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言葉はいつだって不完全で曖昧だ

8月1日発売のBRUTUSの特集は「ことば、の答え。」だ。

BRUTUSの本や映画の特集はなるべくチェックするようにしているが、今回はついに言葉だ。

詩、リリック、台詞、回文、対談、小説の書き出し。少しずつだけどたくさんの方向から「ことば」をみる。

個人的には、表紙のスマホ画面が割れているところと、祖父江慎の「ことばとは?」に対する答えが好きだ。詩って、なんとなく日常とは離れたところにいるような気がするけれど、それが「画面の割れたスマホ」っていう実生活のなかにある、っていうところがもういい。表紙を見ただけで「あ、いいな」って思った。

「ことばをことばで考える。」というページの祖父江慎のいろいろな問いに対する答えは、やっぱりちょっと突き抜けてる。この人、ちょっとただごとではない。そう感じるのは毎度のことだけど、今回もまた思う。

BRUTUSは雑誌だから、もちろん雑誌売場に置くんだろうけど、せっかくなら言葉に関する本をそばに置きたい。もし置くならたとえばこんな本たち。

◆鴻上尚史『名セリフ!』(ちくま文庫、2011年)

鴻上尚史が古今東西の戯曲の中から「これぞ」と思う台詞を抜粋して解説。あらすじと前後の文脈、どこが素晴らしいのかが丁寧に書いてあるから、演劇わからないけど人間に興味があればきっと楽しめるはず。演劇って基本的には虚構で、話によっては荒唐無稽だったりするのに、妙に説得力があったり人間の真ん中を突いたような台詞があるからおもしろい。不思議だ。

◆宮藤官九郎『いまなんつった?』(文春文庫、2013年)

またしても劇作家だ。なんだかわからないが、やっぱり言葉を操ることを生業としている人はセンサーがその辺の私たちよりも敏感なのかもしれない。こちらは雰囲気変わって言葉に関する軽めのエッセイ。台詞だけじゃなくて日常の言葉が気になる人、宮藤官九郎の頭の中をちょっと覗いてみたい人、絶対面白い。ちなみに同連載の2冊目『え、なんでまた?』(文春文庫、2015年)もある。

◆穂村弘『絶叫委員会』(ちくま文庫、2013年)

穂村弘だ。現代の言葉の魔術師。うそ、思いつきで言っただけだ。劇作家の次は歌人という、もうそんな感じだ。穂村弘のエッセイは一度読んだら「もっとくれ、もっとくれ」と無限わんこ状態になりがちだけれど、穂村弘を知らない世界と知っている世界があるなら絶対に、知っている世界の方が私はいい。「巷にはこんなにキュートな言葉があるのか」と絶叫したくなる天使な一冊。うーん、無理のある売り文句。でも中身は最強におもしろい。

◆赤瀬川原平『新解さんの謎』(文春文庫、1999年)

言葉といえばやっぱり辞書は大事だ。ということでこれは外せないだろう、ねえ、新解さん。辞書だって人間がつくってるんだよな、と当たり前のことに気付かされる。と同時に言葉や解釈や伝えることの難しさも感じる。が、とにかく面白く時に笑える一冊に仕上がっているところが赤瀬川原平のすごさ。紙エッセイもあります(「紙エッセイ」でいいのか)。

あと、手元にはなかったけれど、パイ・インターナショナルからでている広告コピーのシリーズもいい。コピーの向こうに生活と人間が見えるような、物語のあるコピーは時が経っても何度も読みたくなる。

もうありふれたともいえるような、偉い人の言葉やかっこいい名言みたいなのにお腹がいっぱいになっちゃったら、今回の特集みたいに言葉の破片を拾い集めてもいいかもしれない。


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