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儲かる飲食業の方程式

月末目前の2月23日が天皇誕生日として祝日になった関係で、ただでさえ営業日の少ない2月がここ数年とんでもなく忙しくなってしまったな・・・などと思いながら昼食を食べていたタイミングで、悲しいタイトルの記事を見かけました。

オーナーの黒田氏に密着した何回かの連載ものの記事のようで、最初の記事で黒田氏の現在の姿を書いたのちに、二回目の記事から黒田氏の半生を追いかける構成になっているようです。

というわけで、初回の記事を見ると黒田氏は最終的にバナナジュース店に業態を転換して成功を収めるという答えが書いてあるのですが、第三回目のこの記事においては脱サラして始めた焼きそば店がうまく立ち行かずに苦労されている様子がありありと描かれていました。

損益分岐点のリアルな数字や、麺類の業態はカウンター席主体か居酒屋業態にするのが当たり前といった興味深い知見も書かれていました。

きっと次回以降で焼きそば業態の強みや弱みについての深掘りがリアルなエピソードを通じて描かれ、そしてバナナジュース店という答えに至るまでの道のりについて、種明かしが公開されることだろうと思います。

今日はその種明かしが公開される前に儲かる飲食業の方程式と題して、飲食業態の成功の秘訣について独断と偏見から考察していきたいと思います。

 

1.原価の安いもの


事業投資の仕事をしている職業柄、飲食業のオーナーとはよく対峙するもので、儲かっている人もいれば、儲かっていない人もいらっしゃいます。

その中で多くのオーナーがおっしゃっていたこととして、「当たり前だが、安いものを高く売るのが商売の基本」という点があります。

人件費や家賃など、固定費となるものは削りようがなく、ある程度仕方がないものですが、変動費にかかる部分、中でも特に最も大きなウエイトを占める材料費売上原価を抑えることは、儲かることを主眼に置く上では極めて大切な考え方でしょう。

以前の記事でも少し書かせていただきましたが、タピオカドリンクや高級食パンなど、一世を風靡する流行を見せた業態は軒並み食材の原価が安いという共通点を持っていたように思います。

焼きそばやバナナジュースを扱っているという実績から、冒頭の記事の黒田氏もキッチリとこの部分は押さえられていると思われます。

うどんやパスタといった炭水化物や、比較的原価の高いフルーツの中でも例外的に安いバナナは高粗利率をたたき出す代表的な食材といえるでしょう。

2.手間がかかるもの


自宅での調理と外食・中食を比較する場合、調理の手間がどれだけかかるかという部分が重要になってきます。

簡単に家で作れるものであれば材料を買ってきて家で作った方が安上がりですし、外でどうせ食べるならなかなか自宅では作れないもの、もっと言えば作るのが面倒なものの方が付加価値が高いでしょう。

わかりやすい例が揚げ物です。家で油を用意して数人前、家族の分を揚げることはできなくはないですが、なかなか面倒なものです。だからこそ、スーパーの惣菜コーナーでは揚げ物が多く売られていて、よく売れるわけです。

自宅で準備から後片付けまでするのは大変な労力がかかりますが、業務的に大量生産するのであれば、準備や後片付けの手間が労力全体に占める割合は小さくなります。揚物のほか、たこ焼きや牛丼などもこのカテゴリに入るでしょう。

バナナジュースにしても一人前だけ作るなどと考えたら面倒なことこの上ありません。この「面倒」の部分を引き受けることで、原価の安いものが高く売れるようになるわけです。

 

3.専用の設備を要するもの


手間がかかる揚げ物やバナナジュース以上に自宅で料理するのが困難なものとして、専用の設備を要するものが挙げられます。

具体的には、焼くためのオーブンや窯が必要なピザ寸胴鍋でスープを何時間も煮込む必要のあるラーメンホームベーカリーでは限界のあるパンなどが挙げられるでしょう。

これらのジャンルは当然競争相手も多くなってくると思われますが、自宅では味わえない味覚であるだけに外部の飲食店に求められるニーズは根強く、安定した需要が見込まれます。

4.少量だけ使う食材が料理の要となるもの


労力や設備の面で、自宅で作ることが困難な料理を挙げてきましたが、もうひとつ、少量だけ使う食材が料理の要となるものというのも、自宅では難しい外食や惣菜ならではの味覚といえるでしょう。

例えばカレーを作るには市販のカレールゥを使えば簡単ですが、クミンやコリアンダーを使ったスパイスカレーとなるとそうはいきません。

毎週カレーを食べるとしても、数十グラム、数百グラムと買ったスパイスを使い切ることは、よっぽどのスパイス愛好家でなければ難しいことだと思います。醤油やマヨネーズを使い切ることとはわけが違います。

おでんなども、様々なタネを少量ずつ食べるため、一人暮らしや核家族家庭にとってはなかなかハードルが高い料理です。コンビニのおでんが高いにもかかわらずよく売れていることが証左でしょう。

30品目の野菜などとアピールするデパ地下サラダや、色んな種類の魚を少しずつ食べる回転寿司などもこのジャンルに入るでしょう。

多くの顧客に大量に提供するからこそ、一人一人の顧客には少量ずつ多品種の食材を提供できるようになります。少量ずつ売るからこそ、原価の安いものが高く売れるようになるわけです。

5.食材が日持ちするもの


最後に、食材の廃棄をなるだけ減らすことも、原価率を低く抑える観点からはよくよく考えておく必要があるでしょう。

飲食業は天気にすら左右される、不確定要素の大きい業態です。
刺身フルーツなど、日持ちせずすぐにダメになってしまう材料では、廃棄ロスのリスクが大きく、客足が伸びなかった日の損失の傷が大きくなりがちです。

黒田氏の例で言えば、焼きそばは麺も具も比較的日持ちがする食材だと言えそうです。バナナジュースの場合は、バナナも牛乳も焼きそばに比べると劣化が早そうですが、メニューを絞った専門店化することで廃棄が出ないようにおそらく意識しているのでしょう。


個人的に、上記の5つを全て満たすものとして、カレーパンなどが良さそうだと考えています。

あくまで机上の空論ではありますが、原価率の安い炭水化物、手間のかかる揚げ物、自宅では生産設備のないパン、スパイスが肝となるカレー、そして食材は小麦粉も具も基本的に日持ちするという、なかなか有望なジャンルではないでしょうか?

堀江貴文さんが最近カレーパン屋に力を入れられているそうですが、もしかしたらこのような戦略も考えられているのかも、と勝手に思っています。全然違ったらごめんなさいという至極勝手な想像ですが・・・。


本日は以上です。
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それではまた次回。

2022.2.22 さいとうさん


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