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神社の呼び声

神社の階段は100を超えるだろうか
額からほとばしる汗と
永遠に続く石階段に意識が飛びそうだ

急に思い立って来たものの
神社の階段ってこんなに辛かったっけ
そんな独り言が漏れる

ただひたすら登るのは
もしかしたら誰かに呼ばれたからだろうか
そんな気がしていた

最近、僕はひどく疲れていた
特別大変なわけではないけれど
ただの睡眠不足だろう
よく眠れない日々が続いた

登るごとに風が木々をざわめかせ
鳥のさえずりが不思議と心に響く
少年時代の記憶がフラッシュバックする
友達と駆け回った日々、祭りの賑わい

突然、遠くから誰かの声が聞こえた
言葉ははっきりとわからない
それでもその声に導かれ、さらに階段を登る

神社にたどり着くと
そこには清らかな空気が漂い
懐かしい香りが確かに感じられた

神社に見覚えのある姿が
そこには昔と変わらぬ友達がいた
「そうか、君は神様だったんだね」

彼は微笑み、静かにうなずいた
「君がまた来てくれて嬉しいよ」
小さな男の子は昔のように、優しく話しかける

一緒に神社を駆け回っていたことを
昨日のように思い出す
神様は葉っぱを取り出し、ゆっくりと息を吹きかける
神社の葉っぱが揺れ動き、風が舞う
僕は一瞬よろけてしまった

神様はニコッと笑い、何かを呟くが
どうして、全然聞こえないよ

次の瞬間、僕の体はすっと楽になる感覚が広がる
「また会えてうれしかったよ」
あの頃と何も変わらない神様の顔に安堵した僕は
神社を後にした


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