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イギリス5年目・大学院が終わった景色とこれから

久しぶりに重い腰を上げて記事を書いています。タイトルにもある通り、2年間のコースを経て、大学院を卒業しました。

この記事からもう2年。あっという間です。

私が通っていたのは、ロンドン芸術大学、セントラルセントマーチン校のグラフィックコミュニケーションデザインのMAコースでした。クリティカルデザインに関してかなり厳格(rigorous)に取り組む環境でした。

卒業式。ガウン脱いじゃってるけど左下が私

この2年間はほとんど休みのない、長いマラソンのような学びの経験でした。(春休みなどの長期休み以外は、文字通り仕事と勉学で週7日ずっと稼働してました)

この2年を一言でいうならば、
素晴らしいカリキュラム&学習環境だったな…
という感想に尽きます。

正直かなり辛い日々で、何度も悔しい気持ちや自分との葛藤で涙を流しながら制作をしていたのですが、その気持ちの全てが自分自身に向けた期待値の高さのためで、そんな貴重な時間を送ることができるのはなんで幸せなのだろう、と、泣きながらずっと感じていました。

クリティカルデザイン領域がここまでアート寄りであることをコース序盤では正しく認識しておらず、与えられた論文を2〜3日徹夜して読んで、頭で理解することができても(で、、それをどうやってアウトプットすれば良いの?)という部分ではちんぷんかんぷんでした。

その隣ではネイティブの生徒達がどんどん素敵な作品を作っては持ってくるので焦るばかり。

デザインとアートの領域が図式化されたもの

最初の15ヶ月は、頭では良いカリキュラムだなと感じながらも、自分のものに出来ない葛藤ともどかしさ、焦りと不安、そしてtutor達からの批評に自信をすっかり失っていました。
よく、海外で大学院というと英語での勉強が大変そうと言われてますが、英語そのものよりも、与えられている内容の抽象度の高すぎるお題を自分なりに咀嚼することの方がずっと難しかったです。

その混乱は、今までの私が社会に参加している大人として身につけた「こうあるべき」という思い込みを捨てるための重要なプロセスだったと思いますが、その時はそんなことも知らされてないので精神的にぎりぎりでした。
一年目、つらすぎた。

ですが、心臓にたくさん汗をかいて、歯を食いしばって、見えない景色が広がっていくことは学びの一番のご褒美だし、混沌とした、失敗を繰り返す学び方があって良いんだ!という、とっておきの成功体験ができたと最終的には思えるようになりました。

コースについて改めて簡単に説明すると、自分自身が抱える世の中の社会事象についての疑問を深ぼるために、グラフィックデザインでの制作も含めたリサーチを通じて、新しいコミュニケーション手段を模索することが2年間の目的でした。

そのために、社会事象を多角的な学問を通してリサーチしながら、自分の抱いた疑問の解像度をあげること、そしてそこで得た知見をスタジオで作るデザインワーク側のリサーチに反映させながら、自分の抱く疑問を制作とともに深めてゆくことを様々な粒度で繰り返していました。

デザイナーが社会問題と人々との間の仲介人として正しく自分の社会的ポジションを表明するべき責任がある、という認識はヨーロッパならではだと思いますし、それをしっかり学習するのにとても良い機会でした。

混沌とした習得の過程で、哲学や心理学、社会学など様々な分野の論文を読む経験、デザインを作りながら、自分の疑問がどんなところから来ているのか、ルートを探っていく経験、得た知識と自分の原点を割れた卵のカラみたいに合わせる経験、、どれもすごーく楽しかったです。

あとは、私の入学した年はコロナ禍があけて100%の対面授業が復帰した最初の年だったため応募が殺到し、合格率は約5%くらいだったと聞きました。(よく受かったなーって感じ。)
そんなこともあり、学位が取りたいだけの学習モチベーションが低い人の割合がとても低く、かついろんな国籍の生徒が混ざった環境だったことも良かったです。皆がカリキュラムに喰らいつくことに必死で、闘いに来ていて、英語が堪能で、知性と健康的な頑固さがあって、、とても良い刺激をうけました。

授業は毎週3時間、自分のリサーチの進捗を少人数グループの中でプレゼン形式で発表し合い、ディスカッションを進めていく形式でした。私はレクチャーを聞くよりも自学をベースに適宜話し合う方が自分の学習スタイルにあっていたので、UALは自分の好みでした。コースメイトが持ってくるReferenceを通じて知見を広げたり、Tutor達の各生徒に向けたフィードバックの的確さに関心したり、、毎週発見に溢れていました。

卒業展での作品はこちらに掲載されているので、ぜひ見ていただけたら嬉しいです。
https://ualshowcase.arts.ac.uk/project/538727/cover


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この2年間で、自分の心の内側と、社会問題を両方とも探求しながら接点を見極めていく過程は、自分のパーソナリティ認識にも大きな影響を及ぼしました。でも、もともとの、10代のころの自分自身に戻ったような感覚もあるのが不思議です。

東京で大学生になり、社会人になり、、社会のメンバーとしての"大人"になっていくうえで、自分の凸凹した部分を日本社会の型に無理矢理押し込んでいたのが、元の形に戻ったような感覚。

もう、そんな見えない仕組みのために調整を加えた自分でいなくてもいいかな、と思っています。日本に帰ることになったら変な感じで浮いちゃうのかもしれないですが…その時のために、自分のことをちゃんと好きでいられる自分に、もっともっとなっていきたいです。

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それから、この2年間はイギリスならではの辛い経験も沢山して、ずいぶん強くなりました。ワーホリの時は片足日本に突っ込んでるようなコミュニティと私生活だったので、ちゃんと揉まれる経験ができたことが価値のある体験でした。この先はもう一歩、ローカルへの道に歩みを進めたいので今色々と頑張ってみています。

もし私が日本に住み続けていたらもっと30代らしい経済的にも時間的にも余裕のある暮らしができてたんだろうなと思うことは多々あるけど、それをぜーんぶ諦めてでも、四年前に渡英して本当によかったです。
これからも自分が叶えたいと思ったことを行動に起こし続けられる自分で居続けたいなと思ってます :)

ここからがまた新しいスタートだと思って、私のイギリス生活第三幕も面白く・スペシャルにしていきます!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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