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漫画の感想

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#マンガ感想文

女性をエンパワーメントする田滝ききき「タワマンで不幸にならない方法」が好きすぎる。

女性をエンパワーメントする田滝ききき「タワマンで不幸にならない方法」が好きすぎる。


◆女性の可能性を抑圧する「ガラスの天井」との戦いをコメディで描く。

 この話はタワマンをモチーフにして「女性が社会において求められる規範や受ける抑圧」をテーマに据えて描いているコメディだ。

「タワマンで不幸にならない方法」と同じテーマを描いていた「セクシー田中さん」では、物語の序盤、女性を抑圧する「ガラスの天井」の話が出てくる。

「タワマンで不幸にならない方法」のいちごも「セクシー田中さん

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【「セクシー田中さん」考察】「朱里の進学先をなぜ短大から専門学校に変えてはいけないのか」など。

【「セクシー田中さん」考察】「朱里の進学先をなぜ短大から専門学校に変えてはいけないのか」など。

「『セクシー田中さん』調査報告書 (公表版)日本テレビ」の中で出てきた、原作者(以下作者)が疑問を口にした箇所について考えてみた。

◆作者が気にしていたのは改変そのものではなく、キャラがブレること。

 報告書を読んだ限りでは、作者が一番気にしていたのは「改変されること」ではなく「キャラがブレること」だ。
 何度か出てくるが、作者はドラマ化する上で「すべて原作通りというわけにはいかないこと」「改

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「鬼滅の刃」における「兄」とは何なのか&兄上(継国巌勝)についての独自解釈を語りたい。

「鬼滅の刃」における「兄」とは何なのか&兄上(継国巌勝)についての独自解釈を語りたい。

 前回の記事の続き……というより、思いついたことがあって考え直したので、その話をしたい。

※原作のネタバレがあります。
※独自解釈が爆発しているので、「解釈違いでも気にしない」という人のみお読みください。

◆「鬼滅の刃」の「兄」は、作内ルールを超越する特別な存在である。

「鬼滅の刃」は家族の絆が大きなテーマになっているが、その中でも「兄弟(妹)」はさらに特別だ。
 主人公の炭治郎が鬼になって

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【「鬼滅の刃」キャラ語り】継国巌勝はなぜ鬼になったのか、なぜ物事の認知の仕方がおかしいのかについて話したい。

【「鬼滅の刃」キャラ語り】継国巌勝はなぜ鬼になったのか、なぜ物事の認知の仕方がおかしいのかについて話したい。

※本記事には「鬼滅の刃」の原作のネタバレが含まれます。
※解釈違いがOKのかたのみお読みください。

「柱稽古編」が始まったこともあり、久しぶりに巌勝のことを思い出した。
 自分が巌勝に興味を惹かれるのは、言っていることが支離滅裂すぎてそれが何故なのかと考えてしまうからだ。

 巌勝は知覚自体は歪んでいない。しかし外から受け取った情報に対する解釈がおかしい。
「その発想はいくら何でも無理があるだろ

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「ライチ☆光クラブ」や「鉄血のオルフェンズ」のような、閉じられた子供の互助コミュニティの話が好きだ。

「ライチ☆光クラブ」や「鉄血のオルフェンズ」のような、閉じられた子供の互助コミュニティの話が好きだ。

 古屋兎丸と和山やまの「ライチ☆光クラブ」のコラボ本を買ったことをきっかけに、「ライチ☆光クラブ」への熱が再燃している。
 本編を読んだ時は、ジャイボはイカレたヤバい奴としか思わなかったが、コラボ本の短編で描かれたゼラへの恋心を前提にして本編を読むと、まったく別のキャラに見える。
 本編でも「ゼラが本当に好きだったから、大人の男になることが怖かった」という内面が、もう少しジャイボに寄り添う形で描か

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「世界が余りに強大で不可解すぎて、人間の個体差など無意味」というチートと逆の設定が好き。

「世界が余りに強大で不可解すぎて、人間の個体差など無意味」というチートと逆の設定が好き。

「ケントゥリア」の五話を読んだ。
 これは自分が好きそうな話だな、と期待がふくらんでいる。

「世界の全貌は人には理解できない」
「人は何一つ意味もわからず世界の隅っこで生きているだけ」
「人の個体差(能力差)など、世界から見ればミジンコと蟻程度の差しかない」
という世界観が大好きである。
 ホラーが好きなのは、ホラーというジャンル自体がこういう世界観だからだ(クトゥルフ神話が典型だけど)
 この

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色々引っかかることがあっても、「ケントゥリア」を面白いと思い期待する理由。

色々引っかかることがあっても、「ケントゥリア」を面白いと思い期待する理由。

 第一話の序盤は読んでいて引っかかるポイントが多かった。
「奴隷」は資産なので、労働力にならなそうな老人と二人分の価値がある妊婦が同じ待遇というのはありえないのでは、と気になった。
「買い手がつかない」というが、これも何故かわからない。ミラなんて絶対高値だろう。
 その他にも、船長の「何も成せない無価値な奴らだ」と言う台詞も引っかかった。
 これは明らかに奴隷を「商品」ではなく対等の人間として人生

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【ENNEAD(エネアド)感想】 S2第60話まで。ホルスのアヌビスの嫌いかたが好きである。

【ENNEAD(エネアド)感想】 S2第60話まで。ホルスのアヌビスの嫌いかたが好きである。

 続きが溜まったので読みに行ったら、「エネアド」が超絶面白いことになっていた。
 ホルスがイシスの神殿にかくまったセトを、オシリスによって呪いの力を与えられたアヌビスが連れさらいに来る。
 状況としてはこうなのだが、アヌビスは自我がない、セトはひたすらアヌビスを気遣う、ホルスはひたらすらセトのことしか考えていない。
 誰一人誰とも意思の疎通が出来ない(しようとしない)

 シーズン2に入ってからの

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【「進撃の巨人」キャラ語り】「友達とは何か?」を描いた「進撃の巨人」第69話「友人」が好きすぎる。

【「進撃の巨人」キャラ語り】「友達とは何か?」を描いた「進撃の巨人」第69話「友人」が好きすぎる。

「創作はすべて作者の願望」の亜流みたいな雑な話だし、例えもズレている(サウザーは愛情の喪失に傷ついたのであって友情ではない……台詞もそうなっているし)
 ジャンルの特徴について話したい、ということはわからないでもないが、それを踏まえても持論のために触れるものすべてを雑に扱いすぎだと思う。「その論が正しいかどうか」以前の問題だ。

 友達は

二人が「相手は友達」と思っていることだけが、成り立つ要件

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ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」の二種類の読み方。

ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」の二種類の読み方。

 *ネタバレ感想です。未読のかたはご注意ください。

 ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」全二巻を読んだ。
 この話は二種類の読み方が出来る。
 二種類の読み方とはどういうものかと、それぞれの感想を語りたい。

◆ストーリーの肝になるのは「弥恵はなぜ死ななければならなかったのか」という疑問

「ヤサシイワタシ」がどういう話かは、前半のヒロインである弥恵が死んだ理由に集約されている。
 大事なのは「弥恵は

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「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「八月の光」×「ビラヴド」×伊黒小芭内で社会構造と個人の関係について考える。

「奴隷制度が人の心にもたらすもの」について描いた、トニ・モリスンの「ビラヴド」が面白かった。

「奴隷制度について描いている」と書くとついそちらに意識がフォーカスされるが(そしてもちろんとても重要な問題だけれど)、自分がこの話で一番興味を惹かれたのは物語の語りの手法だ。

「八月の光」の解説の中で、フォークナーが活躍した時代はちょうどヨーロッパでモダニズム文学が流行していた、と書かれている。
 ア

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「性格が悪いと思うキャラは?」という質問の答えには、その人の世界観、人生観が表れる。

◆「性格が悪い」とはどういうことなのか。

「このキャラは嫌い、自分にとって不愉快だ」と思うキャラはいても、そのキャラが「性格が悪いのかどうか」はよくわからないことが多い。
 自分にとっては不愉快だが、他の人にとってはそうでもない、むしろ好ましい(逆も然り)こともある。

「どのキャラが性格が悪いと思うか?」という質問の答えは、「どのキャラが好きか/嫌いか」という質問以上に、答える人の人生観や世界

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「人に無能力のレッテルを貼ることで、自分の万能感を相対的に上げる」→「価値の搾取」を描いた「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を読んで欲しい。

「人に無能力のレッテルを貼ることで、自分の万能感を相対的に上げる」→「価値の搾取」を描いた「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を読んで欲しい。

 久しぶりに宮崎夏次系の「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」を思い出して読んだ。

「相手に何もやらせず、無力感を与える」
「無能であるとレッテルを貼る」
「主体性を乗っ取る」
 そうすることで「無能な相手を助けること、代わりに色々やってあげること」を自らの居場所にしたり、相対的に自らの有能感を上げる手法を「価値の搾取」と呼んでいる。

 大多数の親はどのタイミングでどの程度子供に干渉す

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「進撃の巨人」全34巻を一気読み(再読)した感想を箇条書き。

「進撃の巨人」全34巻を一気読み(再読)した感想を箇条書き。


◆あまりに面白くて「なぜこんなに面白いのか」真剣に考えてしまう。

 アニメは原作とラストが違うという噂を聞きつけて、アニメを見始めた。
「滅茶苦茶おもしれえええ。続きどうなるんだ(知っている)」→ちょっとだけ原作で予習しておくか→「超おもしれええええ(人生二十回目くらいの叫び)」→結局全34巻一気読み。
 読んでいる途中、余りに面白くて「なぜこんなに面白いのだろう」と真剣に考えた。

◆半生記

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