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Re:COLO-LAB「土壌と想像/創造」



福島県双葉郡の富岡町と大熊町をフィールドに〈 Re:COLO-LAB「土壌と想像/創造」〉 を開催します。

開催地である大熊町には福島第一原子力発電所(以下、第一原発)が立地し、富岡町には福島第二原子力発電所が立地している。
2011年の東日本大震災と第一原発の事故による被災地であること、そうした人類史的な出来事を契機として、土地の形質と人的営みの相互性による成り立ちと時間性、生物、事物、放射性物質をはじめとした一見では捉えられない存在者、それら非-人間の混淆する生態環境と、それらに条件づけられた地域の歴史や文化を新たな視点で発見、見つめ直すための言葉や想像力が必要であると考えている。私はこれまでもこうした環境と文化の関係性をいかに結び直し、そこに新たな価値を見出すことができるかを問いやテーマにして、まだまだ細やかで微力ではあるものの、その探求と創造の実践的活動を行ってきたと思っている。文化は持続性である。震災から13年の月日がたった今も地域の課題は山積し、日々馴染みの風景は激しい変化に晒され、多くのものが失われ続けている。しかしこの年月を経てやっと文化的視点にたった議論ができるのではないかとも考えている。

今回、芸術家の滞在制作事業の一環で「土壌」をテーマに、福島県双葉郡の富岡町と大熊町で、地域のプレイヤー、研究者や滞在アーティストをゲストに迎え、フィールドワークやレクチャー、ワークショップを行います。
震災後、わたしたちの足元に長い時間をかけて蓄積されてきた土壌は原発事故の影響を受け、除染のために削り取られてしまった。
「土壌の生成には数百年から数百万年かかる」(藤井一至「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」2015、p.16、ヤマケイ新書)という。除染土壌である表土5cmには、避難者約16万4千人のかつて過ごした時間だけでなく、ここに生き、または生成された様々な存在者たちの長い時間が圧縮されている。土壌に含まれている多くのものも、そして人々の記憶や愛着のある家財一式も、特定廃棄物として焼却されまとめられる。それらが集められた中間貯蔵施設を眺める時、減容化し圧縮された物質や時間までもがいつかきっと一時代の地層を形成し、原発事故の記憶を宿し続けるものになるのではないかと、半ば願わずにはいられなかった。1,600㎥の土壌が一つのエリアに集積されている中間貯蔵施設には、処理された物質の堆積として一面に広がり、その様はプロセスを含めた異質な風景となっている。一方、除染が行われた場所は黄色い山砂によって客土された。
土が誕生して5億年。あらゆる生物-非生物の混淆と代謝循環の中で土は生まれ、さらに混和され柔らかな土壌を生み出す。土壌には地球規模の、そしてマクロ/ミクロレベルの様々なドラマの記憶と痕跡が読み取れる。それは私たちの生活や文化を条件づける文字通りの土壌でもある。

今回、「土壌」をテーマに企画を行います。この地における環境と文化の相互関係の"土壌"を回復し新たに耕すことに繋がるのではないかと私たちは考えています。
本イベントを通して、あらゆる専門性のバックグラウンドを持つ方々や地域の参加者とが共にこの地を深く観察し、応答し合うことによって、この地の基底に触れる体験になるような機会としたいと思います。

秋元菜々美


イベント詳細

【日程】2024年2月16日〜17日

■2月16日(金)
受付 10:30-11:00
会場:大熊インキュベーションセンター

11:00-11:30  
ブリーフィング
「土壌と想像/創造」
秋元菜々美


昼食 11:40-12:30  
会場:大熊インキュベーションセンター

プログラム① 13:00-16:00  
フィールドワーク
「汐凪の気配を辿り考える誰も犠牲にしない防災と社会」

ゲスト:木村紀夫(一般社団法人大熊未来塾代表理事)
会場:大熊町帰還困難区域中間貯蔵施設内
定員:9名
(※プログラム①に参加される方は、写真付き身分証明書を必ずご持参ください。
写真付き身分証明書をお忘れになると帰還困難区域内に立ち入ることができませんのでご注意ください。)

プログラム②-1 16:30-18:00 
レクチャー
「福島で考える土のこれまでとこれから」

ゲスト:藤井一至(土の研究者・森林総合研究所主任研究員)
会場:大熊インキュベーションセンター

■2月17日(土)
受付・出発準備 9:00-9:20
集合:JR常磐線 夜ノ森駅

プログラム②-2 9:30-12:00  
ワークショップ
「福島で考える土のこれまでとこれから」
ゲスト:藤井一至(土の研究者・森林総合研究所主任研究員)

会場:Re:COLO-LAB-リコーロラボ-
定員:15名

昼食 12:30-13:30
会場:大熊町内

プログラム③ 13:30-15:30  
ワークショップ
「暮らしで選択する廃棄と涵養」
ゲスト:井関耕平(百姓)

会場:大熊町内
定員:15名

プログラム④ 16:00-17:30 
アーティストレクチャー&ディスカッション
会場:ふたばいんふぉ

1. レクチャー
「残滓(ずり)の肌理に触れる-ツアーパフォーマンスと物質的想像力-」
滞在アーティスト:humunus / 小山薫子・キヨスヨネスク

2. レクチャー
「地域の居場所を耕す仮設建築」
滞在アーティスト:藤本梨沙・清水康平(Y-GSA)

3. 質疑応答・ディスカッション

17:30-18:00
リフレクション・総括


■参加費(食事代を除く) 
通し券:2500円
1プログラム:1500円
※プログラム①については参加費無料ですが、カンパにご協力お願いいたします。
※当日受付にて現金でお払いください。
※プログラムへの参加について
定員を大幅に超える応募があった場合は、登録締切または全プログラムに参加する方を優先してご案内する場合がございます。

■申し込みフォームはこちら

【ゲスト】
木村紀夫(一般社団法人大熊未来塾代表理事)
藤井一至(森林総合研究所主任研究員)
井関耕平(百姓)
humunus / 小山薫子・キヨスヨネスク
藤本梨沙、清水康平(Y-GSA)
(敬称略・プログラム順に記載)
【運営協力】一般社団法人 双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs)
【当日スタッフ】宇佐見采花
【主催】秋元菜々美
この事業は令和5年度地域経済政策推進事業費補助金(芸術家の中長期滞在制作支援事業)の支援を受けています。

アクセス

大熊インキュベーションセンター
住所:〒979-1308  福島県双葉郡大熊町下野上清水230
電車でお越しの方:JR常磐線「大野」駅下車。徒歩20分
駅から大熊町生活循環バス「大熊インキュベーションセンター」バス停下車
車でお越しの方:常磐自動車道「大熊」インターチェンジから車で約5分

Re:COLO-LAB-リコーロラボ-
住所:〒979-1161 福島県双葉郡富岡町夜の森北1-83
電車でお越しの方:JR常磐線「夜ノ森」駅下車。徒歩5分
車でお越しの方:常磐自動車道「富岡」インターチェンジから車で約6分

ふたばいんふぉ
住所:〒979-1111 福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央295 ふたばタイムズ1F 電車でお越しの方:JR常磐線「富岡」駅下車。徒歩12分
車でお越しの方:常磐自動車道「富岡」インターチェンジから車で約15分




【ゲスト】

フィールドワーク
「汐凪の気配を辿り考える誰も犠牲にしない防災と社会」 
ゲスト:木村紀夫(一般社団法人大熊未来塾代表理事)

2月16日(金) 13時00分〜16時00分

大熊町の帰還困難区域であり中間貯蔵施設内、原子力災害という人類史的な出来事、そこに生きた住民である木村さんと共に、次女・汐凪さんをはじめ、ご家族、地域住民の気配を辿りながら「誰も犠牲にしない防災と社会」について考えます。
また、フィールドワークの最後には、次女の汐凪さんの遺骨の捜索現場で実際に土に触れる経験をし、その土の中に含まれる微細な物質に目をむけ、汐凪さんへ思いを寄せる「行動としての慰霊」を行います。

木村紀夫(きむら のりお)
一般社団法人大熊未来塾代表理事。
1965年、福島県大熊町の熊川地区に生まれ、東日本大震災まで両親、妻、2人の娘と共に暮らす。
震災時の津波により父と妻、次女汐凪(ゆうな)を犠牲にする。更に自宅の北4キロほどのところにあった原子力発電所の事故により、捜索が阻まれ、特に汐凪の遺骨発見まで5年9か月を要した。未だ遺骨の8割は見つかっておらず、捜索は継続中。その傍ら、自分の経験から次の災害で命が失われないこと、誰も犠牲にしない社会の構築について考える語り部活動を続けている。

facebook https://www.facebook.com/okuma.future/


レクチャー&ワークショップ
「福島で考える土のこれまでとこれから」 
ゲスト:藤井一至(土の研究者・森林総合研究所主任研究員)

2月16日(金)16時30分〜18時00分
レクチャー
2月17日(土)  9時30分〜12時00分
ワークショップ

土の研究者 藤井一至氏をゲストに迎え、今回は「福島で考える土のこれまでとこれから」について16日に特別レクチャーをしていただきます。また翌17日には、レクチャーを踏まえ、地域の参加者と共にこの土地を深く観察するために、実際に夜の森地区にあるRe:COLO-LABでのワークショップを行います。

藤井一至(ふじい かずみち)
土の研究者。森林総合研究所主任研究員。1981年富山県生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。博士(農学)。京都大学研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。インドネシアの熱帯雨林からカナダ極北の永久凍土までスコップ片手に飛び回り、土の成り立ちや持続的な利用方法を研究している。第一回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)、第三十三回日本土壌肥料学会奨励賞、第十五回日本農学進歩賞受賞、第三十九回とやま賞、第二十七回日本生態学会宮地賞。著書に『大地の五億年 土とせめぎあう生きものたち』(山と渓谷社)、『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土を求めて』(光文社、第七回河合隼雄学芸賞受賞)など。


ワークショップ
「暮らしで選択する廃棄と涵養」 
ゲスト:井関耕平(百姓)

2月17日(土)13時30分〜15時30分

大熊町に2022年に移住された百姓の井関さんをゲストに迎え、炭焼きワークショップを行います。
稲と豆の栽培、古民家の改修工事など生産から廃棄/活用まで自己完結可能な暮らしを模索する場から「暮らしで選択する廃棄と涵養」についての思考と実践について伺い、実際に環境に還元していく一つの手段として炭を作るワークショップを開催します。

井関耕平(いせき こうへい)
2022年に福島県大熊町にパートナーと共に移住。現在「百姓」という生き方を探求中。『地球に生まれた人間という動物として己の生存に己で責任を持つこと』『お金、組織、社会インフラに依存せず豊かに生きること』をテーマに、田畑や日々の暮らしを通じて地球環境と子々孫々の生命を涵養する術を日々研究しています。


レクチャー
「残滓(ずり)の肌理に触れる-ツアーパフォーマンスと物質的想像力-」 
滞在アーティスト:humunus / 小山薫子・キヨスヨネスク

2月17日(土)16時00分〜16時30分

2020年より富岡町を中心に滞在制作を行なってきたhumunusによるレクチャーを行います。
2021年より上演を続けてきたツアープロジェクト「うつほの襞」のシリーズとして、現在新たなツアーパフォーマンスを制作しています。
富岡町の上手岡地区では、大地の生成過程、鉱産業、祖霊信仰など、人間と非人間が混淆し作り出したドラマが一つのライン上に浮かびあがってきました。そこには様々に生成された残滓/肌理=テクスチャが広がっています。そうしたフィールドワークや創作で得た知見に加え、ツアーパフォーマンスという演劇的表現形式の意義や物質的想像力がいかに土地の経験や読み方を変えうるかをレクチャーします。

humunus(ふむぬす)
2018年10月 小山薫子、キヨスヨネスクの俳優2人による演劇ユニットとして結成。
ランドスケープを「人と土地と物質、それぞれが映しあう空間」として位置づけ、人間と非人間、場所との関係性の中にドラマを見出し作品化する。その上で、ランドスケープを条件づけている種々の要素をいかに声-身体を通してうつしとることができるか、その方法化と実践を行う。
屋内外問わず、固有の場所や空間を行き来し創作・上演を行う。
2020年より福島県双葉郡富岡町の「POTALA-亜窟」を拠点に、フィールドワークと創作を行いながら、東京との2拠点で活動している。
主な作品に、ツアー演劇「うつほの襞」(2021-2023)、上演+展示企画「〈砌と船〉-うつつ、揺蕩い」(2022)、映像作品「荒川平井住宅」(2021)など。

X:https://twitter.com/humunus1


レクチャー
「地域の居場所を耕す仮設建築」 
滞在アーティスト:藤本梨沙+清水康平(Y-GSA)

2月17日(土)16時40分〜17時10分

2023年11月から仮設建築「記憶と未来が交錯する」の滞在制作を行っている藤本梨沙と清水康平によるレクチャーを行います。
藤本の研究テーマ「誰もが諦めない人生を支える建築」及び清水の研究テーマ「分解と手入れ」について紹介し、富岡町夜の森地区で制作した仮設建築「記憶と未来が交錯する」の制作プロセス、設計意図、仮設建築で訪れた方々の振る舞いについて建築的に分析し、3月の公開に向けてどのようにパワーアップするかをレクチャーします。

藤本梨沙(ふじもと りさ)
テーマ:みんなの諦めない人生を支える建築
諦めない人生を支える、ゆるやかで大きな協同体を生む建築空間を探究しながら、大学内にみんなの居場所を作る活動や、作った場を活用するためのイベントの企画運営などを実践しています。

清水康平(しみず こうへい)
テーマ : 分解と手入れ
趣味である自転車の手入れなどを背景に、木々の剪定をする木こりのように建築や都市を良好な状態を保つ手助けをすることを日本建築の透明性の研究とともに考えている。

両名所属:横浜国立大学都市イノベーション学府 Y-GSA

藤本梨沙+清水康平 共同設計プロジェクト
三協アルミ学生建築デザインコンペ 優秀賞
https://alumi.st-grp.co.jp/kenchiku/2023result/aw_b1.html

<間>project instagramm


【運営協力】
一般社団法人 双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs)

原子力災害からの再生という世界的にも類が少ない福島沿岸地域において、多様な産業や営みの振興に貢献することを目標に2019年11月設立のローカルソーシャルベンチャー。観光産業が培ってきたノウハウやDMO的なアプローチを用いた人々の交流や関係人口創出を通じて、地域の認知度向上やマーケティング及びブランディング等の成果を創出し、当地域が100年先の未来においても持続することを目標に、観光産業発展に向けたモデルづくりやビジネス実践を展開。
また、F-ATRAsは組織自体が実験的な関係人口母胎となっており、10名ほどいるメンバーは、仙台・浪江・双葉・富岡・楢葉・いわき・埼玉・千葉・神奈川・東京から組織参画するフルリモート体制。地域の実情に合わせ、あらゆるステータスの方が柔軟に関われるようフレキシブルな体制で事業運営していることも特徴。

代表理事 山根辰洋(やまね たつひろ)
東京都⼋王⼦市出⾝の双葉町⺠。東⽇本⼤震災をきっかけに復興⽀援をキャリアにし、2013年福島県双葉町に委嘱職員として参画。3年間の復興支援員時代に数百の町民と交流。地域の魅力を感じるとともに地域再生は100年仕事と痛感。2016年に双葉町⺠と結婚。山根姓(双葉町民)となったことを契機に、支援者から地域を創る当事者として、生業(人生)を通じた地域再生を目指し独立。
2019年、観光産業、交流・関係人口創出を通じた地域再生を目指すソーシャルベンチャー、⼀般社団法⼈双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs)を設⽴。
2023年3月に双葉町帰還(移住)。3姉妹の父。その他、一社サンクスフラワープロジェクト理事、一社双葉郡未来会議理事、一社大熊未来塾理事、双葉町議会議員も務める。

【主催者】秋元菜々美

秋元菜々美(あきもと ななみ)
地域コーディネーター・プロジェクトマネージャー
領域:文化/芸術・教育・観光

福島県富岡町夜の森出身。元富岡町役場職員。高校時代に演劇と出会ったことを契機に、環境によって変化する人間の知覚や心の揺れを捉えた活動を始める。学生やアーティストを対象とした富岡町のツアーガイド、教育・創作における双葉郡地域でのコーディネートのほか、演劇に関わること、随筆も行う。2020年よりアーティストインレジデンスの拠点としてhumunusととも“POTALA-亜窟”を整備・運営をしている。

X:https://twitter.com/monam_221

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