花吐き病の少女(1)

少女の咽びと共に口から花弁が溢れる。
咽ぶ度に溢れる花弁は、まるで血のように真っ赤であった。

少女は『花吐き病』と呼ばれる奇病に侵されていた。
花吐き病は、体を花に侵される病であり、徐々に内蔵を花に侵し蝕まれ、最期には花の苗床となる。
そして、花吐き病で死した者の骸は、高値で売買され、特殊な保存処理をされ鑑賞物にされるのだ。
特に苗床となった者の見目が良いと価値は跳ね上がり、オークションでは500万はくだらないというから驚きである。
花によっても値段は異なり、一番人気は薔薇で、通常金額に100万上乗せされるらしい。


花吐き病の少女からすれば、死後とはいえ売買されるなど、命の冒涜であり人身売買だ。
人を何だと思っているのだろう。
自分の最期を考えると、嘲笑ずにはいられない。

咽ぶ度に溢れる深紅の薔薇の花弁。
通常の花より高値らしい薔薇の花に、金に目が眩んだ両親は、少女を治そうと願うより先に、死んだら鑑賞物にしてくれと願った。
少女が病にかかって心配したのは、友人と恋人であり、誰より彼女の身を案じたのは恋人だった。