幸嶌

思い付いたままに文をダラダラと

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記事一覧

死に焦がれる

昔枯らした筈の滴が頬を伝う。 幼い頃は、死が怖くて怖くて堪らなかったのに、 今は堪らなく愛しい。 生と死だけは貧しい者だろうが、富ある者だろうが、 どんな人間にも…

幸嶌
6年前
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黒の惑わし

ふと、鈴の音が耳を木霊する。 音の鳴る方を振り向くと、其処には黒い猫がいた。 てっきり、猫の首輪に鈴が着いているのだろうと思ったが、 猫に首輪はない。 野良のよう…

幸嶌
6年前

飲み会嫌い

会社の終業は17時。そして一時間半後には、会社の忘年会が始まる。 ……嗚呼、憂鬱だ。 飲みニケーションだ云々と、面倒極まりない。 普段会社じゃ話せないからと酒を飲み…

幸嶌
6年前
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花吐き病の少女(1)

少女の咽びと共に口から花弁が溢れる。 咽ぶ度に溢れる花弁は、まるで血のように真っ赤であった。 少女は『花吐き病』と呼ばれる奇病に侵されていた。 花吐き病は、体を花…

幸嶌
6年前
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毒吐きの彼女

彼女は毒を吐く。 彼女…

幸嶌
7年前
1

死に焦がれる

昔枯らした筈の滴が頬を伝う。

幼い頃は、死が怖くて怖くて堪らなかったのに、
今は堪らなく愛しい。

生と死だけは貧しい者だろうが、富ある者だろうが、
どんな人間にも平等に与えられるもの。

この世に生まれ、疎まれ蔑まれ、全てを憎み呪った私。
復讐を果たすまで死にたくなかった。
誰よりも幸せになって生きてやるのだと心に誓っていた。

私を蔑すみ嘲笑った者は、身に余る欲を抱き、
罰が当たり悲惨な死を

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黒の惑わし

ふと、鈴の音が耳を木霊する。
音の鳴る方を振り向くと、其処には黒い猫がいた。

てっきり、猫の首輪に鈴が着いているのだろうと思ったが、
猫に首輪はない。
野良のようである。

鈴の音はどうやら私の空耳だったようだ。
耳が可笑しくなったか。
そう思っていると、猫が私に近寄ってくる。
そして、まるでついてこいとでも言うかのように、猫の金の瞳が私を映す。

猫の瞳につられ、惑わされたかのようについて行っ

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飲み会嫌い

会社の終業は17時。そして一時間半後には、会社の忘年会が始まる。
……嗚呼、憂鬱だ。

飲みニケーションだ云々と、面倒極まりない。
普段会社じゃ話せないからと酒を飲み、酒の力を借りて紡がれる言葉は大抵会社の愚痴ばかり。

そもそも、酒を飲まなきゃ交流出来ないとはどういうことなのか。酒の力を借りなければ言えない台詞など、言わずに黙っておけば良いのに。
本当に交流したければ、昼の休憩時間なり、三時休憩

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花吐き病の少女(1)

少女の咽びと共に口から花弁が溢れる。
咽ぶ度に溢れる花弁は、まるで血のように真っ赤であった。

少女は『花吐き病』と呼ばれる奇病に侵されていた。
花吐き病は、体を花に侵される病であり、徐々に内蔵を花に侵し蝕まれ、最期には花の苗床となる。
そして、花吐き病で死した者の骸は、高値で売買され、特殊な保存処理をされ鑑賞物にされるのだ。
特に苗床となった者の見目が良いと価値は跳ね上がり、オークションでは50

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毒吐きの彼女

彼女は毒を吐く。

彼女とカフェに来ていた時のこと。
彼女はマグカップの中を見詰めながら、グルグルとティースプーンで紅茶を混

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