんの方向感覚
狂ってふらふら無差別爆撃
そうだそうに違いない
自意識過剰で被害者意識
棚に上げすぎフェードアウト
どうせ人間八十年
科学者さんたちちょっと待ってね
日々精進

もっとみる

地球人Aで何が悪い

教室の片隅の日陰のあたりの
机上に広がる妄想性交
穴ぼこチーズの物知りさんは
すかすか頭と体を抱きしめ
よだれを飛ばしてまくしたて
曰くあの子は云々あいつは云々
キラキラお目々で群衆興奮
辟易Aさん小さくなって
そらした視線に光はない

大衆娯楽を提供します
私の望みはみんなの望み
あなたの望みは知らんふり
教室の真ん中でふんぞり返る
王さま衣服は着ておられない

首から下げたドッグタグ
英数字の

もっとみる