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【小説】恋の幻想

「初めまして。」兄と初めて会った時に挨拶を交わした、その時には母親と兄弟が一気に出来るのだと期待していた。

「可愛い子なんだね、これからよろしく。」兄は私を舐めるように見た、何だか嫌な感じだった。

「よろしくお願いいたします。」何だか声が小さくなる、まだまだ子供の私はそれが何を差しているのかは解っていなかった。

思春期に差し掛かると、兄を意識するようになった、兄妹と言っても元々が他人なのだ、見つめてくる目が男のそれで父親とは違っていた。

嫌だと言っても部屋を変えるのは無理、部屋を変えるだけでなく、自分の気持ちを表すのが全て無理だった。

親が決めたのをなぞってゆく事しか自分には許されていなかった、父も母親も私を気に掛ける時間が無かった。

兄が少しづつ近づいてきて、部屋に入ってくる様になって、初めて母親に相談した。

「あの、お母さん、お兄ちゃんが部屋に入って来るんだけど、止めて欲しくって。」嫌味にならない様に、仲良くできる様に、考えて話に行ったのだ。

「あんたね、あの部屋が自分の部屋だと思っているの、行く所が無いから、あの部屋に置いてやっているのに、まだ文句を言うの、雅之は優しさで入ってやっているのに。」と叱られた。

この母親と云う名の女は、私を置いてやっている孤児程度にしか考えていない、父は上手くやっていると思っているのか、無関心で話は出来ない。

「お前さー、母さんに部屋に入ってきて嫌だって言ったんだって、俺は可愛がってやろうと思っていたのに。」部屋に入って来ると兄が言った。

「私、勉強したりするから、集中できなくて。」言い訳が口からこぼれてくる。

「俺が勉強教えてやるよ。」そう言って兄は私をベットに押し倒して、覆い被さってくる。

「嫌だ。」泣きそうな声が出て、私は小さくて非力なんだな、そう思って我慢していると、当然の如く服を剥ぎ取られた。

「子供の割にはいい体なんだな。」兄と云う名の獣は、保健室の標本を見る時間を堪能している様だ。

「止めて。」と言っても止まる様子はない、嫌がっているのを楽しんでさえいる。

私は心が身体から離れて、上から自分とその獣との行為を見ているしかなかった。

私には何も選択肢が残されていない、少なくともその時期にはそう思っていた。

獣との交わりはそれから少なくても月に数回、多い時期は週に何回かだった、私の心はそれを部屋の上の方からぼんやりと眺める、幽体離脱ってこんな感じなのかも知れない、そう考えながら。

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