見出し画像

長時間労働とワークライフバランス

労働基準関係法制研究会(厚生労働省の有識者会議)において、首藤若菜教授は「健康の観点のみならずワークライフバランスをどう支えていくのか、社会的な観点から長時間労働について考えていく必要がある」と意見を述べています。


労働基準関係法制研究会とは

労働基準関係法制研究会の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討」とされています。

つまり、今後の労働法制の労働者定義などといった基本的な概念見直しの論争点の整理し、また労働時間制度など労働基準法改正などを検討する研究会とされています。

労働基準関係法制研究会メンバー構成

労働基準関係法制研究会のメンバー(構成員)は、荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授(座長)、安藤至大・日本大学経済学部教授、石﨑由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、神吉知郁子・東京大学大学院法学政治学研究科教授、黒田玲子・東京大学環境安全本部准教授、島田裕子・京都大学大学院法学研究科教授、首藤若菜・立教大学経済学部教授、水島郁子、大阪大学理事(兼)副学長、水町勇一郎・東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授(2024年度をもって退職)、山川隆一・明治大学法学部教授 (五十音順)とされています。

労働基準関係法制研究会メンバー(構成員)全員が大学の教授や准教授や理事をされている方になります。メンバー10名のうち6名が女性で、バランスのよい構成になっています。

その中で首藤若菜・立教大教授は「長時間労働を是正し、健康の観点のみならずワークライフバランスをどう支えていくのか、社会的な観点から長時間労働について考えていく必要がある」と第1回研究会で意見を述べています。

長時間労働とワークライフバランス(首藤若菜教授)

首藤若菜・立教大教授は、長時間労働問題を社員・職員の健康の観点のみからだけではなく、社員・職員のワークライフバランスといった社会的な観点からも長時間労働について考えていく必要あるという発言されています。

〇首藤構成員
(略)日本社会の今後を考えたときに、少子化の問題とか人口減少の問題がありますので、ケア労働を誰が担うのかということはすごく重要な論点だと思っていまして、長時間労働とケア労働の問題というのは私も関心があります。単純に、もちろん健康を守るために長時間労働是正しないといけないということもありますけれども、同時に、ワークライフバランス、どうやって支えていくのかということを考えていく、これがやはり社会的な課題の観点から長時間労働を考える上ではすごく重要かなと思っています。(略)

厚生労働省「労働基準関係法制研究会」第1回議事録

このような意見をされる有識者は、厚生労働省の労働政策審議会や労働基準局の検討会や研究会ではおられなかったのではないでしょうか。首藤若菜教授の意見は新鮮に聞こえましたし、大切な考え方ことだと思います。

厚生労働省の労働政策審議会や労働基準局の検討会や研究会の有識者は(ほぼ)労働法学者になりますが、首藤若菜教授は(朝日新聞デジタルによると)労働経済学者で、専門は労使関係論、女性労働論になるそうです。

首藤若菜コメンテーター(朝日新聞デジタル)

また、首藤若菜教授は、参議院予算委員会の新年度予算案に関する公聴会において「日本の問題は、過去20年以上にわたって、労働生産性の上昇に賃金上昇が追いついていないことだ。内需を拡大するには、幅広い人々の所得の向上が不可欠だが、労働者の発言力や交渉力は低くなっている。中小企業の賃金を順調に上げていくには、労使関係の再構築が必要だと考えている」と述べています。

参院予算委 公聴会 賃上げや格差問題について専門家が意見(NHK NEWS WEB)

今後も首藤若菜教授には労働基準関係法制研究会などの場で、労働法制の見直しや労働基準法改正などに関する的確で率直な意見を述べていただきと願っています。

追記:第5回資料「これまでの論点とご意見」

労働基準関係法制研究会の第5回資料「これまでの論点とご意見」には(メンバーの誰の意見かは明確にされていませんが)メンバー(構成員)の一人が「労働時間の絶対上限については、導入時には労使が合意した実現可能な時間とせざるをえなかったが、引き下げるときにも同様なのか。 現在の上限規制の時間は労働条件としても低すぎて、スタンダードな働き方では家庭生活と両立できず、そういう観点から見直しが必要」(5頁)、また「労働時間規制について、ワーク・ライフ・バランスの観点から8時間、40時間が基本という見解については、経済学者としては疑問。 キャリアや人的資本の形成も重要であり、健康確保の部分は絶対に守るとした上で、ワーク・ライフ・バランスはよく考えるといった 切り分けが必要」(8頁)と発言されたことが記載されています。

<関連記事>

*ここまで読んでいただき感謝いたします!