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しみいる

心ざわつく夜。
なんてことないような不安や焦りがふつふつと湧き上がってくる、そんな夜。
不安や焦りなど湧かしたくないなと思いながら、私はそそくさとお湯を沸かした。
先日お土産で貰った紅茶を淹れることにしたのだ。

ふつふつと湧く思いや考えというのは大抵、文字通り、お湯を沸かした時に湧き上がる湯気のようにモクモクと大きくなっていく。
初めは0.3ミリのシャープペンシルで描いた点くらいだったものが、気がついたら油性の極太ペンで描いた点くらいになっている…そんな具合に
勝手にどんどん大きく膨らんで色濃く目立っていく。
それが気がかりになる。
何故だかわからないが、夜中に湧き上がる思いや考えは日中に湧き上がるそれに比べてマイナスなものが多いような気がする。
なんでかな、夜は暗いからかな?とかそんなことを思いながら私はポトポトと紅茶を淹れた。

Earl Gray Fleurs Bleues(アールグレイ フルール ブルー)。その やさしい甘さをほのかに感じるやわらかな香りが、沸き立つ湯気に溶け込んでふわっと膨らんだ。
透明のガラスでできた茶漉し付きティーカップで淹れる紅茶は茶葉からお茶が抽出されていく様子がよく見えていい。
湯気となって湧き上がり空気の中へ溶けていく紅茶の"香り"の部分と、茶葉から搾取された紅茶の"味"の部分とを交互に見て これか。 と思った。
マイナスな考えが膨らんだ時の対処もこうありたいものだ、と。

考えは茶葉。お湯は自分の感情。
膨らんでいく想いは湯気のように軽やかに解き放つ。
考えから搾取された大切な部分は美味しくいただく。

こうすることでマイナスをプラスに変換できるのではないか。そう思えたらなんだか急に心穏やかになった。

な〜んだ、マイナスの中からこうやってプラスに繋がる要素を抽出すればいいのか。その抽出したものだけ飲み込めばいいのか。

な〜んだ、
よかったよかった。

ちょうど心穏やかになったところで
ちょうど紅茶もいい濃さになった。
よかったよかった。

できたての味を身体に染み渡らせながら観ていた『大豆田とわ子と三人の元夫』は、これまた よかった。(好きすぎてもう何度も観ているドラマである)
坂元裕二さんが紡いだ言葉たちが心に沁みる。

最高だなぁ このかんじ。
好きだなぁ このかんじ。

坂元さんの作品はなんたって言葉のチョイスが絶妙で、ドラマで使われている音楽もそれぞれなんとも言えない心地よさがあって。スッと心に入り込んでくるメッセージがふわっと心を包んでくれる感じがする。あの紅茶を淹れた時に湧き上がった湯気のような、あたたかいふわっとしたものに心が包まれる瞬間が何度もおとずれる。
この温かさは、この温もりは、あれだ。あれに似ている。人間の体温に似ている。決して熱苦しくはないちょうどいい温度。そうだ、さっき飲んだ紅茶の温度にも似ている。
身体に入れやすい、飲みやすい温度。

その温度が、心を優しくほぐしていく。

私は、
この感覚を味わうためにきっと繰り返し観てしまう。(『この恋を思い出してきっと泣いてしまう』風)のだろう。

なんだか今夜は紅茶との相乗効果で自分の中にいいエッセンスがバンバン沁み入る感じがするぞ。(なんじゃそりゃ)
とにかく今夜観た『大豆田とわ子と…』は一段と心に沁みた。


心ざわつく夜が、紅茶とドラマのおかげで心安らぐ夜となったのだ。
あら めでたい。あら あったかい。
すっかり肌寒くなってきたこの秋の夜に、
ホッと温まって眠りにつく幸せたるや。

心や身体に沁み入る温かいものは、探せばもっと色々、思いがけないようなところにも、在るのかもしれない。 
探してみよう。

ポカポカしよう。

この記事を下書きとして一晩あたためて、ポカポカして寝たら、ポカポカした朝が来た。

おはよう。いい眠りだったなぁ。

手段はどうであれ
やはり夜はできるだけ、心身ともにあったかくして寝たいものだ。



❤︎最後まで読んでくださりありがとうございます。



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