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原典を読みながら環境・農業問題について考えてみる

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聖書や日本書紀、平家物語などを読みながら、「日本」について外国人に説明するにはどうしたらいいかとか、農村部の論理と都会人の論理がどう違うかと言ったことについてのヒントを考えていま…
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#天地創造

大空の上の水とはなにか

大空の上の水とはなにか

旧約聖書の天地創造物語で「天」の創造は、かなり独特な内容になっています。

「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」神は大空をつくり、大空の下と大空の上に水を分けらさせられた。そのようになった。神は大空を天と呼ばれた。

この後、神様は「天の下の水は一ヶ所に集まれ。乾いたところが現れよ」と仰られ、乾いたところを「地」、水の集まったところを「海」と呼ばれたと言う形で、天と地と海が成立します。

日本書

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天には初めから星があるのか?

天には初めから星があるのか?

大地はまずはじめに彼女自身と同じ大きさの星散乱える天を生んだ。天が彼女をすっかり覆い尽くし、常久に揺るぎない御座となるようにと。(ヘシオドス 神統記)

ヘシオドスの神統記では、「(大地)が星散乱える天を生んだ」と述べており、天は生まれた時から星があった事になっています。

この点が旧約聖書の天地創造物語と違っています。

神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」神は大空をつくり、大空

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「大地」は何のために存在しているのか

「大地」は何のために存在しているのか

まず原初にカオスが生じた。さて次に胸幅広い大地、雪を戴くオリュンポスの頂きに宮居する八百万の神々の常久に揺るぎない大地と路広の大地の奥底にある曖曖たるタルタロス、更に不死の神々のうちでも並びなく美しいエロスが生じたもうた。(ヘシオドス 神統記)

ヘシオドスの神統記では、カオス=混沌の次に大地が出来たとしています。この段階では、光と闇、昼と夜は出来ていません。また、天も存在しません。

一方、旧約

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光と闇の起源について

光と闇の起源について

僕は前から旧約聖書の天地創造神話は、ギリシャ神話を意識して書かれたのではないかと思ってきました。

旧約聖書では、アダムとイブが、神様から食べてはいけないと言われていた「善悪を知る実」を食べてしまいます。そして、エデンの園を追われます。その後、人々は神の名によって祈り始めるようになったと言われます。

ギリシャ神話では、神々から開けてはならないと言われた箱をパンドラが開けてしまいます。箱からは、あ

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「日本」をどう海外の人に説明するか、日本書紀を読みながら考えてみる

「日本」をどう海外の人に説明するか、日本書紀を読みながら考えてみる

僕は30代の頃、何回か、中東に環境調査に出かけました。

まだ、あまりインターネットが発達していなかった時代、テレックスやFAX、国際郵便等が日本から現地と連絡を取り合う手段でした。

ある時、パキスタン人から、お前が日本から送ってきた手紙の切手にNIPPONって書いてあった。日本人はジャパンの事をニッポンって言うのか?それはどういう意味だと聞かれました。

それで、昔むかし、セイント・プリンスが

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混沌の次に古い奈落とエロス

原初にカオスが生じた。胸幅広いガイア(大地)、雪を頂くオリュンポスの頂きに宮居する八百万の神々の常久に揺るぎない御座なる大地と、路広の大地の奥底にある曖々たるタルタロス、さらに不死の神々のうちでも並びなく美しいエロスが生じたもうた。この神は四肢の力を萎えさせ、神々と人間ども、よろずの者の胸うちの思慮と考え深い心をうちひしぐ(ヘシオドス 神統記 岩波文庫版)

ヘシオドスの神統記では、原初にカオス=

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「語り手」が存在する神統記、存在しない創世記

西欧思想の根源の一つにキリスト教とともにギリシア思想があげられています。

既にこのシリーズでも、旧約聖書の冒頭にある天地創造の神話について取り上げていますが、ギリシャ神話での「天地創造」とどう違うのか、比較してみたいと思います。

岩波文庫版の「神統記(ヘシオドス)」と旧約聖書の創世記を比較してみると、まず気づくのは「語り手」の存在の有無です。

神統記は、このように始まっています。

「ヘリコ

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「地」が出来て、人の食物が生まれる。

旧約聖書の天地創造物語では、第一日目に「光」が創造され、第ニ日目には大空の上と下に「第一物質=水」が分離される形で、「大空=天」が生じてきます。

第三日になると、神様は、

「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現われよ」と仰られます。

そして「神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。」とあり、

足掛け2日で、天・地・海が誕生した有様が描かれるの

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人の怨み、十七条憲法とかと、旧約聖書の天地創造物語についての取り留めのないお話

「か様に人の思ひ嘆きのつもりぬる平家のすゑこそおそろしけれ。(平家物語 巻三 有王島下り)」

平家物語では、平氏打倒の陰謀を企てたとして、俊寛僧都他3名が鬼界ヶ島に流されます。

2名は許されるのですが、俊寛僧都だけは許されず、ついに島で亡くなります。平家物語は、その顛末を語った後、人の思いや嘆きが平家に対し積もっていく事を「おそろしけれ」と表現しています。

実は、いわゆる十七条憲法は第十五条

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ちょっと寄り道して聖書と神皇正統記を比較してみる

第一物質である「水」から天地が作られている過程を聖書がどう描いているかを述べてきましたが、

今回はちょっと寄り道です。(シリーズ三回目で早くもと言う感じですが)

聖書の天地創造物語では、第一物質である水を前に、神様が「水の中に大空あれ、水と水を分けよ」と述べて、「大空」が出現し、その大空を神様が「天」と呼んだとあります。

しかし、これは第二日の事です。

では第一日は何をしていたのかと言うと

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