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詩 『亡者たちの自称』

作:悠冴紀

人の自称はあてにならない

大して何もできない人間ほど
自分は誰よりもできる人間だと
大言壮語を吐き散らす

大して何もわかっていない人間ほど
言われなくてもわかっていると
人様を黙らせ意固地いこじになる

近視眼的な井の中のかわず
陳腐なプライドばかり養って
己を映す鏡を持たない永遠の幼児だ

何者をも真には愛せない人間ほど
声高に博愛主義を謳いあげ
世界を癒す聖母や神を演じようとする

何事も恨みがましく他人のせいにする人間ほど
すべては身から出た錆で
他人を責めてはいけないと人前では説く

自身の内側に源泉を見出せない者たちの
不安と空虚をごまかす自己暗示

あるいは世の中を欺き
他者を操るための言葉巧みな口上か

サイコパスも愛用する常套じょうとう手段だ

自分は誰よりもきちんとしている、
几帳面で綺麗好きだとアピールしながら
誰よりも抜け目だらけで杜撰ずさんな者

自分には覚悟がある、
向き合える人間だと前置きしながら
事実を突き付けられると逆上する者

自信満々の認識錯誤に振り回されて
疲れ果てるのは いつも
周囲の心ある正気の人々の方だ

主体性なき人間の口走る
「あなたが一番、何より大事」は
しばらく会わないだけで気移りし

ナルシシスティックな人間が口走る
「俺は一途で、お前だけ」は
端から釣竿の先の無作為な餌

紙よりも薄っぺらな口先だけの人々
至るところに横行する嘘デタラメ

受け止める価値もない自称の嵐だ

かくして私は
話半分にしか聞かなくなった

自分をわかっている人間は
もっと肩の力が抜けている

妙に語気の強い自己アピールは
これ見よがしに演出された質量なき虚構
なりたい自分像を語っているだけだ

自称にアイデンティティーを依存する
不安定な人々によるじつのない言葉の渦

意識的であれ 無意識的であれ
彼らの中には空洞しかない

もはや聞き届けたくもない
うごめく亡者たちの倒錯した声

似たり寄ったりな自称があまりに多く
騙されたふりにも飽きてしまった

パフォーマンスなど要らないから
二度と私を呼ばないでくれ

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※2022年9月の作品

注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、私の作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『亡者たちの自称(悠冴紀作)』より」と明記するか、リンクを貼るなどして、著作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります!!

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