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優しいスプーン | 詩


優しいスプーン
折り曲げたら憎しみに変わった

あっけらかんとしてるなぁ
と思っていたあの子は
実は誰よりも気にしいだった

みかんの皮のように
外側からしおれていく

人と違っていたい!と言い張る
セリフとは裏腹に
人に合わせて安心してる
わたしがいたのも事実で

何も浮かんでこなくても
周りはそれぞれがそれぞれに息をして
先に進んでいく
山を登っていく

一方まるでわたしは
筏のように川を下る人生のようで

時々岩に当たっては
次の言葉が浮かぶまで立ち止まり
またゆらりと流される

もう少し頑丈だったらな

もう少し器用だったらな

そんな言葉たちも
水面に浮かんでは
スイスイと流れてゆく

さようなら
元気でね

優しいスプーン
今度は折り曲げないで
そっと握ったまま

きっと大丈夫
誰にも聞こえないよう呟いた

本音はまだ

言わない

こころは誰にも

渡さない



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