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理解するまでトコトン訊く

先週の月曜日。飲食の経営者Nさんと夕食をご一緒させていただいた際のこと。ある戯曲の話題で盛りあがり、興奮の末、大袈裟としかいいようがない身振り手振りで熱弁をふるったあげく、なみなみ注がれたコップの水を卓上にぶちまけた猫目です。皆さま。こんばんは。

本当にあるのですね。テーブルに水をバシャーっとぶちまけることなんて……映画の中のお話だとばかり思っていました。迂闊にございました。

ぶちまけ事件の発端となった悲劇を描いた戯曲とは、まさしくシェイクスピア『リア王』のなのですが……皆さん、シェイクスピアはお読みでしょうか?

Nさんとの会話でもっとも盛りあがったのは、荒野、荒れ狂う嵐の中をリアが狂気にさけんでいるシーンだったのですが。

残念ながら、猫目のまわりの友人知人でシェイクスピアをお読みになっている方は非常に少なく(ほとんど皆無に近い)、ある先輩などは「画家?」とお尋ねになられました。

ええ、画家といえば画家でしょう。あれだけ鮮明に情景を描き(それも台詞にて)脳に刻みこんでくるわけですから。

それだけに

まさかの親しくしてくださっているNさんがシェイクスピアを一通り読んでおられるなんて!もう驚愕とうれしさで頭がまっしろ!(なんならF・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』も読んでおられた)

東野圭吾のお話をたくさんされていた中での、とつぜんのリア王 君臨に、猫目はしばらくのあいだ我を忘れて騒ぎ立ててしまいました。その節は大変失礼いたしました。

それから話は世界をぐるりとまわって、イギリス、アメリカ、ロシア、中国、そして我らが日本の大作家、太宰、漱石、芥川、江戸川乱歩へ逢着。

最終的に『人間椅子』の描写の気持ち悪さを語って落ち着きました。やはり乱歩は麻薬的(依存的)描写の秀才です。

Nさんのお話によると、ドストエフスキー作品はどれも理解をするのに時間がかかるといいます。まったくもって共感です。

第一の問題はこれ。コロコロ名前が変わる点にあります。親しさによって名の呼び方が変わるというアレは、もはやロシア文学のお約束といっても過言でない。

文化や馴染みがないからこそ、理解に時間を要するわけですが、話を聞けば社長さんは「ちゃんと理解しないと気持ちが悪くて次に進めない」とおっしゃいます。なので10ページ読んでは戻って、を繰り返していたそうです。

なるほど。

すばらしいことです。猫目はどちらかというと、ひとまずページを進めて、それから冒頭へ戻って再度 読み返すタイプです。

ですので、一歩一歩、着実に理解してから場面を踏んでいく社長さんの心得に感銘を受けました。

そんな中で思い返されたのが・・・

ヒアリング事件

これは、ある記事を執筆するにあたってクライアントgさんとのあいだで起こった事件です。猫目はいつも通りgさんと事前にヒアリングをしてたのですが、そこですっかり勘ちがいをしてしまいました。

つまり

こちらが「理解した」と思っていたことが、先方の伝えたかったこととズレていたのです。そうして出来あがった記事を読んでgさんがおっしゃられたひと言がこちら。

「あれ? こんなこと、ひと言もいってないんだけど」

とても恐ろしい言葉ですよね。瞬間ヒヤッとしました。と同時に、あわててメモを見返しました。そうしてgさんと話し合った末に発覚したのが思考のすれ違いです。

そうか。gさんの真意はまったく別のところにあったのか。

”ときに言葉の裏側はまったく事実を映していない”

まさに先週、猫目がnoteに綴らせていただいた彼女の言葉のとおりではないか。

この事件の問題は、心境そして事実を汲みとれなかったことにある。が、いちばんの問題は理解していないのに先へ進んでしまったことにあると思うのです。

わからなかったら理解するまで訊く

結局はこれです。わからなかったら、理解するまでトコトン訊く。どんなにしつこいと思われてもいいから、訊く。これに尽きます。

でないと、勘ちがいをしたまま、こちらの独りよがりで事を進めてしまう。しかも、その勘ちがいに気がつくのは相当むずかしい。なぜなら、ひとは自分の間違いに自分だけの力で気がつくことに不慣れだからです。

尊敬する彼女の言葉と、経営者Nさんの言葉、それからクライアントgさんの言葉から、今回そのことを強く痛感させられました。

わからなかったら、一度、踏みとどまる。

その勇気がどれだけ重要なことか思い知らされた一件でした。そして、そのことに気づかせてくれたありがたい一件でもあります。

この失敗を今後にいかに反映していくか。もちろん、無駄にする気はありませんので、これからは少しでも理解がぼんやりしていたら立ちどまって訊ねるようにしていこうと思います。

本日もさいごまでお付き合いいただきありがとうございました。来週は少し真剣になって”延命”についてお話しさせていただけたらと思います。それではまた来週の土曜日、皆さんとお会いできることを楽しみにしています!

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