【小説】恋の幻想
「まあ、居るとは思っていたから連れてきたんだけどね、独り身の男の所に女の子に入ってって言えないからね。」連れ込んだと思われたくなくて、言ってみるが、如何にも言い訳じみているな。
「ふうん、なんでこの子を連れてくるつもりになったの?」彼女は誤解とかはする人じゃないから、冷静に聞いてくれるのが有難い。
考えれば、もう別れているんだからどうでも良いのだが、若い女の子を家に連れ込むおじさんって考えられるのは我慢できない。
「濡れてるし泣いてたみたいだから、家で事情を聴いたらいいかなってさ。」何だか全部言わないのが当たり前になっていて、夫婦になるつもりだったんだな、今更思う。
「ほんと、濡れてるじゃない、家に入って温まって。」芯は優しい人間なんだよな。
「困ったな、濡れて服の代わりが無い。」俺のワードローブを当たり前に探っている。
「あの、大丈夫です、そんなに濡れてないんで。」女の子が居心地悪そうに呟く。
「駄目よ、着替えなきゃ風邪ひくよ、風邪は万病の元なんだから。」言いつつタオルで頭を拭いている。
「あのさ、君が残していった服、着てもらったらいいんじゃないか。」どうせ誰も着ないんだから良いだろうと提案してみる。
「エ~、駄目よ、お気に入りのワンピースなんだから、他にないの?」優しいと思ったのを訂正だ。
「じゃあ、俺のTシャツとジャージでも穿いていて、紐でくくればなんとかなるだろ。」と言ってみる。
「すみません、ご迷惑ですよね。」話の流れについていけてない女の子が恐縮してる。
「今更でしょ、そうだお風呂に入る、おっさんが見ない様に見張っててあげるから。」おっさんは余計だ。
「人の事おっさん扱いすんなよ。」
「この子にしたら、おっさんでしょ、お風呂入って温まっておいで、そのあと話を聞くから。」1人で話を進めている。
「ありがとうございます。」と言って女の子は風呂場に消えた、彼女が服を用意して持って行った。
「ちょっとコンビニ行ってくる。」急に言い出す。
「おい、見張るんじゃなかったのかよ。」と言い返す。
「だって下着が無いじゃない、コンビニ直ぐだから買ってくるよ、おいたしちゃ駄目だよ。」一言多い人間だ。
「じゃあ頼む。」自分が言ってくるとは言えないよな、女性下着買ってくるんだから。
優しいんだか、優しくないんだか分らないが、女の子には普通に接してくれるみたいだ。
俺は連れてきただけで、何をするでも無く、彼女が帰って来るのを待っていた。
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