CatCuts/樹崎聖

漫画家で編集者の樹崎聖の漫画技術話 猫絵師・catcutsのイラスト

CatCuts/樹崎聖

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    本物の作家の掘り出し方

    自分の思う正しいことが歪であることを知り、それでも尚その行いを続けようと思っていることに気づけたら、それは作家性の目覚めです。 それは食習慣や毎日の入浴の仕方のような小さなことから人生のテーマのような大きなことまであるわけですが… 自分の思っている偽りない思いを自覚することこそが作品を描く時の根幹となります。 それは社会正義をなぞったものであってはいけません。もちろん本気で現代の社会正義こそが素晴らしいのだと思えているならそれでもいいのですが、でしたら漫画で描く意味はあんま

      • THE FIRST SLAM DUNK カタルシスプラン的考察

        誰の噂話も聞かないですむうちにTHE FIRST SLAM DUNK観てきました。 深夜の回超満員…いつもより平均身長が5センチは高い客に囲まれて、映画オタクの僕はアウェイの雰囲気を感じながらも、映像が始まった瞬間捕まれスラダンの新しい世界に没頭しました。 物語は回想と一つの試合を交互に見せながら漫画で描かれた長期連載作品「スラムダンク」を違う角度からいっぺんに見せたものでしたが…その違う角度…漫画との一番大きな違い… それは主人公が桜木花道ではないことでした。 残念に思った

        • 真・絵が上手くなる方法!

          たくさん描けば絵は上手くなる… まことしやかに伝えられてる言葉だけど… 達人がよく言う言葉でもあるけれど… そうした初めからできる人の言葉は、できない人には全く当てはまらないものだ。 たくさん描いたぐらいのことで絵が上手くなるはずがない。 漫画業界でトップになった人、頑張ったけど脱落した者…多くのケースを見てきた結論…悲しいかなこれが事実で現実です。 毎日描きまくっていても… 上手くなる人もいるし、上手くならない人もいる。 なんならたくさん描くほど下手になる人だっている。

          • 漫画はマイノリティのためのもの 〜人間の命は猫のそれより軽い〜

            主人公は社会規範においては悪人であったとしても 物語の冒頭で捨てられた仔猫を助けたり、道ゆく蜘蛛を踏まずに避けてやったりすると それだけで好感度爆上がりです。 脚本術として世界的に知られる俗に言う「セーブ ザ キャットの法則」と言うやつです。 うちの嫁が逃げずに未だにウチに居てくれるのも僕が目の前で捨てられた仔猫を救って飼っているからです。多分。 偉大です「セーブ ザ キャットの法則」 ぶっちゃけ主人公は殺人鬼として人間はぶっ殺しても、猫助ければ赦されるんですよ!

            ネーム制作の成功と失敗

            配信時代の連載漫画において益々ハッキリしてきたこと。 お話を作ろうとするから失敗する。 お話から描こうとするからキャラの魅力が弾けない。 話が枠となって格子の中から飛び出てこない。 予想の範囲を越えてくれないのだ。 固有の魅力があるキャラを創り上げられれば、それを設定やアイデアに乗せてやるだけで勝手に走り回って魅力を振り撒く…それが結果としてお話となる…くらいが漫画としては勢いがあって面白くなるもんだね! 紙の横読み漫画時代から言われては来たことだけど… ページがき

            ストーリー漫画の面白さの秘密教えます

            めっちゃいいアイデア思いついたー!! なんてね、唯一無二に思われるくらいに斬新だったり素敵だったり… そんなネタを思いついちゃうと、ついついそこから作品を組み立てようと思いがちです。 でもね… アイデアってもんをを過信しちゃいけません! アイデア勝負の物語のストーリーに自信持ちすぎちゃいけないんです! …なぜなら 作品が面白いのは実はそこじゃない! 読者が面白いと感じるのはストーリーじゃないからです! その証拠に 専門学校ではよく課題として桃太郎を題材に作品を描

            作家の心を掘る

            漫画家さんとの打ち合わせ楽しいなぁ 今夜もめっちゃ楽しかった。 で、そんな中での編集者としての気付き… 「じゃんじゃん話してもらうこと」…これが大事だね! あれっ?と、思っても 否定はしないで問題部分は意味を問う… そうしてなんでそうなのか腹の中にあるものをどんどん話してもらって そこから「ほらそれじゃん!答え出てるじゃん!」って 自身の中にあるものから引き出して自分から気付いてもらう…というのが 最近の理想となってきてまして、 ちょっとコツもわかってきたけれど…

            連載ネームに挑む

            こんばんは、漫画家で編集者で猫絵師のCatCuts樹崎です。 今夜も漫画編集していて感じた学びの話です。 自分がネームの直しを出される辛さを知っているだけに、しつこくネームの直しを要求するのは、めっちゃ葛藤があリます。 どんなにムカつくかわかるんで胃が痛くなるんです。 でも出すんだけどね。 作家が直しでムカつくのは、編集者に対してでなく本当は自分に対してであることも知ってるからですね。 最高の作品を作ることこそお互いにとって一番大切で、そのためには妥協こそ敵だということも!

            編集者はあなたの作品をこう見るよ!足りないのは…?

            これは見て講評して欲しいと送られてきた作品を読んでの感想です。 多くの新人漫画家さんに共通する問題を抱えていると思ったので 作品を特定できないように部分的に曖昧にしましたが ほぼそのままの講評です。 なかなかプロへの道が開けないなぁって悩んでいる人は 我が事のように考えながら読んでいただければと思います。 面白くなる要素はたくさんある。でも最初の一歩で踏み外してしまって 面白い物語のレールに乗れなくなった惜しい作品だなぁと思いました。 まず瑣末なことから言うと

            清潔のススメ。主人公こうあるべき?

            一昔も前にウチの嫁は「男前とかって清潔にしているかどうか?のことだ」と言っていて 分かったような分からないような気がしたのだけれど… コロナ以後の時代は、小汚いことは絶対悪となったと思う。 清潔にしていないと病気をうつされそう。 コロナと直接関係ないところでも、汚れた服をそのまま着てたり、汗臭かったり、首筋に汚れの残ったシャツ着てたり、フケとかあったらもう最悪。 だらしがないところがあると病気うつされそうな気がしてしまうのだね。 それは心の清潔の部分も同じ。 他

            編集者として作家のネーム描き始めに求めること

            僕は編集者として、まずそれぞれの作家の人となりを知れるまでじっくり話し、その中からキャラやテーマを考えてもらい、作品制作に入ってもらうわけですが… まずプロット見せるべきですか?って作家さんの質問にはいつも「いらない」と答えています。 プロットとかストーリーログラインとかは自分がネームを描く時に読者に何を見せるかのチェックポイントとして書いておくべきものであって、編集に見せるためのものじゃあないと僕は考えます。実際、大まかなストーリーやプロットやログラインで作品の面白さは測

            なぜキャラクターが第一なのか?

            まずキャラ! キャラが立っていること! 漫画指導者の誰もがそう言うのはこういうコト!以下に… まずは主役たちに固有の魅力(特に弱点と動機)を設定し 徹底して当たり前のリアクションをさせないこと。 どのタイミングで、どんなふうに(表情とポーズ)、なぜ、どんなことを言うのか? その4つを徹底して考えて、その人ならではの、この人はこうとしか動かないというリアクションを描くことだ! 常にキャラ固有の行動となるコトが目の離せない展開となるんだ! さらに… そこを実践するにはなぜ彼

            しからば、傑作はすぐそこだ!

            アニメ『リコリス・リコイル』がめちゃくちゃ面白い。 4話分が公開になっているのでそれぞれ2〜3回ずつ見直しています。 ストーリーや設定はむしろ平凡など真ん中設定の類な気がするものの キャラの魅力がハンパない。ちょっとづつ斜め上のセリフ、リアクションが積み重なって、一瞬も退屈させないし引き込まれます。 ここが大事なとこだよね 当たり前のやりとりを絶対しない。説明は魅力的なキャラの会話で包んでしまうので拗さがない。 ちょっとづつだけど驚かされ続けるので、こちらの感情も動きやすくな

            そうさく長者になる方法

            今となっては、いつ始めたのかもはっきりしないのですが… 毎日ヘロヘロテキトーな落書き猫絵をおはよう絵としてツイートするところから始めて、受けると嬉しいもんだから少しづつ時間もかけるようになり そうすると、もっと欲が出て見てもらう工夫もするようになって 「おはようございます」より「おはこんばんちは」で1日中反応を返せる挨拶として猫絵をアップするようになり、反応は倍以上になって コレはひょっとして仕事にもなるかもしれない、仕事で猫描いてられるならかなり幸せに違いないと思うようにな

            映画やドラマに学ぶ

            バズ・ラーマン監督の『エルヴィス』を観ました。 平日だったのにご老人のお客様いっぱいで板橋の劇場は超満員!びっくりでした。 しかし睡眠時間4時間で行ったので、この2時間40分もある映画に耐えられるかめっちゃ心配であったのですが、杞憂でありました。 子供の頃、黒人たちと一緒に育ったエルヴィスが、黒人差別による表現規制を打ち破って信じる音楽を熱唱し、その魅力に女性客があられもない姿で狂喜しまくる冒頭の激しい演出で一気に物語に没入されられ… その勢いで、晩年の…薬でエルヴィスがボロ

            掴む!

            勝ち始めたら、それを続けよう! これだっていう何かを掴んで、作品が評価され始めたら 掴んだパターンを動かさないこと! 調子に乗っていろんな面白さのパターンを試したくなって 一番いいパターンで自分の作品を印象づけるチャンスを失わないことが大切だ。 そのままの自分でいいと思った瞬間から創作の後退は始まってしまうけれど 勝ちパターンだけはそのままに向上を目指すべきなんだ。 いい作家、いい絵描きには一目でそれとわかる独自のパターン、固有の見せ方があり、それこそが作家性という根っこ