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【小説】SNSの悪夢

マンションは毎日大勢の人を内包して、吐き出して居る、立花はその人たちを全員写真に撮っていった。

最初は面倒だと思っていたその作業は段々と面白い物に成っている、仕事を始める時に最初は嫌な部分しか見えないが、ある程度すると慣れてきて面白くなるそんな感じだ。

今の自分の仕事と言えるのは、ここで投稿者を見つける事だ、他に無いのかと言われたら悲しいが、実際のところ他に何もない。

自分お好きな仕事をして、自分の理想の家に住んで、自分の理想の妻を娶る、それを少しづつ叶えてきた。

夢は叶えたと思った時に逃げると、誰かが言っていた気がする、本当だったのかも知れないな。

ずっと目標を持って生きてきた、その目標は都度変わる、それでも全て自分の為だった筈だ。

今の様に自分の復讐と云う、本来自分の為で無い時間を持つのは生まれて初めてかも知れない。

役柄で復讐をする役をしたりしたが、その頃は後ろ向きな人物像に共感は無かった。

自分がそれだけ前向きだったのか、人間に対する洞察が足りなかったのか、今となっては如何でも良い事だ。

今は後ろ向きと言われようが、SNSでの復讐を成功させるだけだ、その為に時間も金も費やす、終わったら次は探偵って仕事も良いかも知れない。

考えながら立花はひたすら写真を撮った、それで戦争が終わるかの様に、それで全てが上手くいくと言う様に。



「行ってきます。」の声が忙しさを誘うって、若い時には考えられなかった。

仕事は嫌いじゃない、それでも忙しいのは否めない、たまにはゆっくりしたーい、そう思っていても、休みになると買い物や保存食づくりに精を出す。

「私はお母さんみたいな主婦にはなりたくないわ、せかせか働いても欲しいもんも買えないでしょ。」娘が言う。

誰の為にという言葉を飲み込む、自分が親にあなたの為に仕事をしているのよと言われて育ってきたから、子どもには言わないでいようと思っていた。

その分ストレスは溜まる、仕事もストレスマックスなのに、家で子供にさえ嫌な扱い、これでSNSが無かったら、逃げ出していただろう。

この時代で良かった、母の時代は自分のストレスを子供にぶつけるしか無かった。

だから私は母が嫌いになった、あなたの為にって言葉で繋がれた囚人だったのだ、私は。

今なら子供や夫に何を言われても、SNSで発信して、憂さを晴らす時間がある。

誰も自分を知らない場所で言いたい事を云う、それが楽しみでもあり、ストレス解消だ。

そう言えば、不倫で話題になったあの人は如何したんだろう、ふと考えていた。



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