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時計の契約:第4章17時

17時:呪文

ドスン。地面に激しく叩きつけられた音が響く中、俺は尻もちの痛みに耐えながら意識を取り戻していった。ぼんやりと視界がかすむ中、そこに広がるのはまるで俺がプレイしていたゲームの世界そのものだった。不思議な感覚が心を包み込む、ふと隣に人影を感じ、俺はそっちへ振り向いた。
 
俺と同じサイズの白猫の姿が目に飛び込んできた。白魔法の装いを身にまとった、真っ白な毛並みが美しい猫だ。長い毛がふわふわと揺れ、時が止まったように見つめあっていた。薄い青色の目は俺をじっと見つめていた。立派なひげが猫の顔に生え、その可愛らしい猫耳は風になびいて、耳の毛先がほのかに揺れている。
 
しかし不思議なことに、俺が左手を伸ばすと、視界に入ったのは真っ黒な短毛の猫の手だった。
「わぁ」
『わぁ』
二人の声が同時に響いた。驚きを隠せずにいると、またも同時に「ごめん」という言葉が漏れた。この幻想的な空間で響く二重の声は、俺らが理解するまでに時間はかからなかった。
 
はるだね」
颯空そらだね』

また同時に話す。不思議な感覚だった。互いのしっぽがやんわりと揺れる。
その白い猫は遙であり、黒い猫が俺のようだ。その直後、俺らの前に立ちはだかったのは、黒くて鋭く冷たい眼差しを持つ悪魔と、白い光を帯びた眼差しを持つ悪魔の姿だった。その悪魔の存在に驚きを隠せず、心の奥底に何かが揺れ動くのを感じた。その悪魔は静かに、だが威圧的に近づいてくる。
 
「ようこそ、異世界へ」と黒い悪魔の不気味で穏やかな声がとどろく、俺たちは困惑しながらも新たなる旅への一歩を踏み出すのだった。
 
黒い悪魔は颯空へ、白い悪魔は遙のそばにやってきた。その鋭く見開いた眼差しで、心の奥底まで見透かされる気がした。「君たちがここに来た目的、忘れていないか?」黒い悪魔が尋ねてきた。二人は静かにうなずく。俺らに迷いはない、その目には覚悟を決めた強い意志が宿っていた。

「この世界は時の本の中だ。ここでは、時の法則が支配し、全てが本の中に収束する。そして、時の本を消滅させなければならない。消滅させるためには、特別な呪文が必要だ。」白い悪魔が静かに語り始めた。
「呪文は全部で8文字。正しき言葉を導き出した時、本の力を解き放ち、この世界が解放される。」俺たちはその言葉を深く心に刻み込み、時の本の謎を解き明かすため、呪文を探し求める冒険に旅立つ。


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