マガジンのカバー画像

オリジナル小説

7
さごしが執筆したオリジナル小説です。
運営しているクリエイター

#同じタイトルで書かれた小説が読みたいコンテスト

ゼンマイ仕掛けの星空に

ゼンマイ仕掛けの星空に

 私はシェルターから逃げ出した。連日降り続いている雨で、生活に必要な最低限の物しかない殺風景な空間に押し込められているのが心底嫌になったからだ。「こんなときに外に出るなんて正気か!? 身体が曲がっちまうぞ!」そんな怒号と静止を振り払って、私は走った。
 シェルターの外に出ても当然行く当てなどなく、ただ呆然と歩いた。雨に当たった肌がピリピリと痛む。雨とは言うものの、これは本質的には雨ではない。土の天

もっとみる

カフェ・オ・レが冷める前に

 視界の端にコーヒーメーカーが映った。熱いブラックコーヒーが喉を通る感覚を思い浮かべる。一仕事終えた体には最適だろう。しかしながら、首から下の汗が酷く鬱陶しい。「とりあえず着替えを済ませてからにしよう」そう思い作業服を脱ぎ払っていると、カツリカツリと特徴的な音が聞こえた。耳を澄まさずとも分かった。カジウラの足音だ。

「おつかれさん。仕事には慣れたか?」
「あっ、ヒムラさん。お疲れ様です。まあ、そ

もっとみる