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まいにち子育てヒント#7 海外の幼稚園④先生が多いからできること Villa Montessori

前回までに述べた、Villa Montessoriの授業観察およびインタビューをもとに、わかったことを2点挙げます。

1.自律心に特化した教育

Villa Montessoriの教育の様々な取り組みや環境は、子どもたちの自律心に好影響を与えていることを感じました。

片付けをしっかりすることに対する徹底はその代表です。他にも、移動時に常に列を作ったり、全く喋ったり動いたりしない時間を作ったりと、子どもたちに「我慢」を義務付ける場面が随所で見られ、少しでも守れなかった子にはきちんと冷静に注意していました。それに加え、みんなの前で話す機会を作ったり、自由時間が手持ち無沙汰にならないよう指導したりと、自分で積極的に動かなければならない経験を多く積ませていました。

こういった「自分を律し、やるべきことをやる力」は、その後の人生において非常に役立ちます。実際に、近年の研究では幼児期にこの力を育んだか否かで、その後の社会的成功に差が出ることが統計的に示されています。Villa Montessoriの教育は、多面的なアプローチを通してこの能力を効果的に育てていました。


2.先生の数とふるまいの重要性

Villa Montessoriにおいて、1で述べたような教育を実現できている最大の要因が、「先生の数」でした。

授業を観察していてわかったのですが、20人のクラスに対して先生が3人もいることにより、教室で起こった大人の指導が必要な場面に、先生の誰かが必ず介入することができていました。

例えば、子どもたちが教室でそれぞれの作業に没頭している時、ある場所では遊びがひと段落着いた子に片付け方を教えていて、違う場所では危ないことをしようとしている子に注意している、といった場面がありました。これは先生が2人以上いないと不可能です。

また、先生たちは子どもに話しかける際、大人に話しかけるのとほぼ変わらない声色で、目線を合わせて諭すように話していました。このコミュニケーションの取り方をする場合は子ども1人に対して先生1人が一定時間つきっきりで接することになります。

このように、先生が多いために教室で起こる一つひとつの問題に対し、時間をかけて対処できていました。そして、それらが積み重なって騒ぐ子どもがいなくなれば、教室全体の空気も引き締まり、子どもたちは自分から自分たちを律するようになります。

今回の取材を終えて、幼稚園での「先生の数」が比較的多い場合に良い影響を与えるプロセスのひとつを観察できました。これについては、例えば幼稚園におけるクラスの人数と、先生の経験と人数、および子どもたちのふるまいの関係を調査して、先生一人当たりの子どもの人数が何人以上だと指導が必要な場面で目が行き届かなくなるかという閾値を求めることが可能かもしれません。

また同時に、先生が子どもを対等な人格として扱おうとする態度や、先生同士の適切な役割分担などが、子どもたちの成長を促すきっかけを作る場面が数多く見られました。


参考文献

李嬋娟. "非認知能力が労働市場の成果に与える影響について." 日本労働研究雑誌 650 (2014): 30-43.
関清佳, and 松永. "幼児の向社会的行動と自己制御機能との関連." (2005).
山森光陽. "学級規模, 学習集団規模, 児童生徒—教師比に関する教育心理学的研究の展望." 教育心理学研究 61.2 (2013): 206-219.


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