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詩 『子供の創作』 (※20代半ば頃の作品)

作:悠冴紀

子供の頃
『子供』でいると笑われるので
私はずいぶん背伸びをしていた

子供の頃
自我不在の人形でいると
良い子だと褒められるので
私はひどく自分の個性を恐れていた

青年の頃
気を抜く度に揚げ足を取られるので
私は終始張り詰めて暮らすようになった

青年の頃
本当のことを指摘する度に罰せられるので
私は装いと沈黙で身を護るようになった

やがて
『子供』の悲鳴は忘却の彼方

物事を必要と不必要とに分類し
乾いた合理主義を説き始めた私
口々に『大人』と呼ばれるようになったので
誇らしげに世界を切り分けていった

次から次へと余分なものを削ぎ落とし
無限の可能性に限界を定めて現実主義とし
感情さえもばっさり切り捨てて
辿り着いた先に見たものは……

最狭の視界
遊びも刺激も美しさもない秩序
ギブ・アンド・テイクの人付き合い
歩き方マニュアルを備えた無機的な一本道

これが世に言う『大人』なら
私はあえて『子供』でいよう
ずいぶん回り道をしてきたけれど
今改めて『子供』になろう

そしてまた詩を書こう

終焉しゅうえんの『無』から
プラスとマイナスの『有』を再現

細切れにされた世界の断片から
大きく賑やかな全体像を復元

私は再び創り始める
たまらなく面白い役立たずの余りものを
あちらこちらから掻き集め
『子供』でなくては生み出すことのできない
凸凹でこぼことした作品を

私は改めて 創作家になった

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※2003年(当時26歳)の作品

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