脊髄視床路の走行とMRI読影
どうも、サギョウ先生です!
今回は、タイトルにあるように臨床でよく出会う「感覚障害の主な原因となる脊髄視床路(STT)」の走行をMRIから読影できるようになっていきましょう!
ということで、今回は「 Diffusion tensor tractography studies of central post-stroke pain due to the spinothalamic tract injury: A mini-review. 」を読んで、得られた知見とこれまで僕が学んできた知識を織り交ぜながらSTTが読影できるように書いていこうと思います‼️
(機能については、参考書を主体にまとめています)
ちなみにFREE記事なので以下⬇️から読むことができますよ😆
本題に入る前に、僕の思いを聞いてください🙇♂️
僕は作業療法が大好きでして、特に対象者の「ひととなり(ナラティブ)」を意識して、心から身体を変えていくという点が大好きです!
一方で、臨床や学校教育の中で、ナラティブに目が行きすぎてしまい、メカニズムやエビデンスに弱い部分も感じていました、、、
そこで、作業療法士がナラティブだけでなく、科学的なメカニズムやエビデンスを身につけるための一助となるように情報発信を始めました!
「自分の介入に自信がない」「他職種の話についていけない」「患者さんに説明できない」と感じてる作業療法士はぜひ僕と一緒に勉強していきましょう🦍🔥
では、本題にいきましょ〜う!
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
STTの走行については、大まかに「脊髄で交叉して」「視床VPLまで上って」「S1に投射する」くらいでしか理解していませんでした・・・
しかし、CSTの記事を作成していて
「あれ?STTもちゃんと走行を理解しないとダメじゃね?」
と思ってしまったのです💦
CSTの走行をまとめた記事はこちら⬇️
そして調べてみると、やっぱり拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)で解析している論文が見つかったわけです!
ただ、CSTほど詳細な解析をしている論文を見つけることができなかったので、今回の論文と参考書を基に、僕が調べることができたSTTの走行をまとめてみようと思いました✨
(今後更新する可能性があるので、定期的に確認してくださいね)
今回読影する範囲はコレ!
では、早速読影していきましょう!
読影していくのは以下の範囲になります🧠
本来、脊髄視床路は脊髄での読影も重要になるのですが、普段よく目にする頭部MRIでは脊髄まで見れることは少ないと判断したので、延髄よりも頭側のMRIを抜粋しました🙇
STTの機能を復習
まずは機能を簡単に復習していきましょう!
感覚は大きく3種類に分かれますが、STTはその中の「体性感覚」に関与しています🖐️
体性感覚はさらに3種類に分かれまして、その中でも、特に「表在感覚」の伝達を担っていますよ!
体性感覚は、別の分け方もありまして、大きく2種類に分けることができます!(上図)
「意識」にのぼる・のぼらないの2つなのですが、「意識=大脳皮質」と思ってもらえれば大丈夫です🧠
つまり、意識にのぼる感覚とは大脳皮質まで投射される感覚で、意識に上らない感覚とは小脳や脳幹に投射する感覚という認識で大丈夫です🫡
STTは「意識にのぼる感覚」に関与しています☝️
STTは「外側脊髄視床路(LSTT)」と「前脊髄視床路(ASTT)」の2つに分けられます✌️(上図)
細分化されすぎだろ🙄💦
(皆さんの心の声を代表しました)
気を取り直しまして、、、
ではまず、LSTTについてです!
LSTTは、新脊髄視床路とも呼ばれ、系統発生的に新しい要素であり、ヒトで最もよく発達していると言われています👦
LSTTは、触覚(粗大)と温度覚、一次痛と呼ばれる速い痛みを、視床を介して一次体性感覚野(S1)に伝える神経線維です🏃♀️
主にAδ線維を含んでいて、爪楊枝で突っつく検査など(NIHSSの感覚検査など)で検出することができます🪡
ちなみに、LSTTは体部位対応配列が見られるとされていて、頸髄レベルでは「背外側=下肢」「腹内側=上肢」といった位置になっています☝️
次に、ASTTについてです!
ASTTは、旧脊髄視床路とも呼ばれ、系統派生的に古く、全哺乳類に存在するとされています☝️
ASTTは、二次痛と言われる遅い痛み(鈍痛)を伝達します🏃♂️
この鈍痛は、C線維によって伝達されまして、局在が曖昧な疼くような痛みが特徴で、情動にも影響を及ぼすとされています😣
ASTTは、視床に到達するまでに、橋・延髄網様体や縫線核群、中脳中心灰白質などに側枝を送っていて、網様体視床路線維と混在しています🔀
ちなみに、LSTTは主に視床VPLへ投射しますが、ASTTは視床ILやCMに終止するものが多いとされています😳
つまり、ASTTの方がLSTTよりも上行性覚醒系との関連が強いようですね🤔(上図)
LSTTとASTTは、脊髄では上図のような走行の違いがありますが、上行するに連れて境界は明確ではなく、特に延髄以上のレベルでは1つにまとまって走行するので、今回はSTT(LSTTとASTTを含んだ)の走行として解説していきます🏃♂️
STTの全体像
まずは全体像を見てイメージをつけていきましょう!
刺激を感じると、ほぼ同じレベルで交叉し、対側の脊髄を上行していくのがポイントですね💡(詳細は下記)
さらに詳しく見ていくと、下図のようなポイントを通過していきます🏃♀️
Instagramではパッと見やすい画像を投稿しています⬇️
STTの脊髄レベルでの特徴としては、後根から脊髄に進入した後に、脊髄灰白質のⅠ〜Ⅴ層でシナプスを形成し、前白交連で交叉して(一部は非交叉)対側の前索・前側索を上行していきます🏃♀️
※交叉は脊髄灰白質内を1〜2脊髄節ほど上行する間に行われています。
ちなみに、STTは脊髄から視床までの経路のことを指し、視床から皮質までの経路は視床頭頂(皮質)路と呼びます☝️
この視床頭頂路に関しましては、以下のように言われています📣
ですので、視床頭頂路の解説はあくまでも参考程度に聞いてくださいね👂
MRIで見るとこんな感じです⬇️
かなりイメージできてきたのではないでしょうか🤭?
では、それぞれのさらに詳細な読影について解説していきますね✨
MRI読影
では、さっそくSTTを探していきましょう🕵️
STTはCSTの後方(主に内側)を走行するので、CSTと比較するとより分かりやすいと思います💡
ぜひCSTの記事も読んでくださいね⬇️
※今後2つの線維を合わせた記事も作成しますね!
では、本題を進めていきます🫡
皮質レベル
上図からS1を探すことはできますか?🕵️♀️
できなかった場合も安心してください☺️
これから1つづつ解説していきますよ👍
皮質の領域を探すのであれば、例の如くまずは「中心溝」を見つけましょう🔍
なぜなら、S1は中心後回に位置しており、中心後回は中心溝の後にある脳回だからその名前がついています👍
⬇️のポイントを押えることで、ほとんどの場合に対応できるかと思います☝️
特に僕のおすすめは「pM bracket sing」「handkob sing」「Bified post CG sing」の3つです!
この3つだけでも結構な確率で見つけられますが、6つ全てを押さえておくとより安心かと思います👍
ここまでで、「中心溝」を見つけられたと思いますので、その後方にある「中心後回(S1)」も見つけられたと思います✨
ちなみに!
S 1にもM 1と同様に感覚のホムンクルス(身体部位局在)があります👄🖐️🦵
上図の左側の画像は、学校の教科書などでも見たことがあるのではないでしょうか?
こちらはかなり古いホムンクルスになりまして、現在は右図の下のようなホムンクルスが確認されています👀
最近のホムンクルスの特徴は、各身体部位の情報が体性感覚野全体に分布(手足などの領域が限局化されていない)しています☝️
これは、感覚情報が一部の領域に限定されるのではなく、より広範に共有されていることが推察されますね🤔
ちなみにM1のホムンクルスもびっくりするくらい改変されていますので、合わせて覚えておきましょう☝️
さて、S1を探すことはできたでしょうか🕵️♀️?
次は皮質下のレベルになっていきますよ👍
半卵円中心レベル
次はこのレベルです!
上図ではどこをSTTが通るのでしょうか?🕵️
では、さっそく解説へいきますね☝️
上図のように大体この辺りをSTTは通過していきます👍
CRTやCSTよりもさらに後方にあるイメージですね!
ちなみに、CSTと同様にこのレベルでは、顔👄の皮質領域が見られてきますね👀
半卵円中心レベルはマスターしましたか?
次は放線冠レベルです🏃♀️
放線冠レベル
このレベルは、他の神経線維を探す際にもよく見るスライスになりますので、STTもイメージできるようになっていきましょう✨
まずは、大まかにSTTの走行を見ていきましょう👀
上図のような走行をしていきます🏃♂️
ポイントとしては、側脳室(体部)の真ん中の線よりも後側を走行する(CSTのさらに後方を走行する)イメージです!
ただ、視床からS1に向かう線維(視床頭頂路)は上視床放線という線維束の一部になっているので、厳密に同定するのは難しいかと思います、、、🥹
あくまでも「この辺りを通るだろうな〜」と思ってもらえると嬉しいです☺️
では、次は内包後脚の解説にいってみましょう🏃♀️
内包レベル
このレベルはよく養成校の授業や参考書で解説される部分ではないでしょうか🤔?
そして、このレベルよりも尾側になるとSTTがCSTとは異なる走行をしていきます🔍
このレベルでは、STTは視床または内包後脚を走行しています🏃♂️
もっと詳細を見てみると〜👁️✨
こんな風になります😆
オレンジに染めた部分がSTTの通過位置になります👍
このレベルでは、視床VPLまたは上視床放線(視床頭頂路)を走行していることが推測されます🏃♂️
ちなみに、ASTTは視床ILやCMへも投射するので、オレンジに染めた視床よりもさらに内側の損傷でも感覚障害が見られる可能性がありますね🤔
ちなみにこの右図は僕のメンバーが参考書を参考にして描いてくれたんですが、めちゃくちゃクオリティが高くて感謝感激雨嵐です😭✨
内包後脚についてマスターできましたか😉?
次からは脳幹へ移っていきますよ🏃♀️
中脳レベル
脳幹の初めは中脳レベルになります!
ちなみに脳幹レベルになると構造が複雑かつ、小さくなりますので、MRIだけでの同定はめちゃくちゃ至難の業です、、、😱
なので、このレベル以降は、大雑把にしか説明をしていません(というかできません)のでご了承ください🙇♂️
脳幹の構造を詳しく知りたい方は、⬇️のnoteをご覧ください。
今回は触れていないスライスまで解説しています✨
YouTubeでも解説しています⬇️
脳幹レベルからはCSTとの違いが顕著ですので、大まかでもいいのでイメージしていきましょう👍
STTは中脳被蓋(背部)の外側を走行し、内側毛帯のすぐ背側を走行します🏃♂️(上図:右)
※CSTは大脳脚を走行していましたね
中脳レベルもマスターしましたか?🕵️
次は橋レベルにいきますね🏃♀️
橋レベル
橋の構造として、橋底部(腹側)は橋核や横走線維が主であり比較的シンプルなのですが、橋被蓋(背側)は様々な上・下行性神経線維や脳神経などがあり複雑な構造となっています🤔
STTは、橋底部と橋被蓋の境界の目印となる内側毛帯のすぐ外側を走行しています🏃♂️
より詳細な解剖学的な位置を知りたい方は、僕のnoteを見てくださいね👀
※CSTは橋底部を走行します
いよいよ次で最後になりますよ!!!
延髄レベル
上図ではどこをSTTが通るでしょうか?🕵️
では、さっそく解説に移りますね☝️
上図を見ても分かるように、脳幹の中でも延髄はさらに複雑です、、、
(今回の画像は延髄の中でも上部になりますが、下部だとさらに小さくて複雑です😱)
延髄では網様体と並行するように延髄外側を走行していきます🏃♂️
先にも解説しましたが、STTは脊髄レベルですでに交叉をしているので、延髄での病変があった場合でも、感覚障害は病巣と対側に出現します🕵️
(一部交叉しない線維もあるので、絶対対側に症状が出現するとは言えませんが、、、)
※CSTは延髄錐体(腹側)を走行します
まとめ
はい、ここまでお疲れ様でした!!!
いかがだったでしょうか😆?
「STTもこれで読影ができるぞ!」と思っていただけたら、めちゃくちゃ嬉しいです✨
今回の内容はCSTよりも曖昧な部分があり、参考書の解剖学的な位置をメインにまとめました!
本来はDTTで解析した画像を載せたかったのですが、、、
今後、新たな情報が手に入り次第、この記事をアップデートしていきます🫡
(別の記事になるかもですが)
CSTと同様に一つ一つのレベルを丁寧に見ていき「どのレベルでSTTが損傷されているのか?」「STTの損傷の程度は?」「臨床所見の感覚障害との相違はないか?」といった具合に症状を推測できると、患者さんへの評価や介入が変わっていくと思います☺️
ぜひ今回の知識を明日からの臨床にお役立ください🙇♂️
現在鋭意制作中の後索-内側毛帯路の記事と合わせて読んで頂けたら感覚についての理解が深まると思います⬇️
完成次第リンクを貼ります🙇♂️
また、CSTの走行との比較もオススメですので、CSTの記事もご覧ください⬇️
では、また🦍🔥
参考文献
メイン論文⬇️
Jang, S. H., Seo, J. P., & Lee, S. J. (2019). Diffusion tensor tractography studies of central post-stroke pain due to the spinothalamic tract injury: A mini-review. Frontiers in Neurology, 10, Article 787.
Tan, S., Faull, R. L. M., & Curtis, M. A. (2023). The tracts, cytoarchitecture, and neurochemistry of the spinal cord. The Anatomical Record, 306(4), 777-819.
Seo, J. P., & Jang, S. H. (2014). Injury of the spinothalamic tract in a patient with mild traumatic brain injury: Diffusion tensor tractography study. Journal of Rehabilitation Medicine, 46(4), 374-377.
Muret, D., Root, V., Kieliba, P., Clode, D., & Makin, T. R. (2022). Beyond body maps: Information content of specific body parts is distributed across the somatosensory homunculus. Cell Reports, 38(11), 110523.
石川朗,大畑光司(編):15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 神経障害理学療法学Ⅰ・Ⅱ 第2版.中山書店.2020.
岩村吉晃:神経心理学コレクション タッチ.医学書.2001.
森岡周,阿部浩明(編):標準理学療法学 専門分野 神経理学療法学 第3版.医学書院.2022.
Eric .R.Kandel(編):カンデル神経科学 第2版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2022.
水野昇(監訳),他:臨床神経科学とリハビリテーション.西村書店,2020.
高橋昭喜(編):脳MRI 1.正常解剖.秀潤社,2005.
真柳佳昭(訳):脳の機能解剖と画像診断|第2版|.医学書院.2018.
岡本浩一郎(編):正常・偏位・異常との被殻で読影に役立つ!脳神経画像解剖ナビゲーション.Gakken.2022.
Duane E .Haines,佐藤ニ美(訳):ハインズ神経解剖学アトラス 第5版.2020.
渡辺雅彦:脳神経ぺディア.洋土社.2017.
水野昇,野村嶬:イラストレインテッドカラーテキスト 神経解剖学 原著第5版.三輪書店.2017.
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