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卵焼きだ

子供の頃、うちの卵焼きが好きだった。

我が家の周りは出汁の効いた卵焼きが多かったみたいだが、我が家は父親が砂糖の入った甘い卵焼きが好きで、それを作っていた。

父親が作ることが多かったのだが、母も父に習って、甘い卵焼きを作っていた。

「砂糖入れると焦げるから嫌なんよ。」そんな風にちょっとした文句も忍ばせながら。

中学校の時だった、家出を試みた時がある、よく考えるとあれは家出じゃ無かったな、未遂だと思う。

家出未遂と親は思っているけど、自分的には自殺を考えてたんだよね、家出以上自殺未満って感じかな。

人に依ってはお前は贅沢だって感想が出るだろう、ちゃんと食べさせてもらっていたし、塾にも行っていて、豊かとはいえないけど、普通に良い暮らしだったと思う。

その頃の自分って今よりよく考えていたんだよね、自分史上一番考えていたと思う、自分史上一番頭良かったかも。(高校と短大の先生方すみません)

だから、生きるとか死ぬとか考えちゃったんだよね。

友達の所に行くって、嘘ついてうろついていたんだよね、近くの山の中とかをね。

普通なら暗くなると怖いって思うんだろうけど、その日の私ゼーンゼン怖くない、何せ死ぬつもりだったからね。

どうしよう、山の上からダイブするか、学校戻って屋上から落ちるか、ウーン違うななんて考えていた。

そんな時って何だか他人事で、どれが良いのかなーくらい、しか考えられないんだよ。

考えていて、ふと思ったんだよね、友達にサヨナラって言っていないな。

そこで友達の家の近くまで行って、『さよなら』を言ってから、どうするか決めようと、突拍子もなくね。

そこで偶々探すために家から出てきた(若しかしたら自分がチャイム鳴らした?)友達と鉢合わせた。

直ぐに親に通報されたんだよね、有無を言わさずにね、後で受験の時期に迷惑だって言われて、私の片思いって感じだったんだなって思ったんだけど。

家に帰ったら、親が怒る前に叔母ちゃんが滾々と話をしてくれたんだよね、凄い心配していたとか。

でもね、私はいつも弟は可愛いけど、同性は可愛くないって母親には言われていたから、チョット疑ってたんだ。

想像通りに母は大分怒っていて、叱られてからのご飯だ、気まずいけどやはりお腹は空いている。

これが生きているってこのなんだな、そう考えていつもの食卓の上に有るものを見た。

卵焼きだ。

そこには私が好きな卵焼きがあった、甘くてちょっとしょっぱい、我が家の味の卵焼きだった。

それから、卵焼きはちょっとしょっぱい。


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