編集者はあなたの作品をこう見るよ!足りないのは…?
これは見て講評して欲しいと送られてきた作品を読んでの感想です。
多くの新人漫画家さんに共通する問題を抱えていると思ったので
作品を特定できないように部分的に曖昧にしましたが
ほぼそのままの講評です。
なかなかプロへの道が開けないなぁって悩んでいる人は
我が事のように考えながら読んでいただければと思います。
面白くなる要素はたくさんある。でも最初の一歩で踏み外してしまって
面白い物語のレールに乗れなくなった惜しい作品だなぁと思いました。
まず瑣末なことから言うと表紙がよくないです。
キャラの全員集合は作者のやりたかったことではあるだろうけれど
これから読む読者には見たことのないキャラたちの均等描写は何の価値もありません。
表紙に必要なのは読者が中身を読みたくなるような期待感を煽ること。
つまりは予告編です。
そこにおおよそ均等に6人ものキャラを並べても読者は何を期待していいかさっぱり判りません。
そもそも主人公の描写がやや小さいのも問題…
主人公のある行動が皆の心を動かす物語なんだ…そんな期待を煽る絵が表紙には必要なのではないですかね。
読者(客)の側から何を描くべきか考える…それは全ての創作の基本中の基本です。
プロになるなら、目指すならば読者のために描くという絶対の基本を忘れてはいけません。
表紙も含めて全てのシーンで考えるべきことなのです。
そして本編…最初の数ページで足元までしっかり描いたカット、どこに彼女らがいるのかが
しっかりわかるコマがなくて、結果として実在感が乏しい印象が残ります。
キャラの足元だけが切れている構図はしっかり足元まで入れましょう。
そして数ページ読んで分かる大事な問題点、主人公がキャラ的に普通です。
これは大問題です。
設定は特殊なものを用意していますが、キャラとしての特別な魅力がないまま
衝撃的エピソードに突入してドラマに入ってしまっています。
ここでキャラに魅力があればこのドラマが、「この魅力的な子がどうなってしまうんだろう?」って
心配な気持ちが読者におきて、物語の吸引力になるのですが、キャラが平凡にしか描かれていないために
衝撃度が遠くの方のものにしか感じられません。
そうして最初のシーンで惹きつけられなかったので、そこから先も何が起こっても
全てが望遠レンズの向こうで起こっていることのような、対岸の火事のような物語になってしまっています。
そこから先で次々起こるエピソードもアイデア的には悪くありませんが、主人公の出来事に対するリアクションが
常に普通の反応であるため、魅力が増して行きません。
普通のリアクションを一つもしない、普通にできないのがいいキャラクターと憶えてください。
そんなキャラクターなら読者は行動を予測できないのでワクワクするし、退屈しません。
たとえ顔が可愛く描いてあっても、予想通りの行動しかしてくれないキャラは退屈でつまらないのです。
想像の枠を突き壊して斜め上に進んでくれるのが愛されるキャラなのです。
漫画はまずキャラクターです。でもよく漫画家志望者が勘違いするのは
キャラクターとは状況設定とか能力設定とかのことだと思ってしまうことです。
でも大事なのはそこよりも、事象に対するリアクションです。
どんな時にどんな行動をするのかの特殊性とそのリアリティです。
リアリティと言ったのは出鱈目に行動させて読者の予想をただ裏切ればいいというものではないということで
特殊なリアクションにはなぜそうなのかという生い立ちや理由や才能や目標があり、
読むほどに納得できるものでなければならないということです。
それができれば、生きたキャラが作品の中のすぐそこにいる近くの物語と感じられるはずです。
能力や状況設定はリアクションのリアリティのためにあったらいいねってもんなんです。
設定からキャラの魅力を炙り出して面白いリアクションができるように作り込む方法もありますが
面白いキャラまずありきで作った方がキャラにパワーは宿りやすいですね。
ただそこは作風によってどちらを選択してもいいと思います。
ただどちらにしてもキャラです!
面白いリアクションが取れるキャラさえ生み出せれば物語は何が起こっても
キャラが独特の行動で面白くしてくれて、
あとは主人公の行動原理、何を成し遂げたいのかと言うゴール設定さえしっかりしていれば
物語は読者にとって面白くて降りられないレールに乗ったようなもので、
終着駅に着くまで退屈しないものとなってゆくのです。
まずキャラの魅力をしっかり描きましょう!
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