「だるまさんがころんだ!」は日本発祥の遊びじゃない?!スペイン発の謎ときで世界を巡る
「だるまさんがころんだ」といえば、割と知名度のある遊びです。関西では、「ぼうさんがへをこいた」と呼ばれることもある、とっても単純な外遊びです。この遊びのルーツを知っていますか?結構、ミステリーなんです。
スペイン版の「だるまさんがころんだ」が存在する
日本で暮らし続けている場合、きっと気付かないだろうと思いますが、「だるまさんがころんだ」に酷似する遊びがスペインにも存在します。
その名も、「1,2,3, Pollito inglés!(ウン、ドス、トレス、ポジート イングレス)」です。
ある日、私は近くの公園で子ども達が遊ぶ姿をみて、衝撃を受けました。それは、限りなく「だるまさんがころんだ」に似ていました!
では、この遊びの名前である「Pollito inglés」とはどういう意味でしょう?
つまり、「いち、にい、さん、イギリスのひよこ!」と言って遊んでいるのです。
イギリスのひよこ・・・?なにそれ?
ググってみると、Wikipediaでは「Escondite inglés(イギリスのかくれんぼ)」と紹介されていました。そして、スペインでも地方によっては、「イギリスのひよこ」ではなく、「イギリスのチョコレート」と呼ばれているとのこと。
どうやら、イギリスになにかヒントがありそうです。
そう、ここから謎解きは始まったのです。
ちなみに、スペインからこの遊びが伝播したと思われる中南米では、イギリスの名が落ちて伝わっている模様。コスタリカでは、「チョコレート・ストップ」と呼ばれ、メキシコでは「ずるがしこいキツネ(zorro astuto)」とこの遊びが呼ばれていると分かりました。(伝言ゲームのなれの果てみたいになってきたぞ。)
とにかく、イギリスが怪しい。この遊びはイギリスからスペインに伝わった可能性大です。
イギリス版の「だるまさんがころんだ」とは?
では、wikipediaのスペイン語版ページから英語版にとんでみました。その内容をかいつまんで説明します。
ゲームの名前は、「銅像」となっています。つまり、「動かないもの」ですね。そして、「動かないもの」に対するのは「キュレーター(博物館の専門職員)」という設定です。
日本だったら、なんでもかんでも「鬼」としてしまいところですが、さすが、大英帝国博物館などに名だたるコレクションを抱えるお国柄だけあります。(大英帝国時代をたたえる遊びの設定?!)
バリエーションとして、ポピュラーなのは、レッドライト・グリーンライトという信号機の遊びです。信号機役も、もちろん「鬼」とは呼ばれず、「それ(it)」というなんともおおざっぱな名前で呼ばれています。
驚いたことに、こういった遊びは世界中のいろいろな言語で存在しています。
これらのひとつひとつのルールを検証していませんが、遊びの名前を「1、2、3」の数字と組み合わせるところからして、ほぼイギリス版のルールと同じととらえて間違いないでしょう。
「だるまさんがころんだ」との決定的なルールの違い
ただこのイギリス版ルールには「だるまさんがころんだ」との決定的な違いがあります。
それは、ゲームの目的です。
ゲームの目的が違うというのは、かなり決定的な違いです。
なぜ、こんな違いがあるのでしょうか?そもそも「だるまさんがころんだ」はどこから来たのでしょうか?その発祥の謎に迫らなければ、先に進めません。
「だるまさんがころんだ」の起源
その起源を知るべく軽くググると、この遊びが明治時代には存在しなかったことを示唆する興味深い内容に出会いました。
どうやら、「だるまさんがころんだ」は明治時代ではまだ普及していなかった遊びということになります。ということは、開国以降に海外から輸入された遊びである可能性が強くなります。鬼滅の刃の時代設定となった大正時代以降に浸透した遊びということでしょうか。
ここから先は、個人的な推測です。
海外生活12年の経験と10代前半でシャーロックホームズを読破した立場(だからどうしたってか!?)で判断するならば、「だるまさんがころんだ」はイギリスから日本に輸入された、「Statues、レッドライトグリーンライト」の遊びがローカライズされる過程で生まれた進化版とみてほぼ間違いないと思います。
そして、日本では古来より「鬼」ありきの遊びの浸透度が強すぎるあまりに、「みんなと違う存在(=信号機役)になりたがる」という、通常の鬼ごっこの逆パターンがしっくりこなかったのではないかと想像します。そして、イギリス版ルールが「鬼のいる枠組み」の中でおさまる形に進化してしまったのではないかと推察します。(当時まだ信号機をみたことのない子どももいたのでは?!)
なぜ日本では「鬼」が必要なのか
鬼ごっこの歴史は笑うほど長く、平安初期の鬼払いの儀式にその起源があるとされています。もはや「鬼ロス」ではどう遊んでいいのかわからないほどなくてはならない存在だったのかも。笑
もしくは、遊びにより現実味や深い味わいをもたらすエッセンスが「鬼」だったのかもしれません。
なんにしても、イギリス生まれの遊びも日本文化にしっくりくる「鬼バージョン」として生まれ変わったのではないかと思います。そうでないと納得がいかないほど、遊びのスタイル、その立ち姿は「イギリス版」と「だるまさんがころんだ」は酷似しています。
「だるまさんがころんだ」は唱え文句
ではなぜ、イギリスの「Statues、レッドライトグリーンライト」という遊びが日本では、「だるまさんがころんだ」という名前になったのでしょう?
イギリス版では、信号機役が後ろを向いて「グリーンライト!」と言っている間だけ、ほかの人は動くことができるというルールですが、日本では、「だるまさんがころんだ」という言葉を言います。これは、ちょうど10文字です。この10文字というのが重要なのです。つまり、10数える代わりに、この言葉を唱えるとしていているのです。そして、関西では同じ10文字の「ぼうさんがへをこいた」も普及しています。
特に、だるまへの熱い思いはないような感じですね。ぼうさんの屁でもよいぐらいなので。
なんにしても、日本人と鬼との関係は最近の鬼滅ブームで強化され続けています。そして、だるまさんがころんだの遊びの風景は、「鬼滅の刃」の一場面を思い起こすことすらできます。鬼に向かって、たくさんの人間が少しずつだが立ち向かうという姿はまるで、鬼vs鬼殺隊・・・!と、みえなくもないぞ。なんだか、炭次郎のいる大正時代っぽくなってきました!
結局、鬼の力が強すぎて、動くこともままならないけれど、がんばれ人間!そんな風に鬼滅世代は思いをはせながら「だるまさんがころんだ」を遊ぶかもしれませんね。(自分の子ども時代は結構、何も考えてなかったけど!)
そんなわけで、鬼の歴史は面白い!
以上、トリリンガル視点での「だるまさんがころんだ」の考察でした。
Sacha
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