「長野原草津口駅」と「万座・鹿沢口駅」の立地が中途半端すぎる件について調べてみた
二週間前に草津温泉を訪れたのに続き、今週は万座温泉に来ています。
草津温泉も万座温泉もともに群馬県吾妻郡に位置する温泉で、直線距離では10キロ程度しか離れていません。どちらも山の温泉らしい特徴的な硫黄臭の温泉なのも同じです。
敢えて言うならより山奥の温泉だからでしょうか、万座温泉の方が特に濃い硫黄成分が溶け込んでおり、多くの湯の花が砂のように沈殿していたことが印象的でした。
鉄道アクセスは「長野原草津口駅」と「万座・鹿沢口駅」というそれぞれの最寄り駅がともにJR吾妻線に存在し、電車で5駅の距離です。
しかしこの鉄道アクセスが、なんとも微妙というか、中途半端な場所に位置しているのです。下記の画像をご覧いただくとわかりやすいと思います。
草津温泉は約30分、万座温泉は約45分のバス移動が最寄り駅を降りてから必須です。不便だと非難をしたいわけではないのですが、かりにも温泉界の不動の横綱であるならば、もっと交通利便性の整備がされていてもおかしくないんじゃないかと疑問に思いました。
首都圏からのアクセスに際しても、軽井沢からバスという手段が現実的な選択肢である程度には両駅は微妙な存在になっています。
というわけで本日は、そんな素朴な疑問を調べてみた結果について簡単に記したいと思います。
1.元々貨物線だった鉄道路線
なぜこのような立地となったのか、的確に解説されているサイトは見当たらなかったのですが、様々な情報を合わせて読み解いていくことで、おおよその理由が推測できました。
まず吾妻線という路線の歴史を調べてみたところ、そもそもこの路線がまずもって温泉観光の路線ではなく貨物線として開業したことがわかります。
1945年にもっぱら貨物輸送目的で開設した路線だったものの、周辺住民の移動需要を拾う形で旅客営業も並行して行っていたことが書かれています。
1963年の群馬鉄山の閉山と時期を同じくして特急「草津」が運行されるようになり、ここから貨物線から観光路線として第二の人生を歩むことになったのが吾妻線という路線なのではないかと考えられます。
鉄鉱石や石炭などの貨物輸送の需要で敷設された線路といえば、北海道の多くの廃止路線が連想されます。北海道の廃線の多くは鉱山や炭鉱の閉鎖に伴って貨物輸送需要がなくなり、かといってそれを補うような旅客輸送需要も存在しなかったことによるものです。
吾妻線という路線は鉄鉱石の貨物輸送というルーツの部分は北海道の廃止路線たちと同じです。違ったのはバスで30分程度の場所に温泉資源が存在したことであり、これがあったからこそむしろ何とか廃線を免れているというような状況なのではないでしょうか。
長野原草津口駅の平均乗車人員は700名前後で推移し、吾妻線全体としての営業係数も200を越えているという事実からしても、路線自体がお世辞にも優秀な稼ぎ頭とは言い難い状態であり、何とか廃線を免れている状態という評価はある程度当たっているのではないかと思っています。
2.高速道路も実は未整備
草津温泉・万座温泉への鉄道をいまさら充実させるのは難しいであろう理由はいくつも想像できます。
モータリゼーションの進行とともに自家用車での旅行が一般的になったためいまさら鉄道路線を拡充しても採算が取れないであろうこと、起伏の激しい山の中に線路を敷設するには迂回をするか高額な予算を投じてトンネルを掘るかする必要があること、高名な温泉地にトンネルを掘った場合は温泉を含む出水が当然に予想されること、それらのハードルを乗り越えて路線を計画しても、周囲三方を山に囲まれている立地上、盲腸線にならざるを得ず、利便性に乏しいものになるであろうこと。
軽く考えてみただけでもこれだけのハードルがあります。
特に最後の盲腸線にならざるを得ないという部分は鉄道のみならず高速道路に関しても言えることであるように思います。
高速道路の計画自体は存在しているそうなのですが、群馬県の中心地側から草津・万座へは高崎から下道でも1時間~1時間半程度でたどり着けるというそこそこの好立地であること、そして何より、長野方面、新潟方面に抜ける道が考えにくい盲腸線になってしまうということのハードルが高いのでしょう、あまり順調には進んでいないようです。
便利な鉄道駅など夢のまた夢で、貨物線の歴史があり、その有効活用の模索の結果として今の駅が生き残っているという状態をむしろありがたく思わなければならないのだろうという印象を持ちました。
本日は以上です。
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それではまた次回。
2022.2.13 さいとうさん
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