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長崎市滞在-2022/12/11

昨日、燈家で知り合ったKさんに誘われた「長崎さるく」へ。

これはウォーキングしながら長崎について勉強できるイベントで、毎週開催されている。「さるく」とは、長崎の言葉でぶらぶらと歩く、散歩するといった意味らしい。

朝10:00、丸山公園に集合。

Kさんは午前中都合が悪いとのことで、顔見知りがいない。公園の端っこにそれっぽい団体を見つけ、ガイドの方に参加費¥500を払う。地元のおじさまおばさまと思しき人たちが、6人ほど集まっていた。みんな知り合いのようで、昨日燈家で話した男性二人組のもう片方のおじさま(以降、Aさんとする)が来ていてホッとする。

そろそろ出発しようかという時、「これはこのイベントとは違うの?」と濁声のおじさんが現れた。

デカいお腹にカメラがちょこんと乗っかっていて、体と同じく態度もデカい。神戸から一人で来たようで、違うイベントと間違えてしまったようだ。変な空気を皆が共有したが、「せっかくだし、こっちに参加したらいいじゃない!」というおばさま方の声で、彼も加わることになった。

気を取り直して、長崎さるくに出発。

ガイドのおばさまを先頭に、ぞろぞろと街を歩く。Aさんが気を遣って色々と話しかけてくださり、ありがたい。

今回は長崎の土木遺産「えご」を巡るツアーである。「えご」は、川より狭く、溝より広い水路のことで、昔の下水道だ。水が流れやすいよう両端に斜めの石が敷き詰められている。素人の私は、未だに川と溝とえごの区別がつかない。

コレラが流行った明治十九年に、日下義雄という初代県知事が下水を整備するために作ったもので、土ではなく石で製作することによって、汚染された下水が上水道に沁み込まないようになっている。莫大な予算がかかり反対意見も多かったそうだが、コレラが流行ると長崎の交易にも影響がでるため急ピッチで進められ、結果的に長崎の下水処理能力は大きく発展したようだ。当時の港である、神戸や横浜に対抗する意味もあったとのこと。

「えごは、全国でも長崎にしかないんですよ」とガイドのおばさまが説明している時、先ほどの飛び込み参加のおじさんが「神戸にもこんなんあったけどなあ」と食い気味で被せてくる。皆ほんのりと苦笑い。なんというか、最初自分以外が皆知り合い同士でアウェイ感があり心細かったのだが、このおじさんのおかげで私も"仲間側"に入れてもらえた雰囲気で、申し訳ないが助けられた。

長崎は山に囲まれていて、雨が降ると一気に水が流れ込むため、治水は必須だ。戦後、路面電車の軌道上に多くの闇市があり、それらを移動させるために暗渠が作られた場所もあるらしい。

おばさま方と喋りながら街を歩く。

「コークオン」という単語が聞こえて思わず振り返った。歩くだけでポイントが貯まるコカコーラのアプリCoke ONを、参加者のおばさま方がやっているらしい。「私もやってます!」としばし盛り上がる(12/5の記事参照)。この日以外にも、長崎でCoke ONユーザーをちょこちょこ見かけた。念の為書いておくが、私はコカコーラの回し者ではない。

神戸のおじさんが突然消えたので、皆で探す。トイレに行っていたらしい。

おばさま方に長崎で何を食べたか聞かれたので、きのう寶來軒 別館に行ったと答えると「あそこはまあまあね」と返ってきた。昨日話した人たちは移住者ばかりだったので、今日初めてコテコテの長崎弁を浴びている。イントネーションが独特で、ドラマの世界に入ったような気持ちだ。

様々な場所を歩いた後、12:30ごろ浜の町アーケードで解散。

せっかくなのでご飯でもと誘っていただき、参加者のAさん、Eさんと「カフェ平井」へ向かう。

ホットサンドの種類が豊富で、それぞれ違う味を注文。

楽しみに待っていたところ、私のメニューだけ間違えて出てきた。13:30に東山手甲十三番館でKさんと待ち合わせをしていて、時間がなかったので「そのままで良いですよ」と言ったのだが、作り直してくださる。焦る私に、AさんがKさんに少し遅れると連絡してくださった。ホットサンドはとても美味しく、店の雰囲気も良い。

急いで食べて、Aさん、Eさんと一緒に東山手へ。

東山手甲十三番館へ着くと、Kさんがお茶を飲んで待ってくれていた。しばし皆で談笑し、建物を案内していただく。

この東山手甲十三番館は、長崎市の古い洋館群に立つ、国登録有形文化財だ。建築も装飾も美しい。展示の額を吊るすのに必要なピクチャーレールが、洋風の壁に違和感なく埋め込まれていてびっくりした。1階がカフェで、2階にも部屋がいくつかある。思いのほか展示できる箇所が沢山あった。

Kさんは物知りで、「ここは外国人が何人も住んだ建物で、この絵では建物の前にフランスの旗が掲げられているからこの時代の風景だ」とか、「ネジは当時マイナスしかなかったから、プラスのネジは建築当時のものではなく補修で使われたものだ」とか、「この植っている果物は隠れキリシタンがビタミンを摂るために植えたものだ」とか、そういうことを教えていただいた。一部レンガのところがあったので、当時の料理場ですか?と聞いたら当たっていたので嬉しい。

個展をしても問題なさそう、と判断してもらい、展示の申込書を書いた。県の施設なので、2月中旬にならないと来期の予定が確定しないとのことで、それまでは仮予約という形になる。

明日大阪に帰るので、ギリギリで無事に個展会場の目処がつき安心した。

建物入口で、緑のハートのフォトスポットを教えてもらう。長崎には何かとハートのモチーフが街に隠れているが、今まで見つけられていなかったので嬉しい。

そのまま皆で新地中華街近くまで一緒に歩き、解散。

ホテルへ帰る前に、長崎の版画家 田川憲さんのギャラリー「Soubi'56」に寄ることにした。昨日燈家でおすすめされた場所で、田川憲の名は長崎の人の話にちょくちょく登場する。

古いビルの奥にあるこぢんまりとした部屋を訪ねると、お孫さんの奥様が応対してくださった。燈家さんにご紹介いただいたと伝えると、気さくに色々教えてくださる。定期的に作品を入れ替えているとのことで、今回は版画ではなく大きな山のスケッチと、田川さんの言葉が飾られていた。

長崎のホテル ニュータンダのレトルトカレーのパッケージにもなっていて、版画独特のレトロな味わいが、異国情緒あふれる街のお土産にマッチしている。

せっかくなので田川さんの絵が載っているという本「写真でたどる 旧グラバー住宅の歴史」を買った。

近くに本屋の「BOOKS ライデン」という店があることを教えてもらい、ついでに寄って帰ることにする。

古いビルの2階に上がり、小さな扉から中へ。

手前にカウンターがあり、コーヒーの香りがする。古本も置いてあるが新しい本が多く、置いてあるものは比較的、文芸やアート寄りでない印象だ。長崎の冊子「樂」も何冊か置いてあった。コーヒーを注文するか迷ったが、カウンターで何人か談笑していたので、おいとますることに。また改めて来よう。

セブンでご飯を買ってホテルに帰り、お風呂に入った後ビビンバ丼をたべる。ちょっと辛かった(ちなみに甘口のカレーすら辛いと感じるので、おかしいのは私の舌である)。

訪崎7日目にして初めて、ずっと誰かと話している日だった。

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