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MSWの社会的意義を再確認する〜実習指導を通して〜

こんばんは、kayokoです。

私は現在、病院のソーシャルワーカー(以下、MSW)として働いています。

社会福祉士という国家資格をもってこの業務に従事しているのですが、この資格を取得するためには、学生のうちに180時間の現場実習を行う必要があります。

今年、実務経験3年以上で取得できる『社会福祉士実習指導者講習』を修了したことをうけ、今回初めて実習指導を行うことになりました。

実習生(学生)と日々向き合う中で、MSWとしての在り方について、改めて考えたことをシェアしたいと思います。

観察力と想像力=相手を知ること・信頼関係の構築に役立つ

対人援助職としての基本は、【相手のことを知る】ことから始まります。

例えば、高齢のご家族であれば耳が遠かったり、話の理解に時間がかかる方も多いため、1つずつの説明ごとに、ここまで大丈夫ですかと一呼吸置いたり、いつも以上にゆっくり話したりなど、工夫します。

あとは、こちらの意図とは異なる形で受け止められた場合、その人は相手の言葉に対して自分なりの解釈を加えて理解する傾向にあるため、こちらがどんな意図をもって話しているのか、1つ1つ根拠を交えて丁寧に説明する必要があります。

このように、相手のコミュニケーションの傾向を正しくとらえ、それに合わせてこちらの対応を変えていく必要があるのですが、これがなかなか難しい・・。

なぜなら、慣れないうちはこちらが伝えたいことで頭がいっぱいになってしまい、相手への【観察】を疎かにしてしまうことがあるからです。

実習生には繰り返し、MSWに求められるコミュニケーションは、相手を知ること、すなわち「観察力」とそれに基づいた「想像力」が大切だと伝えてきました。

相手を知る=相手に対して興味を持つことによって、そのような力が身につき、信頼関係(専門用語では、ラポールと言います)構築の第一歩となります。

生活者の視点をもつ福祉職としての他職種連携

MSWの大きな役割の1つが、院内・院外の多職種連携です。

院内の職種のなかでも、これだけ多くの職種とかかわりをもつのは、MSWぐらいだと思います。

MSWとして忘れてはいけないのは、医療職ではなく、福祉職としての視点、すなわち患者ではなく、地域で暮らす1人の人間・生活者として尊重すること。

具体的に言うと、院内での評価を伝えるだけではだめ、ということです。

例えば、院内においてはADL(日常生活動作)が「見守り」という言い方をよくします。しかし、ご家族へ説明する際、「見守り」とそのまま伝えるだけでは、自宅での生活がイメージできないのはわかりますよね。

見守りという評価があったら、それによって自宅に帰ったあとに具体的にはどのような支援体制が必要なのか?までしっかり落とし込んでから、ご家族へ伝える必要があるのです。

それは、「生活者の視点」が無ければ成し遂げられない課題でもあります。

MSWとしては、面談前の事前カンファレンスで、他職種が説明する内容で、退院後の生活が思い描けないようであれば、生活者の視点をもって指摘します。

どんな支援体制があれば、安心して生活できるのか?見守り体制が十分にとれない場合、考えられるリスクは何なのか?今後の伸びしろはあるのか?

様々な角度から、院内での評価内容に対して、福祉職としての「問い」を持ち続けることの大切さを実感する日々です。

また、リスクを最小限にすることが、必ずしもそのクライアントにとっての最善の利益につながるとは限りません

例えば、見守りが必要で転倒するリスクが非常に高いという評価があったとしても、本人の意思がはっきりしていて、リスクありきで早期退院を希望した場合。

最大限の環境調整を提案したのち、自己決定を尊重するのが私たちの役割です。もちろん、このまま帰ると命の危険がある、といった大きなリスクを抱える場合にはそれを説明したうえで、ターミナルケアなどの対応をお願いできる社会資源につなぐなど、本人の意に反する場合でもそのような対応をするケースもあります。

施設を進めることや、退院を延長すること、最終的にその決定をするのは患者・家族であるという原則を、他職種へ共有する必要があります。

その視点を失い、院内の評価やセラピストの個人的な感情で、方向性が決まることは、あってはなりません。

そういった意味において、MSWが生活者の視点とクライアントにとっての最善の利益を守るために、クライアントとの間に入り、他職種へ働きかけていく意義の大きさを確信します。

他職種へのアプローチにおいても、前述したクライアントへの【観察力】や【想像力】が大いに役立つのです。

障害受容のプロセスに寄り添う心理的支援

障害受容については、以前記事にしましたのでこちらも併せて参照ください。

大切な家族が、突然大きな病気に見舞われることは、日常的に起こることではありません。

それらの多くは、前触れなく、突然訪れるものであるため、ご家族の受容が追い付かないことは、想像に難くないと思います。

自宅に戻ることは難しいかもしれない。そのような、クライアントの人生に関わる厳しい話をしなければならない場面にも数多く出会います。

厳しい話であればあるほど、そのご家族の覚悟がどの程度できているのか、受容の段階を見極める必要があります。

障害受容に至るまでの4つの段階について、以下サイトを参照ください。

障害受容までにかかる時間には個人差があります。入院から数か月以上たっても、ショック期から抜け出せない状況の方もいますし、なかには腹をくくり受容している方もいます。それぞれの段階に合わせた対応が求められるため、同じことを伝えるにも、タイミングや言葉の選び方などは慎重になります。

そうしたことも、面談前のカンファレンスで他職種連携のもと話し合います。

障害受容に至るまでのプロセスに丁寧に寄り添うことは、医療職ではなく、福祉職であるMSWの強みを発揮できるところだと思います。

自己覚知の大切さ

対人援助職で大切なことは、自身の思考やコミュニケーションの傾向・知識や技術量などを意識化する、【自己覚知】です。

対人援助をしていると、専門職としての視点だけではなく、MSW自身の個人的な気質が影響を及ぼすことがよくあります。

その人らしさを支援するとはいっても、これまでの生活習慣に対して、【ありえない】【理解に苦しむ】といった、クライアントの価値観と合わないなと感じたときに、自然と湧き出る感情や思考があったりします。

それらがあることは悪いことではありません。大切なことは、それらを無視せず認識し、個人的な感情と専門職としての見解は切り分けて考える、ということです。

あとは、自身のコミュニケーションの傾向を把握しておくことも大切です。

私の場合は、相手の言葉に対して、共感できないもしくは理解できなかったとしても「なるほど!」と返す癖があります。いかにも共感してわかったかのような反応ですが、実はあまり共感できていない、わからないまま反射的にそう返していることがよくあります。

なので、「なるほど」という言葉のあとに続けているのは、「●●さんはそうお考えになるのですね」「そう考えるのも無理はないですね」などと、相手の価値観を尊重した声掛けをするようにしています。

日ごろから、周りから見た自分の印象や、実際に自己認識している思考癖などを、自己覚知という手法で把握しておくと、より質の高い支援につながると思います。

改めて感じたMSWの社会的意義

ここまで長文にも関わらず読んでくださり、本当にありがとうございます。

対人援助に対する熱い想いが、あふれ出てきてしまいました(笑)

何が言いたいのかというと、MSWは社会的価値の高い仕事である、ということです。

感情労働の極みだし、正直ストレスもめちゃめちゃあります。でも、こうして5年も続けられたのは、自己研鑽をあきらめないことで、クライアントから喜ばれる機会も目に見えて増えていることを、実感できているからです。

実習生には、対人援助職のすばらしさとともに、今回の実習で得た気づきは、MSWにならなかったとしても、将来に大きく役立つと確信していることを、メッセージとして伝えていきたいと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました~!!

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