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夏生さえり
2019年5月5日 01:16
父の誕生日プレゼントに買ったシャツは、かなり可愛い。かなり可愛いから、選んだあとで心配になった。一見水玉柄に見えるがよく見れば「魚柄」になっているという遊び心が散りばめられたシャツだったが、「わたしの父」と「遊び心」というのは、少なくともブラジルと日本くらいかけ離れている。やはり無難なチェックにすべきだったのではと逡巡するわたしをよそに、手際よくラッピングされたシャツは大きな袋に入れられて「ありが
2019年5月1日 02:11
遅めの朝食は、母が焼いたホットケーキだった。だらだらと起き上がって食卓につくと、やさしいきつね色に焼きあがったホットケーキに、四隅のとろけたバターがまさに染み込んでいるところで、その特別さも相まって平成最後の日はそわそわと始まった。蜂蜜を何度も往復させながらたっぷりかけて、すでについていたテレビに耳を傾けると、彼らは「平成」を振り返っているところだった。いや、彼らどころじゃない。呆れるほど全ての番