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【認知行動療法】3.依存症(1)依存症とは

第3-4回目の心理療法理論のゼミのテーマは「依存症」。
認知行動療法の依存症の治療アプローチを学ぶ。
なお依存症の疫学、なぜ起きるか、診断方法などに関しては今回の記事では取り扱わない。
そもそもドイツの心理療法士の職業訓練とは?こちらの記事参照

1. "依存"の定義

Wanke, 1985
- 特定の経験をしている状態に対する拒否できない欲求
- その欲求に自分をコントロールする力が下回る
- その欲求が個人の発達や社会生活を阻害する

Orford, 2001
- 強い精神作用効果(中枢神経系に作用し精神活動に影響を与える)、中毒(過剰な毒の作用が生じている状態)経験
- 徐々に日常行動の崩壊を引き起こす
- 社会的制裁、罪悪感と恥を伴う「標準」からの逸脱

2. 依存の性質

Orford, 2001
- 葛藤:願望 vs 抑えられない衝動 / 意思 vs 欲求
- 対人関係の問題:周囲からやめるように圧力 -> 隠す、否定、矮小化(大したことないこととして扱う)
- 元は「心地よい活動」だったことが「必要」なものに変化
- 否定しようがない問題や周りからのサポートがあるにも関わらず、強い欲求と自分のコントロールの低下

3. 乱用・依存症の診断

ICD-10(国際疾病分類)第5章 F00-F99 精神および行動の障害
F10-19 精神作用物質使用による精神及び行動の障害

3-1. F1x.1 有害な使用(乱用)

= 向精神物質の消費により身体的/精神的健康が損なわれている状態
診断のガイドライン
- 実際に身体的/精神的に健康が損なわれていること(診断)
- 精神作用物質の消費自体や社会的に有害な影響だけでは十分でない
- 急性中毒や二日酔いでは十分でない
- 乱用の診断は依存症の診断とは関係しない

3-2. F1x.2 依存症候群

過去数年間の間に下記の3つ以上の項目を満たしている場合に診断される
1) 精神作用物質の強い消費願望・衝動
2) 消費開始・終了・量に関して自己コントロールの低下
3) 消費中断時や減少時に、身体的な禁断症状。消費によって緩和される
4) 物質への耐性。低量で到達できた効果を得るために消費量の増加が必要
5) 物質消費のために、その他の関心事や生活が無関心、明らかにないがしろ
6) 身体的/精神的/社会的に明らかに有害な結果を招いており本人も自覚しているにも関わらず、消費継続

3-3. 依存に関連する障害診断リスト

F10 アルコール使用<飲酒>
F11 アヘン類使用
F12 大麻類使用
F13 鎮静薬又は催眠薬使用
F14 コカイン使用
F15 カフェインを含むその他の精神刺激薬使用
F16 幻覚薬使用
F17 タバコ使用<喫煙>
F18 揮発性溶剤使用
F19 多剤使用及びその他の精神作用物質使用
F63.0 病的賭博
F68.8 その他の明示された成人の人格及び行動の障害

4. 治療

4-1. 治療介入ポイント

Wittchen & Knappe, 2012
1) 予防:問題になる物質消費行動(飲酒・喫煙・薬物摂取)の開始を防ぐ
2) 早期介入:一度の消費 -> 何回か消費 -> いつも消費に陥るのを防ぐ
3) ハームリダクション:依存自体をすぐ解決できなくても、依存により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させる
4) 依存症の治療:依存状態から物質消費の中断を支援

4-2. 治療の段階

Soyka & Küfner, 2008
1) 解毒治療(1-4週間):病院
- 医者によって行われる
- 健康保険が適用される
2) リハビリ治療(6-24週間):専門病院、リハビリテーション施設入院
- 主に心理療法を通し、問題がある習慣の治療を行う
- 個人心理療法・集団心理療法や治療グループでの共同生活、スポーツ、薬等
-> 自立して生活できる、依存物がなくても楽しめる自信を得ることが重要
- ドイツの年金保険が適用される -> 年金保険に入ってない場合は健康保険
3) 退院後のアフターケア(x年):通院、専門ケアホーム、自助グループ等

4-3. 解毒治療後の心理療法

1. 動機づけ面接
2. 心理教育
3. 行動分析
4. 再発予防
5. その他
- 認知変容
- 曝露療法
- 家族
- 仕事/社会復帰

最後に
依存症患者の理解のために講師から勧められたドイツのドキュメンタリー
https://www.youtube.com/watch?v=18GmA0A5z9w
ドイツ語から英語へ翻訳したファイルもおいておきます。
日本語で読みたい方はファイルをdeeplにコピペしてください

以上、今回は依存症の定義・診断カテゴリー、そして認知行動療法の依存症の治療アプローチを紹介した。

動機付け面接についてはこちらの記事
動機付け面接後の依存症の心理療法についてはこちらの記事
そもそもドイツで心理療法士の職業訓練とは?についてはこちらの記事
でそれぞれ詳しく扱っています。
どうぞご一読ください。



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