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詩 『SPHINX ~ 一年の終わりと始まりに』

作:悠冴紀

過ぎ行く一年の終わりに
私はまた 君を振り返っていた

巡り来る一年の始まりに
私はまた 君を思っていた

今では行方も分からない君のために
私はこの先
どれだけの涙を流し続けるのだろう

一年の終わりに 私はまた
君にしてあげられなかったことを思い
謝っていた

一年の始まりに 私はまた
君がいなくてはできなかったことを思い
君の大きさを実感していた

君を失ったことで
私はなんと人間臭くなったのだろう

君と離れて以来
私はなんと感傷的になったのだろう

本当に泣いているのは
ひょっとして君だろうか・・・・・・?

私がさようならを言ったあの日から
君の目 君の感性 君の脆さ
君の苦悩 君の願望が

私の中に流れ込み
乗り移ってしまったかのよう

永遠に終わることのない無数の自問を私に課して
君は私の前から姿を消した

永遠に焼き付いて消えなくなるやり方で
君は残像だけを残して
私を殺した

なんて残酷な臆病さなんだ

私が「さようなら」と言ったのは
背中を向け続ける君に
本当に私を失えるのか試したかったからなのに

なんて卑怯な人なんだ

「さようなら」とさえ答えないことで
君は私の中の君を永遠にした

君に課せられた無数の自問が
私を毎日切り裂いていく

君に対する無数の矛盾が
私を毎日バラバラにする

今もだ
ずっとだ
これからも
君が毎日 私を殺す

見送る一年の終わりごとに
迎える一年の始まりごとに
私はまた 君を振り返り
思い続けるのだろう

涙の海に溺れ
この息が止まる日まで

**********

※2008年1月1日作(当時31歳)。

日付けでわかるように、2007年の大晦日から2008年の元旦にかけて、私は何故だかものすごーく感傷的な気分に浸っていて、年明け早々にこんな詩を書き殴っていました A^_^;)

作中の『君』は、以前UPした天狼~ハティ」「幽霊」「氷の道標」「君に贈るものといった詩の『君』と同じ人物(幼馴染の親友S)を指しています。なので、これもやはり失恋の詩とは違いますよ。(←この手の詩を書く度、必ずそういう誤解をされるんですが・・・(ーー;))

作中に書いている通り、例の親友の喪失については、私にとって毎年振り返らずにはいられない事柄だったのですが、この時はいつにも増して暗~い思いで振り返っていた憶えがあります💦 そして、そのおかげでまた一つ詩ができた(~_~;) 悲嘆や憤りなどのマイナスの感情の方が、どんなプラスの感情よりも多くの創作に繋がるとは、皮肉なものです、ハイ。

 ── 重要なのは、まさにその点です。

こういう作品を見ると、「なんでわざわざそんな暗い記憶に立ち返って、あえて自分から暗~い気分に浸ろうとするの?」と疑問に思う人がいるでしょうけど、たぶん私は、なんだかんだ言いながら、こういうネガティブな感情自体、大事にしていたいのだと思います。

何度振り返っても決して美化することのできない出来事だったはずなのに、その痛みや悲しみさえもが、今や私には必要不可欠な養分であり、執筆の糧。

きっとこの手の痛みを忘れるときこそ、私という書き手がついに完全に終わるときなのだと思います。行動意欲をとことん喪失して抜け殻になり、人心を動かすような執筆作品など、一切書けなくなってしまうでしょう。いわば生ける屍ですね (;一_一)

ところで、タイトルの『SPHINX』というのは、かの有名な神話上の幻獣スフィンクスのことです。私の小説翡翠の神話(ミュートス)でも少し触れていますが、伝わる国ごと、神話の種類ごとに色んな逸話があって、それぞれ微妙に性質が異なります。中でも私には、ギリシャ神話版のスフィンクスの、謎かけをして答えられなかった者を取って喰らうという話が特に印象的だったので、今回のタイトルにしてみました。答えようのない無数の自問に内側から切り刻まれていく感じが、ちょうど重なって見えたもので A^_^;

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『SPHINX 〜 一年の終わりと始まりに』悠冴紀作より」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。

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