マガジンのカバー画像

原典を読みながら環境・農業問題について考えてみる

141
聖書や日本書紀、平家物語などを読みながら、「日本」について外国人に説明するにはどうしたらいいかとか、農村部の論理と都会人の論理がどう違うかと言ったことについてのヒントを考えていま…
運営しているクリエイター

#史記

「周の禾」は「稲」なのか?他

「周の禾」は「稲」なのか?他

史記の鄭世家に鄭が「周の禾を取る」と言う表現が出てきます。

この「禾」について、現代語訳は「稲」としています。注釈には、左伝に秋に周の禾を取ったと言う記載があると書かれています。どうやら、左伝のこの記載を元に史記が書かれ、秋に取ったものだから「稲」と訳した模様です。

「禾」は例えば「秋」や「種」などに使われている「ノギヘン」、それ自体だけの漢字です。漢字としては穀物の総称で必ずしも「稲」を意味

もっとみる
キビはバンカープランツになるのでしょうか

キビはバンカープランツになるのでしょうか

近松門左衛門の五十年忌歌念仏では農民・佐治右衛門が育てていると言う作物のリストに「キビ」、「アワ」が登場します。

史記には「粟道を絶つ」と言う表現があり、兵糧攻めのことを指します。

「アワ」が主食だった時代があることを忍ばせます。

史記の楚世家では、楚の先祖「熊繹(ゆうえき)」を「楚蠻に封ず」とあり、当初、楚は蛮族=異民族と認識されていたことが分かります。

熊繹から4-5代後の熊渠(ゆうき

もっとみる
私もあの人も炙ったイカが好き・・・

私もあの人も炙ったイカが好き・・・

「天道、是か非か」(善人が不幸になり悪人が幸福になるとは天の道は正しいのか、間違っているのか)と言う史記・伯夷列伝の問いに端を発して、
人間は「善・悪」と言う判断をなぜしているのか?について述べる事を続けています。

性善説を唱える孟子と「性は生である」(生きている事が本性である)と言う告子の論争は、噛み合っているようで噛み合っておらず、噛み合っていないようで噛み合っているように読めます。

生は

もっとみる
善・悪の根拠は「外的規範」なのか

善・悪の根拠は「外的規範」なのか

善人が不幸になり、悪人が幸福になる、天道、是か非か(天の道は正しいのか、間違っているのか)

史記・伯夷列伝はこの問いを記しています。

さて、性善説を唱える孟子と反論する告子の論争は、「善・悪」と言う事柄について、興味深い視点を提供しています。

性は生、つまり、生きている事自体が人間の本性だと言う告子に対して、孟子はだったら犬だってウシだって生きている、
犬やウシの本性と人間の本性は変わらない

もっとみる
善悪以前に、人間の本性はウシの本性と同じなのか?

善悪以前に、人間の本性はウシの本性と同じなのか?

善人が不幸になり悪人が幸福になる…
「天道、是か非か(天の道は正しいのか、間違っているのか?」

史記・伯夷列伝は、この問いを投げかけます。

「善」と「悪」について、かなり興味深い考察をしているのが、諸子百家のひとり「告子」です。

性善説を唱える孟子との論争において、告子はこう述べています。

「食と色は性なり」
(人間の本性は善とか悪とかではない。食欲や性欲である。)

孟子は「性は生」、つ

もっとみる
神様や仏様の「約束」と救われる資格

神様や仏様の「約束」と救われる資格

なぜ、善人が不幸になり、悪人が幸福になるのか?
史記は「天道、是か非か(天の道は正しいのか?、間違っているのか?)」と記しています。

親鸞聖人の考えを解説した歎異抄は「弥陀の誓願不思議にたすけまいらせて」と言う言葉から始まっています。

「阿弥陀如来様が立てた近いの不思議な力で救われると信じて」と言うような意味です。

南北朝時代の「神皇正統記」にも「神は人をやすくするを本誓とす」とあります。

もっとみる
そもそも、「神」は人の幸せを願っているものなのか?

そもそも、「神」は人の幸せを願っているものなのか?

善人が不幸になり、悪人が幸福になるとしたら、「天道は是か非か(天の道は正しいのか?、間違っているのか)」と史記・伯夷列伝は疑問を投げかけます。

この疑問に対して、旧約聖書に記載されている通り、「天」や「神」の側から「造られた者が造った者に分別がないと言えるのか?」、「私(神)が世界を造った時、お前(人間)はどこにいたのか?」と答えてこられると、ある意味、行き止まりとなります。

私(人間)は「私

もっとみる
「私」がなぜこうなのかについて、「カバ」や「ワニ」を持ち出されたらどうするか

「私」がなぜこうなのかについて、「カバ」や「ワニ」を持ち出されたらどうするか

司馬遷の著作・史記の伯夷列伝は、「天道、是か非か(天の道は正しいのか?、間違っているのか?」と言う問いを投げかけています。

暴虐な紂王を打倒して周王朝を創始した武王。
それに対して、暴力をもって暴力を打倒するのはおかしいと指摘し、周王朝が提供する穀物を拒んで餓死した伯夷。

史記は、盗賊をしていても長生きする者もいる、もっぱら悪い事ばかりしていても幸福になれる者もいる、

善人が不幸になり、悪人

もっとみる
「敵」のメシを食べて、そのうちリベンジはやってもよいか?

「敵」のメシを食べて、そのうちリベンジはやってもよいか?

捲土重来って言葉があります。
ケンドジューライとか、ケンドチョーライとかと読みます。

捲土は土を巻き上げること、
重来は再度来ること

いったん、負けた人が、反撃にやってくることを言います。

臥薪嘗胆って言葉もあります。
ガシンショータンって読みます。

薪の上に寝たり、苦い肝を舐めたりするような
辛いことを耐え忍んで、そのうち、復讐してやろうって思う事です。

さて、暴をもって暴を打倒する…

もっとみる
「名」なのか、「来世」なのか、「子」なのか…報われない善行をする意味

「名」なのか、「来世」なのか、「子」なのか…報われない善行をする意味

松嶋菜々子主演のスウィートシーズンは、最後は不倫相手と結ばれハッピーエンドになります。

上戸彩主演の「映画版・昼顔」は不倫相手と結婚寸前で相手が死んでしまうと言う衝撃の展開でした。
ところが、相手の子どもが自分の体の中に宿っている事を知ったヒロインは生きる事を決意し…

史記・伯夷列伝は、善人でも報われない人がいる、悪人でも幸せに生きられる人がいる

天道、是か非か…(天の道は正しいのか、間違っ

もっとみる
食い違う「正義」と善人の苦労

食い違う「正義」と善人の苦労

天道、是か、非か
(善人が大変な思いをしているのに、悪人が栄えている。
天の道は正しいのか、間違っているのか)

史記・伯夷列伝は、この問いを投げかけています。

主人公の伯夷は、最期は飢え死にしてしまうのですが、
そこに至る経緯を史記から追ってみると、以下の通りです。

1)殷の紂王は暴虐だった
2)周の武王は紂王打倒を考えた
3)伯夷は臣下が主人を倒すことは仁に反すると反対した。
4)武王の家

もっとみる
社会の改革と個人の不幸

社会の改革と個人の不幸

「るろうに剣心」と言うアニメがあります。

主人公の緋村剣心は、明治維新を実行したい志士達に頼まれて、幕府側の人を殺す刺客となります。
しかし、剣心に殺された人達にも家族がいたのです。

こうした社会の改革と個人の幸・不幸の矛盾について、史記は、伯夷列伝の中で「天道は是なのか、非なのか(天の道は正しいのか、間違っているのか」と述べています。

殷の紂王は暴君でした。周の武王は紂王を打倒しようと考え

もっとみる
誰もが欲動を持っているから許すと言う論理

誰もが欲動を持っているから許すと言う論理

北京女子図鑑って動画ドラマを見ました。
もともと、地方から東京に出てきた女性たちの姿を描いたウェブコラムで東京女子図鑑と言うのがあって、実写ドラマ化されたようなのですが、
北京女子図鑑はその中国版で制作されたようです。

その北京女子図鑑のドラマの中で地方都市・成都から北京に出てきた主人公は、男性の社長と交際します。
しかし、男性社長は、他の女性と結婚。

「彼は結婚したくないんじゃない、あなたと

もっとみる