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愛子内親王殿下が二十歳に──朝日新聞「耕論」いつもの人のいつもの皇位継承論(令和3年12月12日、日曜日)


愛子内親王殿下が先々週1日、二十歳になられたのを、朝日新聞デジタルの「耕論」が取り上げ、3人の識者に意見を語らせています。テーマはむろん皇位継承論ですが、人選といい、論調といい、いかにも朝日らしさというべきものが滲み出ています。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15128635.html?iref=pc_ss_date_article

▽1 小宮山洋子さん、男系が絶えない制度を考えて


1人目は、ジャーナリストの小宮山洋子さんです。「若い皇族、人生選べる道を」の見出しが付いています。小宮山さんは以前、少子化対策担当大臣でもありました。

小宮山さんは、「天皇制は存続すべきだろう」と考えています。だからこそ、「女性・女系天皇を認めることが不可欠」と訴えています。日本は「超少子化」に直面しており、皇族も例外ではないのだから、「継承権を男女に開くしかない」というわけです。現実論です。

一方で、小宮山さんは、「天皇になることは愛子さまにとって幸せなのか」と問いかけます。「継承者が少ないほど、人権軽視の状況は時の経過とともに強まる」とも主張しています。「このままでは、愛子さまはいずれ皇室を離れることになるのか、または皇位継承を急に求められることもありうるのか、自分の人生を見通すこともできない」と訴えています。

小宮山さんは、東日本大震災のとき、「今の上皇ご夫妻からお見舞いを受けた被災者の笑顔を間近で目にして、皇室が多くの国民の『支え』となっていると感じた」そうですが、そうした天皇のあり方は、何に由来するのでしょう。

東日本大震災の被災地


天皇が公正かつ無私なる祭り主として、男系によって継承されてきたことと結びついているのではないのでしょうか。小宮山さんは「国中平らかに安らけく」と祈る天皇の祭祀についてお考えになったことはおありですか。

また、皇室には、皇祖神からこの国の統治を委任されたとする皇室の物語が伝えられ、皇位が継承されてきた歴史を重視するのなら、「人権」思想を持ち込むのは適切ではありません。国民の側から、皇位継承のルールの変更を求めるべきでもありません。むしろ男系が絶えない継承制度のために知恵を絞るべきではありませんか。


▽2 横田耕一さん、1から議論するというのなら


2番目は憲法学者の横田耕一さん(九州大学名誉教授)です。記事には、「男系男子のみ、制約は違憲」の目出しが付いています。

横田さんの主張は、あいも変わらずというものです。憲法は男女平等を定め、法の下の平等を謳っている。憲法2条の「世襲」は矛盾であり、皇位を「男系男子」に限る皇室典範は憲法違反だと訴えています。

しかし、憲法学者の小嶋和司・東北大学名誉教授(故人)が指摘したように、天皇という制度を憲法に規定することは、国民の法の下の平等とは別のはずです。法の下の平等をどこまでも主張するなら、天皇の存在もまた否定されなければなりません。

横田さんは「戦前と戦後では天皇の制度が根本的に変わったにもかかわらず、実際には戦前の皇室イメージがそのまま戦後社会に流れ込んでいる」と指摘しますが、戦前と戦後の対比ではなく、天皇とは歴史的な存在として理解されるべきではないでしょうか。

横田さんは「身分を離脱する自由」にも言及していますが、既述したように、天皇統治は皇祖神の委任によるものであり、皇位は皇祖神の神意に基づくというのが、皇室の天皇観です。「天皇と皇族に何を求め、天皇制をどう考えるかを、存否を含めて一から議論すべきだ」というのなら、皇祖神の委任に遡って議論すべきではないでしょうか。

横田さんは、「天皇に代わる統合の軸を日本国民は確立した方がいい」と仰せですが、そのようなものはあり得ません。とすれば、男系継承維持の制度こそ確立した方がいいのではありませんか。


▽3 水島治郎さん、時代に合わせて変化した?


最後は、政治学者の水島治郎さん(千葉大学教授)です。見出しは「欧州王室『多様性』に対応」です。

ヨーロッパ政治がご専門の水島さんは、オランダの最新情報から説き起こしています。同国には「愛子さまと同世代の王女がいる。いずれ女王になる予定のアマリア王女である」「オランダ首相は先日、『もし王女が同性婚を望む場合も王位継承権を放棄する必要はない』と表明した」というわけです。

水島さんは「王室存続と人権の議論がここまで来ているのかと感じた」というのですが、王位継承論と人権問題という捉え方は適切でしょうか。

水島さんによると、欧州では、人権が保障された民主主義国家に君主制が残っている。それは、「君主制が民主主義と適合的だからではなく、時代に合わせてうまく変化してきたから残ったのだ」と解釈しています。

「欧州王室が21世紀に直面しているのが、ジェンダー平等など『多様性』を求める要請だ。欧州王室はこの波にも対応しつつある」と水島さんの解説は続きます。「皇位継承者を『男系男子』に限定している日本の象徴天皇制のあり方とは対照的だ」というわけです。

水島さんは「欧州王室」と一括りにされますが、けっして一様ではありません。君主制と民主制の対比も的確とはいえないでしょう。なぜなら、とくに北欧で20世紀後半に女子の継承が認められたのは、民主主義の成熟のほかに、国民が王位継承者を決める「選挙君主制」の伝統が底流にあるからです。時代に合わせて変化したのではなく、伝統に従ったのです。


▽4 朝日新聞の編集者さま、もっと多様な意見を取り上げて



水島さんの意見は「多様性」をキーワードにし、だから欧州に倣い、「男系男子」継承を改めるべきだと訴えるのですが、日本の皇室こそ「多様性」の元祖ではないのですか。

ヨーロッパ王室では戴冠式などは一神教の儀礼に基づき行われますが、天皇の祭りは皇祖神ほか天神地祇を祀り、多神教儀礼によって行われます。人々の異なる信仰と暮らし、社会の多様性、価値多元主義が前提なのです。

さて、最後に朝日新聞「耕論」担当の編集者にお願いです。「おりおり論争になっているテーマを取り上げ、複数の識者の意見や対談を紹介する」ことが「耕論」の企画の趣旨であるならば、もっと多様な意見を取り上げていただきたいものです。いつもの人にいつもの話を語らせていては「耕論」とはならないでしょう。



















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