「愛子さま天皇」待望を煽る? 「週刊朝日」の御厨貴×岩井克己Zoom対談(令和2年11月3日)
▽1 正統右翼の政府・宮内庁批判
「正統右翼」といわれる不二歌道会(福永武代表)の政府・宮内庁批判が止まりません。
機関紙「道の友」10月号の巻頭言は、宮内庁が高さ2メートルの江戸城天守閣の模型を東御苑に設置したことを取り上げ、税金1億円を使ってなぜ作ったのかまったく不明、そんなムダ金があるなら大嘗宮をなぜ茅葺にしなかったか、宮内庁には国体観念の喪失が甚だしい、とけんもほろろです。
また機関誌「不二」は、中曽根元総理の内閣・自民党合同葬が神嘗祭当日に設定されたことをテーマとし、国民こぞって奉祝すべき日に弔旗の掲揚を求める無神経さに戦慄さえ覚える、元号問題・大嘗宮茅葺問題にも通じる国体観念の喪失がその根源にある、ときびしく批判しています。
さすがは正統的民族派の面目躍如というべきでしょう。堂々とした正論を臆せずに表明していることに敬意を表します。
▽2 立皇嗣の礼を前にあり得るのか
これに対して、アカデミズムとジャーナリズムの無様さを公にしているのが、御厨貴・東大名誉教授と岩井克己・朝日新聞元編集委員との「週刊朝日」のZoom対談です(11月6日号からの抜粋。構成は同誌の永井貴子記者)。
この対談で唯一面白いのは、皇位継承・「女性宮家」創設問題に関連して、御厨さんが『世論調査では、「愛子天皇」賛成の声が高い』と指摘したのに対して、岩井さんが『宮内庁の幹部と話をしても、「一刻も早く女性・女系天皇の容認を」「愛子さまを天皇に」という声は聞こえてこない』と応えていることです。
記事の最後は『宮内庁幹部の中には、「今は愛子さまを天皇に、という人は宮内庁にも官邸にもひとりもいない」と明言する人もいます』という岩井さんの発言で終わっています。そもそも記事のタイトル自体が『「愛子さまを天皇に」は宮内庁から聞こえてこない?朝日新聞元編集委員が明かす』です。
宮内庁内を取材した岩井さんも、記事をまとめた編集者も、庁内から「愛子さま天皇」待望論が聞こえてこないことが、意外であり、もしかしてご不満なのでしょうか。立皇嗣の礼を目前にして、次か、あるいはその次の天皇が「愛子さまであってほしい」という声が上がるものなのでしょうか。常識的に考えて、あり得ないとはお思いにならないのでしょうか。それとも待望論を煽っているのでしょうか。
▽3 科学者=「前衛」の時代錯誤
おりしもちまたでは、日本学術会議の新会員任用をめぐって、混乱が続いています。科学者は社会をリードする「前衛」だなどと叫び立てる政治家もおられるようですが、時代錯誤も甚だしいというべきです。いまや国民の半数が高等教育を受けるご時世です。サラリーマンがノーベル賞を受賞する時代なのです。
知識人、専門家の存在はむろん重要ですが、国民の知的レベルが以前とは違って格段に上がっている現代において、よほどの天才ならともかく、知性の相対的低下をアカデミズムもジャーナリズムもよく肝に銘ずるべきではありませんか。そうでないから、わけ知りげな雑誌記事が生まれ、学術会議狂想曲が展開されるのでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?