香りのマジック
私は昔から香りにこだわりがあったわけではないと思う。
部屋に飾られた花の香り。
雨が降る前の湿った土の匂い。
玄関を開けたら漂ってくる夕ごはんの匂い。
普通、と言ったら「普通って何?」という話になってしまうかもしれないけれど、本当にごく普通の生活の中の心地よい香りを、ごく普通に楽しんでいた程度だ。
そんな私がストレス解消に香りを利用するようになったのは、友人に誘われて受講したアロマ&ハーブ講座がきっかけだ。確か市民講座だったと思う。様々なエッセンシャルオイルやハーブの効能と実生活への生かし方を、実習を交えて学ぶスタイルの連続講座は、思っていた以上に楽しかった。そして香りが当たり前の生活をしているうちに、自分の好きな香り、癒される香り、元気が出る香りなど、自然に活用していくようになっていった。
香りは音楽と似ている。複数の異なる香りを合わせてハーモニーを楽しむこともできるし、単体をじっくり味わうのもいい。自分の好きな香りや、その時心地よいと感じる香りを胸いっぱい吸い込むと、全身の不要な力みが取れて自然体になる。
私は音楽を聴くときも同じ聴き方をしていて、音やハーモニーを胸いっぱい深呼吸して吸い込むと、体の中に音の重なりやメロディーが満ちてきて、なんとも言えない幸福感に満たされるのだ。私にはそこまでの技術はないけれど、きっと音を香りで表現したり、香りを音で表現したりできると思うし、実際にクラシック音楽をモチーフにしたフレグランスが発売されて昨年話題になった。
この冬は、エッセンシャルオイルを使った入浴剤に随分お世話になった。炭酸ガスで体を温めると同時に、弾ける泡が香りをたてて心地よい。その日の気分に合わせて香りを選び、浴槽に入って香りを吸い込む。そして持ち込んだiPad miniで音楽を聴いたり動画を見たりしながら、ゆっくり過ごす。一日のストレスがスッと和らいで、心身がリラックスする幸せな時間だ。
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