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エンゲージメントが世界を救う?エンゲージメントについて数字と西岡視点で振り返ってみた


はじめに

Gallup社から世界規模で実施している職場に関する調査レポートが公開されています。その記事のリード文がなかなか衝撃的でした。

We estimate that low engagement costs the global economy $8.8 trillion. That’s 9% of global GDP
エンゲージしていない、または全くエンゲージしていない従業員がもたらすコストは世界で8.8兆ドルで、これは世界全体のGDP(国内総生産)の9%に相当する

Gallup State of the Global Workplace: 2023 Reportより

日本円に換算すると、1300兆円超。日本の2022年度予算の国の一般会計歳出は、過去最大の107.6兆円ということなので、エンゲージしていないだけで、年間で日本と同規模の国10カ国分超の運営資金が失われているということは、ただもったいないでは片付けられません。

ですが言い換えると、従業員一人一人がエンゲージメントを持って仕事に取り組むことができれば、GDPも上昇し、世界の国々を救うことにもつながる。何より、一人一人が夢中になってわくわくと仕事に取り組むことで心身ともに健全な状態に近づけることができる。やはり、エンゲージメントはただイキイキと取り組むといった効果だけではなさそうです。

というわけで今回は、レポートに掲載されている日本の結果と西岡視点でエンゲージメントについてまとめてみたいと思います。

日本のエンゲージメントは何とたったの5%

下のグラフは世界GDP Top10の国々のエンゲージメント結果です。

Gallup State of the Global Workplace: 2023 Reportより西岡が作成

10カ国中で最もエンゲージメントの高かったアメリカで34%です。言い換えると、アメリカでさえ66%の人がエンゲージしていない・全くにエンゲージしていないという結果でした(語句はグラフの解説を参照)。
そして日本に目をやると、エンゲージしている従業員はたったの5%、130を超える国と地域の中でワーストタイの数字で、世界平均値(23%)、そして東アジアの平均値(17%)よりもはるかに低い結果になっています。そんな中で世界第4位のGDPをどうやって生み出しているのでしょうか?
以下の労働生産性の国際比較からもわかるように、長時間労働でそれを補填しているのかもしれません。同時に、5%のエンゲージしている従業員の方にしわ寄せが行き、その結果燃え尽き症候群(バーンアウト)になってしまってはいないだろうか?と非常に心配になりました。
(というのも、私自身が会社員時代はまさにエンゲージしていたものの、たびたびバーンアウトしていた経験を持っているというのも大きいです)

いずれにしても、現状のGDPは「生み出されている」というよりも「しぼり出されている」状態、持続的ではありません。GDPだけが指標ではないですが、ワクワクと仕事に取り組む人を増やすことが日本にとって急務であることは明らかではないでしょうか。

なぜエンゲージメントが重要なのか?

他にも生産性を上げる方法はたくさんある中で、なぜエンゲージメントが重要なのでしょうか?ここでは、あるクライアントさんから頂いた言葉を使ってお話したいと思います。人間にあって、AIや他のものにないものは何でしょうか?それは「機嫌」です。

機嫌がいいと、サクサクと仕事をこなしていくことができるし、これまで思いつかなかったようなアイディアや解決策が生まれることもあるでしょう。一方で、少しでも機嫌が悪いと、いつも簡単にできていることでさえミスが出てしまったり、集中できず、思うように進めることができない。
このことからも、「機嫌がいいだけで、人はよいパフォーマンスを上げることができる」といえるのではないでしょうか。では、機嫌よく仕事ができている時はどんな時でしょうか。お互いの関係が良好である、自分のことが受け入れられている、期待されていることに対して、自分の得意を活かして取り組めるなどではないでしょうか。これこそが「エンゲージメントしている」状態なのです。

しばしば生産性を上げたり、士気を上げるために使われるアクションとして「報奨金」などがありますが、Gallupによるとこれは、従業員の動機を維持するためには得策ではないとしています。

Engagement cannot be created through financial incentives.
Employee pay is the "easy button" for attracting, retaining and motivating employees. But it doesn't create psychological ownership for one's work. Moreover, competitors can raise their wages at any time and steal those employees away.

Gallup Employee Engagement Strategies: Fixing the World's $8.8 Trillon Problemより

理由としては、報奨金は本人の仕事に対するオーナーシップを生み出すものにはならず、また競合他社がより高い賃金を提示することでその従業員を引き抜くことにもなりかねず、短期的ではあってもサステナブルな策とは言えません。
極論かもしれませんが、従業員一人一人が機嫌よく仕事に取り組むことさえできれば、自然とエンゲージした従業員が増え、結果として生産性を持続的に上げていくことができるということができると言えるでしょう。

どうすればエンゲージメントは上げられるのか?

エンゲージメントが持つ重要性は理解いただけたと思います。では、どうすればエンゲージメントを上げていくことができるのでしょうか?私は以下の3つが特に大きな要素になってくると考えています。

①自分のご機嫌の取り方を見つけておく

以前あるクライアントのトップの方が、「自分の機嫌は自分で取ることを意識している」とお話されていました。自分のご機嫌取りにメンバーが尽力することほど馬鹿馬鹿しいことはないし、上の機嫌一つでメンバーのパフォーマンスが変わってくるからとお話されていました。Gallupの調査結果でも、従業員エンゲージメントの70%がリーダーやマネージャーの関わり方によるというデータもあります。

自分で自分のご機嫌を取ることは誰にとっても大切なことだと感じています。イライラしたらチョコレートで糖分を補給してみる、疲れたら温泉でリラックスしてみるなどなにか「自分のご機嫌ルーティン」を見つけてみてはいかがでしょうか。

②「おはよう」「どう?」「ありがとう」「助かった」

日々業務に追われていると、職場の仲間と声を掛け合う機会が減ってきているのではないでしょうか。昨今の在宅勤務なども増え、この状況は加速しているかと思います。そんな時だからこそ、ちょっとした声掛けが業務をスムーズに進める潤滑剤となり、エンゲージメントを引き上げるきっかけにできると考えています。
先日、前職の新人時代からお世話になっていた私の師匠でもあるK先輩と会う機会がありました。そのK先輩の口癖がまさにこれでした(ちなみにこの先輩の部署ではいつもエンゲージメント評価が高かったとのことでした)。また、日本人は「すいません」を多用する傾向があります。この「すいません」を「ありがとう」に変えるだけでも、お互いの受け取り方が自然とポジティブに変えることができます。ちょっとした声掛けで生産性が上がるのであれば、こんなに簡単なことはありません。ぜひとも、恥ずかしがらずに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてみてほしいと思います。

③強みをコミュニケーションツールに活用

メンバーとの関係性はエンゲージメントを向上するためには非常に重要な部分になります。職位や職歴だけでしかお互いを理解していない場合、遠慮や躊躇などから思うような結果を上げることができなかったという経験を持つ方もいるのではないでしょうか。ストレングスファインダーなどの強み診断ツールを活用することで、誰もがフラットにお互いの事を知ることができると同時に、自分はどんな部分で貢献することができ、どんな時にサポートが必要で、お互いがどのように協力して進めて行けばよいかのヒントとなるでしょう。実際に強みに基づく人材開発をすることで、仕事に対してのエンゲージメントが6倍になったというデータもあります。

まずは職場で診断を受け、認定ストレングスコーチと一緒にコミュニケーション活用について学んでみませんか。

最後に

国民性や仕事観、抱えている課題など、単純に国ごとの結果を比較できないとはいえ、やはり日本のエンゲージメントレベルが5%という結果は個人的に危機感を覚えました。理想を言うと、全国民にストレングスファインダー診断を受けていただき、職場だけでなく教育現場や家庭の中でも強み活用を取り入れてエンゲージメントを上げていきたいところなのですが、現実的には難しいので、すぐに誰でも簡単に取り入れられる要素も含めて紹介させていただきました。何か一つでも参考にして頂ければ嬉しいです。

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