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つながらない権利と裁量労働制など労働時間制度見直し

第15回 これからの労働時間制度に関する検討会

昨日(2022年7月1日)、厚生労働省の有識者会議(裁量労働制 など労働時間制度見直しに関する検討会、正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第15回検討会(議題は労働時間制度について)が開催され、配布資料が厚生労働省サイトで公開された。

その資料1「これまでの議論の整理 骨子」(案)には「いわゆる『つながらない権利』を参考にして検討することが考えられるのではないか」と記載されている。

「つながらない権利」を参考にして検討することが考えられるということだが、不明瞭な表現だが、今後、裁量労働制など労働時間制度の見直しが議論されるであろう労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)に裁量労働制など労働時間制度の健康確保措置として「つながらない権利」についての議論をゆだねるという意味ではないだろうか、と推測される。

これまでの議論の整理 骨子(案)
〈労働時間制度に関するこれまでの経緯と経済社会の変化〉
1 労働時間制度に関するこれまでの経緯
〇 労働時間法制は、これまでも、時代の状況に合わせて累次の改正。
○ 裁量労働制については、平成 25 年度労働時間等総合実態調査の有意性・信頼性に係る問題が発生。働き方改革関連法の国会審議を踏まえ、実態を再調査した上で検討することとされた。統計調査が改めて実施され、令和3年6月に同調査結果の公表。
○ 同調査結果の労働政策審議会への報告を経て、裁量労働制を含めた労働時間法制の在り方を検討することを目的として、本検討会が開催。

2 経済社会の変化
○ 少子高齢化や産業構造の変化が進む中で、近年ではデジタル化の更なる加速や、新型(略)ウイルス感染症の影響による生活・行動様式の変容が、労働者の意識や働き方、企業が求める人材像にも影響。
○ (略)禍でのテレワークの経験等により、労働者の意識も変化。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を求めるニーズが強まっていく。
○ デジタル化の進展に対応できるような、創造的思考等の能力を有する人材が一層求められていく。企業は、企業の求める能力を持った多様な人材が活躍できるような魅力ある人事労務制度を整備していく必要。
○ 本検討会では、労働時間制度に関するこれまでの経緯や経済社会の変化を踏まえ、裁量労働制とともに、労働時間制度の在り方全般について検討。

〈これからの労働時間制度に関する基本的な考え方〉
○ 労働時間法制は、労働者の健康確保のための最長労働時間規制から出発したが、労働から解放された時間の確保のための休憩や休日の規制、そして法定時間外労働や休日労働に経済的負荷を課して抑制するとともに、負担の重い労働に対する金銭的補償を行う割増賃金規制などが一般化した。
○ 労働者の多様化、企業を取り巻く状勢変化に伴って、働き方に対するニーズも多様化し、労働時間規制に対する社会的要請や担うべき政策目的も多様化。現在の労働時間法制が、新たに生じている労使のニーズや社会的要請に適切に対応し得ているのかは、労働者の健康確保という原初的使命を念頭に置きながら、常に検証を行っていく必要があるのではないか。
○ 労使のニーズに沿った働き方は、これまでに整備されてきた様々な制度の趣旨を正しく理解した上で制度を選択し、運用することで相当程度実現可能なのではないか。まずは各種労働時間制度の趣旨の理解を労使に浸透させる必要があるのではないか。
○ 他方、様々な変化が進む中で、働き方に対する労使のニーズもより一層多様化。労働時間法制がそのような変化に対応できていない場合には、必要な見直しが行われていくべきではないか。
○ これらを踏まえ、これからの労働時間制度は、次の視点に立って考えることを基本としていくことが求められるのではないか。
○ 第一に、どのような労働時間制度を採用するにしても、労働者の健康確保が確実に行われることを土台としていくことが必要ではないか。
○ 第二に、労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにすべきではないか。その際、可能な限り分かりやすい制度にしていくことが求められるのではないか。
○ 第三に、どのような労働時間制度を採用するかについては、労使当事者が、現場のニーズを踏まえ十分に協議した上で、その企業や職場、職務内容にふさわしいものを選択、運用できるようにするべきではないか。

〈各労働時間制度の現状と課題〉
○ 働き方改革関連法により設けられた時間外・休日労働の上限規制等については、施行後5年経過時に検討することとされており、施行の状況や労働時間の動向等を十分に把握し、その効果を見極めた上で検討すべきではないか。
○ フレックスタイム制は、コアタイムのないフレックスタイム制を導入する企業もみられるなど、今後も制度の普及が期待されるのではないか。
○ 事業場外みなし労働時間制を適用してテレワークを行う場合には、一定の要件を満たす必要があり、情報通信技術の進展等も踏まえ、この制度の対象とすべき状況等について改めて検討が必要ではないか。
○ どのような者が管理監督者に該当するか各企業でより適切に判断できるようにする観点等からの検討が必要ではないか。
○ 働き方改革関連法により、年5日の確実な取得義務(使用者の時季指定義務)が設けられており、更なる取得率向上のため、より一層の取組が求められるのではないか。
○ 時間単位年休の取得については、年5日を超えて時間単位年休を取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことが必要ではないか。
○ 勤務間インターバル制度については、時間外・休日労働の上限規制と併せ、その施行の状況等を十分に把握した上で検討を進めていくことが求められ、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進していくことが必要ではないか。
○ いわゆる「つながらない権利」を参考にして検討することが考えられるのではないか。

〈裁量労働制について〉
○ 裁量労働制が、制度の趣旨に沿った適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリットのある働き方が実現できる一方で、制度の趣旨に沿っていない運用は濫用・悪用といえる不適切なものであり、これを防止する必要があるのではないか。
○ 裁量労働制の見直しに当たっては、以下を軸として検討すべきではないか。
・労働者が理解・納得した上での制度の適用及び裁量の確保
・労働者の健康及び処遇の確保
・労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保

(対象業務)
○ 対象業務の範囲については、労働者が自律的・主体的に働けるようにする選択肢を広げる観点からその拡大を求める声や、長時間労働による健康への懸念等から拡大を行わないよう求める声がある。裁量労働制の趣旨に沿った制度の活用が進むようにする観点から、対象業務についても検討すべきではないか。
○ 対象業務の範囲については経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて見直される必要があるのではないか。

(本人同意・同意の撤回・適用解除)
○ 裁量労働制の下で労働者が自らの知識・技術を活かし、創造的な能力を発揮するために、労働者が制度等について十分理解し、納得した上で制度が適用されるようにしていく必要があるのではないか。
○ 裁量労働制の下で働くことが適切でないと労働者本人が判断した場合には、制度の適用から外れることができるようにする必要があるのではないか。
○ 裁量労働制の適用を継続することは適当ではないと認められる場合の対応を検討すべきではないか。

(対象労働者の要件)
○ 企画型での対象労働者を「対象業務を適切に遂行するために必要となる具体的な知識、経験等を有する労働者」とする要件の履行確保をより図るべきではないか。
○ 裁量労働制にふさわしい処遇が確保されるようにする必要があるのではないか。

(業務量のコントロール等を通じた裁量の確保)
○ 裁量が事実上失われるような働かせ方とならないようにする必要があるのではないか。
○ 始業及び終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねることを徹底すべきではないか。

(健康・福祉確保措置)
○ 労働時間の状況の把握について、制度間の整合性をとるべきではないか。
○ 健康・福祉確保措置について、裁量労働制の対象労働者の健康確保を徹底するための対応を検討すべきではないか。

(みなし労働時間の設定と処遇の確保)
○ みなし労働時間は、対象業務の内容と、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準となるよう設定する必要があること等を徹底する必要があるのではないか。
○ 例えば所定労働時間をみなし労働時間とする場合の、裁量労働制にふさわしい相応の処遇を確保し、制度濫用を防止するために求められる対応を明確にすべきではないか。

(労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上)
○ 労使協定又は労使委員会決議に際し、賃金・評価制度の運用実態等も参考にしながら、労使が協議を行うことを促進すべきではないか。
○ みなし労働時間の設定や処遇の確保について制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられる場合の対応を明確にすべきではないか。
○ 専門型の制度運用の適正化を図るため、労使委員会の活用を促すべきではないか。
○ 制度運用上の課題が生じた場合に、適時に労使委員会を通じた解決が図られるようにすることを検討する必要があるのではないか。

(苦情処理措置)
○ 苦情処理措置の認知度や苦情申出の実績が低調である実態を踏まえて対応する必要があるのではないか。

(行政の関与・記録の保存等)
○ 定期報告について、企画型が制度として定着してきたことを踏まえるとともに、健康・福祉確保措置の実効性確保の観点から対応する必要があるのではないか。
○ 企画型の労使委員会決議・専門型の労使協定について届出を簡素化する必要があるのではないか。

〈今後の課題等〉
○ 働き方改革関連法施行5年後の検討規定に基づく検討や、将来を見据えた検討に当たっての課題を整理する必要があるのではないか。

これまでの議論の整理 骨子(案)(PDFファイル)

これからの労働時間制度に関する検討会 第15回資料(厚生労働省サイト)

「つながらない権利」と裁量労働制の見直し

厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)は2021年3月25日に公表されたが、その翌年(2022年)3月29日に開催された厚生労働省の有識者会議・裁量労働制などの見直し関する検討会(正式名称:これからの労働時間制度に関する検討会)で、「労働者の健康確保に係るヒアリング」が実施された。

そのヒアリング準備資料「オフの量と質から考える働く人々の疲労回復」(独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター・久保智英上席研究員)24頁には「裁量が高くても不規則な働き方は睡眠の質と疲労回復を阻害する」「労働時間への裁量度が高くても、不規則に働くことは睡眠の質の低下と疲労回復を遅延させる」と記載。

また、つながらない権利についても記述があり、37頁の「まとめ」では「『勤務間インターバル制度』や『つながらない権利』は新しい時代における働く人々の疲労回復機会の確保には有効だと思われる」と提言。

オフの量と質から考える働く人々の疲労回復(PDFファイル)

これからの労働時間制度に関する検討会 第11回資料(厚生労働省サイト)

しかし、ヒアリングにおいて「『勤務間インターバル制度』や『つながらない権利』といった、新しい時代の過重労働対策」「これは非常に効果的なルールだとは思いますが、これまでの歴史を振り返っても、実情を踏まえないルールだけでは、恐らく風化して、絵に描いた餅になってしまうので、やはり現場の特性、組織の特徴を踏まえて、日本型の制度につくり上げていく工夫が必要だろう」とも指摘している。

そして、久保氏は「オンとオフが、メリハリが曖昧になってきている」「恐らく、将来、さらに曖昧になっていくと予見されます」「そういった意味では、疲労回復に重要なオフに、物理的に仕事から離れるだけでなくて、心理的にも疲労回復のために離れるといったような組織的な取組、個人的な対応というのが今後重要になってくる」と訴えている。

今回お話ししたかった、お伝えしたかったポイントとしては4点です。オンラインとオフのメリハリが、情報通信機器の発達やリモートの普及によってますます曖昧になってきた中では、Work time controlといった、疲れたとき、休みたいときに休ませる、休めるといった裁量を与えられるような組織的・個人的な取組というのは重要だと思いますが、しかし、裁量があるからといって、今日は朝早く来て、明日は夕方ぐらいに来るといった余りにも不規則な働き方になると、逆に、睡眠の質を低下させて疲労回復を阻害するということが考えられます。

そして、「勤務間インターバル制度」や「つながらない権利」といった、新しい時代の過重労働対策をご紹介しました。これは非常に効果的なルールだとは思いますが、これまでの歴史を振り返っても、実情を踏まえないルールだけでは、恐らく風化して、絵に描いた餅になってしまうので、やはり現場の特性、組織の特徴を踏まえて、日本型の制度につくり上げていく工夫が必要だろうと思います。

そういった意味でも、自主対応型の、最後に御紹介した「疲労リスク管理システム」というのは非常に有用な考え方で、自分たちの働き方を定期的に測って、その疲労がどういうところに生じて、どういう改善をすればいいのかということを結びつける枠組みというものは、職場環境改善にとって有用だと思います。

現行ございますストレス・チェック制度も、1年に1回ストレスをチェックしているわけで、そういった制度の発展系、あるいは別の制度としてもいいのかもしれませんが、やはり労働時間の長さとともに、それに対する疲労度、ストレス度を抑えるといった何かしらの取組というのは、疲労が目に見えにくくなっている今では非常に重要なことになってくるのではないかと思います。

そして最後に、一番こちらをお伝えしたいのですが、やはりオンとオフが、メリハリが曖昧になってきている。アイフォンが2008年に発売されてから、どんどん曖昧になってきています。この流れというのはさかのぼることは決してないと思います。恐らく、将来、さらに曖昧になっていくと予見されますので、そういった意味では、疲労回復に重要なオフに、物理的に仕事から離れるだけでなくて、心理的にも疲労回復のために離れるといったような組織的な取組、個人的な対応というのが今後重要になってくるかと思います。(第11回「これからの労働時間制度に関する検討会」議事録・議事概要より抜粋)

第11回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録・議事概要(厚生労働省サイト)

追記:第14回 検討会議事録、第16回 検討会案内

第16回「これからの労働時間制度に関する検討会」(2022年7月15日開催、議題「労働時間制度について」)開催案内、第13回検討会(5月18日開催)および第14回検討会(5月31日開催)議事録が、参議院選挙が終わるのを待っていたのか、本日(2022年7月13日)、厚生労働省サイトで公開された。

なお、第14回「これからの労働時間制度に関する検討会」議事録には「つながらない権利」に関する発言について記載されているが、黒田構成員は「テレワークをしている人か否かにかかわらず、つながらない権利というものを広く普及させていくような仕掛けが今後は重要になってくると思っております」と。

○川田構成員
<略>資料1-2の1ページ目、(1)の健康確保の項目の最後に、つながらない権利というのが出てきますが、これは必ずしも健康確保のための概念にとどまるものではなく、より幅広い意味を持つのではないかと思います。
そういう観点からすると、3つの柱というのは重要なポイントだと思いますが、具体的な中身を盛り込んでいく際に、直接そのものに深く関わるような内容と、関連性がある内容に分けて整理して、その柱そのものよりは広がりのあるような事柄も中にはあるのだということも示せるまとめ方などを、今後、議論をまとめるときには考えるといいのかなと思っております。

○労働条件政策課長補佐
<略>13ページ目です。
こちらは、これまでも、この検討会で何度か御指摘いただいております、つながらない権利についてです。
14ページ目を御覧ください。
いわゆるつながらない権利について、フランスでの内容をまとめたものです。
概要の欄ですけれども、いわゆるつながらない権利とは、勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利のことで、アクセス遮断権とも言われるものです。
フランスにおきましては、2016年に成立した労働法改革の中で、この※①②とあるところですけれども、従来から企業と労働組合との年次交渉義務事項とされていた、男女の職業的平等及び労働生活の質という交渉題目について、労働者が休息時間及び休暇、個人的生活及び家庭生活の尊重を確保するために、労働者がつながらない権利を完全に行使する方法及びデジタルツールの使用規制を企業が実施する方法を交渉テーマに追加することとし、また、つながらない権利についての企業レベルの協定を欠く場合には、使用者は、従業員代表と使用者との協議機関等の意見聴取をした上で、つながらない権利の行使の方法を定め、労働者及び管理職及び幹部職員に対し、デジタルツールの合理的な使用について教育し、関心を喚起する行動の実施を規定する憲章を作成しなければならないとしたものです。
なお、集団協定または憲章に基づいてテレワークを実施する場合には、集団協定または憲章に、使用者が労働者に通常接触できる時間帯を記載しなければならないこととされています。
この背景が次の枠ですけれども、ICTが急速に発展し、どこにいても携帯端末によって業務に接続することが可能になったこと、使用者に対する労働者の安全及び健康の保護義務、特にメンタルヘルス及びハラスメントに関する使用者の責任の問題が顕在化したこと、業務時間外や休暇中も業務にアクセスされてしまう、あるいはできてしまうといった私生活への業務の浸食が生じたことが考えられるものです。
なお、フランスでは、夜の時間に全社的につながらない状態を作ることが難しい場合もあること、労働者が自ら率先してつながっている場合もあること、実現のためにはそれをルール化するだけで足りるわけではなく、教育研修やフォローアップも必要とされること等が課題として指摘されています。
15ページ目です。
先ほど御説明したテレワークガイドラインにおきましても、長時間労働等を防ぐ手法として、ここに下線部がありますけれども、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、業務上の必要性、指示や報告が行われた場合の労働者の対応の要否等について、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられるとされています。

○黒田構成員
<略>3点目は、つながらない権利についても事務局にまとめていただきました。
このつながらない権利については、インターバル規制と非常に親和性があるものと私自身は整理していまして、これまでも何度か提案をさせていただいてきました。
もちろん、テレワークのガイドラインには、一部記載が入っているのですけれども、テレワークをしたり、しなかったり、あるいはテレワークをしていない人がテレワークをしている人に、夜中にメールをするとか、そういった多様な働き方の間でのやりとりということもありますので、テレワークをしている人か否かにかかわらず、つながらない権利というものを広く普及させていくような仕掛けが今後は重要になってくると思っております。

追記:これからの労働時間制度に関する検討会 報告書

厚生労働省は(2022年)7月15日、第16回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催し、「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書案を議論し、その日に厚生労働省は「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書(本文、概要、参考資料)を公表。

公表された「これからの労働時間制度に関する検討会 報告書」の概要には、裁量労働制の対象業務について「現行制度の下での対象業務の明確化等による対応」「対象業務の範囲は経済社会や労使のニーズの変化等も踏まえて必要に応じて検討」と記載され、本文には「対象業務の範囲については、前述したような経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することが適当」と書かれている。

また、「これからの労働時間制度に関する検討会 報告書」の概要には「勤務間インターバル制度について、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進。また、いわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていく」と記載され、本文には勤務間インターバル制度については「当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進していくことが必要である」とあり、そして「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」と書かれている。

追記:つながらない権利を無視した労政審報告

つながらない権利を無視した労働政策審議会労働条件分科会報告
厚生労働省は昨年(2022年)7月15日、厚生労働省の有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」がとりまとめた「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」を公表。この報告書に基づいて厚生労働大臣諮問機関・労働政策審議会労働条件分科会が裁量労働制の対象業務追加(拡大)などに関する議論を始めたが、その議論の結果、労働政策審議会労働条件分科会がとりまとめた労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を厚生労働省が昨年(2022年)12月27日に公表。

「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書本文12頁に記載されていた「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」という個所があったが、労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」には「つながらない権利」を参考にして検討を深められたような形跡はまったく見受けられなかった。

<関連記事>

追記:つながらない権利と労働基準関係法制研究会

「労働基準関係法制研究会」は「新しい時代の働き方に関する研究会」につづいて開設された厚生労総省(労働基準局)有識者会議になります。

労働基準関係法制研究会の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討」とされています。

議題は毎回「労働基準関係法制」とありますが、2024年1月23日に開催された第1回研究会ではメンバー(構成員)全員が意見を述べ、2月21日に介された第2回研究会では「労働時間制度について」議論されました。

また、2月28日に開催されたされた第3回研究会では「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」、3月18日に開催された第4回研究会は「労使コミュニケーションについて」議論された。

第5研究会は3月26日に開催され、これまで議論された「労働時間制度について」「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」「労使コミュニケーションについて」の論点を整理しながら、さらに掘り下げて議論を一巡。

次回(第6回研究会)は、第5回研究会でのメンバー(構成員)意見を踏まえて再整理し、次々回(第7回研究会)からは労使ヒアリングを実施予定。

なお、第5回資料3「これまでの論点とご意見」には「諸外国におけるつながらない権利については、義務化するのではなく、労使で話し合いをするという制度設計がなされている。労契法上でデフォルトルールを定める方法もあり、労働基準法と労働契約法の接続の問題で議論されるべき」と記載されていました。

資料「これまでの論点とご意見」(PDF)

*ここまで読んでいただき感謝!