第15回 これからの労働時間制度に関する検討会
昨日(2022年7月1日)、厚生労働省の有識者会議(裁量労働制 など労働時間制度見直しに関する検討会、正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)第15回検討会(議題は労働時間制度について)が開催され、配布資料が厚生労働省サイトで公開された。
その資料1「これまでの議論の整理 骨子」(案)には「いわゆる『つながらない権利』を参考にして検討することが考えられるのではないか」と記載されている。
「つながらない権利」を参考にして検討することが考えられるということだが、不明瞭な表現だが、今後、裁量労働制など労働時間制度の見直しが議論されるであろう労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)に裁量労働制など労働時間制度の健康確保措置として「つながらない権利」についての議論をゆだねるという意味ではないだろうか、と推測される。
これまでの議論の整理 骨子(案)(PDFファイル)
これからの労働時間制度に関する検討会 第15回資料(厚生労働省サイト)
「つながらない権利」と裁量労働制の見直し
厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)は2021年3月25日に公表されたが、その翌年(2022年)3月29日に開催された厚生労働省の有識者会議・裁量労働制などの見直し関する検討会(正式名称:これからの労働時間制度に関する検討会)で、「労働者の健康確保に係るヒアリング」が実施された。
そのヒアリング準備資料「オフの量と質から考える働く人々の疲労回復」(独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター・久保智英上席研究員)24頁には「裁量が高くても不規則な働き方は睡眠の質と疲労回復を阻害する」「労働時間への裁量度が高くても、不規則に働くことは睡眠の質の低下と疲労回復を遅延させる」と記載。
また、つながらない権利についても記述があり、37頁の「まとめ」では「『勤務間インターバル制度』や『つながらない権利』は新しい時代における働く人々の疲労回復機会の確保には有効だと思われる」と提言。
オフの量と質から考える働く人々の疲労回復(PDFファイル)
これからの労働時間制度に関する検討会 第11回資料(厚生労働省サイト)
しかし、ヒアリングにおいて「『勤務間インターバル制度』や『つながらない権利』といった、新しい時代の過重労働対策」「これは非常に効果的なルールだとは思いますが、これまでの歴史を振り返っても、実情を踏まえないルールだけでは、恐らく風化して、絵に描いた餅になってしまうので、やはり現場の特性、組織の特徴を踏まえて、日本型の制度につくり上げていく工夫が必要だろう」とも指摘している。
そして、久保氏は「オンとオフが、メリハリが曖昧になってきている」「恐らく、将来、さらに曖昧になっていくと予見されます」「そういった意味では、疲労回復に重要なオフに、物理的に仕事から離れるだけでなくて、心理的にも疲労回復のために離れるといったような組織的な取組、個人的な対応というのが今後重要になってくる」と訴えている。
第11回これからの労働時間制度に関する検討会 議事録・議事概要(厚生労働省サイト)
追記:第14回 検討会議事録、第16回 検討会案内
第16回「これからの労働時間制度に関する検討会」(2022年7月15日開催、議題「労働時間制度について」)開催案内、第13回検討会(5月18日開催)および第14回検討会(5月31日開催)議事録が、参議院選挙が終わるのを待っていたのか、本日(2022年7月13日)、厚生労働省サイトで公開された。
なお、第14回「これからの労働時間制度に関する検討会」議事録には「つながらない権利」に関する発言について記載されているが、黒田構成員は「テレワークをしている人か否かにかかわらず、つながらない権利というものを広く普及させていくような仕掛けが今後は重要になってくると思っております」と。
追記:これからの労働時間制度に関する検討会 報告書
厚生労働省は(2022年)7月15日、第16回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催し、「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書案を議論し、その日に厚生労働省は「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書(本文、概要、参考資料)を公表。
公表された「これからの労働時間制度に関する検討会 報告書」の概要には、裁量労働制の対象業務について「現行制度の下での対象業務の明確化等による対応」「対象業務の範囲は経済社会や労使のニーズの変化等も踏まえて必要に応じて検討」と記載され、本文には「対象業務の範囲については、前述したような経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することが適当」と書かれている。
また、「これからの労働時間制度に関する検討会 報告書」の概要には「勤務間インターバル制度について、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進。また、いわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていく」と記載され、本文には勤務間インターバル制度については「当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進していくことが必要である」とあり、そして「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」と書かれている。
追記:つながらない権利を無視した労政審報告
つながらない権利を無視した労働政策審議会労働条件分科会報告
厚生労働省は昨年(2022年)7月15日、厚生労働省の有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」がとりまとめた「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」を公表。この報告書に基づいて厚生労働大臣諮問機関・労働政策審議会労働条件分科会が裁量労働制の対象業務追加(拡大)などに関する議論を始めたが、その議論の結果、労働政策審議会労働条件分科会がとりまとめた労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を厚生労働省が昨年(2022年)12月27日に公表。
「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書本文12頁に記載されていた「海外で導入されているいわゆる『つながらない権利』を参考にして検討を深めていくことが考えられる」という個所があったが、労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」には「つながらない権利」を参考にして検討を深められたような形跡はまったく見受けられなかった。
<関連記事>
追記:つながらない権利と労働基準関係法制研究会
「労働基準関係法制研究会」は「新しい時代の働き方に関する研究会」につづいて開設された厚生労総省(労働基準局)有識者会議になります。
労働基準関係法制研究会の検討事項は「『新しい時代の働き方に関する研究会』報告書を踏まえた、今後の労働基準関係法制の法的論点の整理」と「働き方改革関連法の施行状況を踏まえた、労働基準法等の検討」とされています。
議題は毎回「労働基準関係法制」とありますが、2024年1月23日に開催された第1回研究会ではメンバー(構成員)全員が意見を述べ、2月21日に介された第2回研究会では「労働時間制度について」議論されました。
また、2月28日に開催されたされた第3回研究会では「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」、3月18日に開催された第4回研究会は「労使コミュニケーションについて」議論された。
第5研究会は3月26日に開催され、これまで議論された「労働時間制度について」「労働基準法における『事業』及び『労働者』について」「労使コミュニケーションについて」の論点を整理しながら、さらに掘り下げて議論を一巡。
次回(第6回研究会)は、第5回研究会でのメンバー(構成員)意見を踏まえて再整理し、次々回(第7回研究会)からは労使ヒアリングを実施予定。
なお、第5回資料3「これまでの論点とご意見」には「諸外国におけるつながらない権利については、義務化するのではなく、労使で話し合いをするという制度設計がなされている。労契法上でデフォルトルールを定める方法もあり、労働基準法と労働契約法の接続の問題で議論されるべき」と記載されていました。
資料「これまでの論点とご意見」(PDF)
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