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シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#05
水分子の電子軌道を表現するためにベクトル空間の座標軸を用意したら、1001次元もの巨大な空間になってしまいました。計算機で力任せに軌道を決めても良いのですが、あんまりスマートではありません。だってわたし達が扱っているのはたった一つの小さな水分子に過ぎないのです。精度を上げるために基底を増やしたり、もっと大きな分子を考えたりすると組み合わせは爆発的に増加して、すぐ手に追えなくなってしまうでしょう。
シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#04
さて、水分子(H2O)と水素分子(H2)は何が違うでしょうか?酸素原子が増えた?はい、御名答です。……まずはこれを量子論的に捉え直してみます。
水素の原子核は+1の電荷を持っているのでした。これを2つ用意して、区別するためにHa、Hbと名前を付けておきます。続いて酸素原子です。周期表を思い出せば、酸素Oの原子核の電荷は+8だと分かりますね。これを一つ、合計で+10の電荷が世界に設置されました。さ
シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#03
今回はついに分子を考えていきます。とはいえもう道具は揃ったのですからサクサク進んでいきたいものです。とりあえず水素原子を2つ用意して並べて眺めてみましょう。
このままでは水素原子はくっついてくれません。水素原子はトータルで電荷を持たず、互いに遠くにいるときは原子間で電気的な引力が働かないからです。しかし、電子の雲が干渉するくらいに近づけてみるとどうでしょう。もはや互いの電子雲は無関係でいられず、
シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#02
量子論がヘリウム原子にも太刀打ちできないだなんて、なんと絶望的な事実でしょうか。原子核1つと電子が2つになった途端にお手上げとは…量子論なんて所詮は水素原子の輝線スペクトルを説明するだけの、難解な数式いじりに過ぎなかったのでしょうか?
化学者は天文学からヒントを得ました。例えば月と地球、そして太陽の軌道を考えましょう。天体の運動ははるか未来まで運命が決まっているのに、その動きを表す数式を作ること
シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#01
さて、量子論で「水」を見るために……まず「原子」を考えていきます。そしてそれを考えるには、原子が何から出来ているか考えなくてはなりません。
ここは量子論の世界です。一度この世界の常識は忘れ、そしてこれだけ受け入れてください。
1. 全ての物はどこにいて、どれくらいの速さで動いているのか同時に知ることはできない。(同時測定の結果は原理的に誤差を伴う。)従って、物がある位置に存在する確率は雲のよう
シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#00
みなさん、「水」ってご存知ですか?
はい、「水」です。DHMO、あるいは水酸と呼ばれる、酸性雨に含まれていて腐食やさびの原因となるあの悪名高い化学物質……笑っていただけたなら大丈夫そうですね。
「水」の話をします。少しばかりお付き合いください。
突然ですが質問です。 あなたが「水」だと思うものを選んでみてください。
Aですか?原子論もご存知?素晴らしいです。Hはhydrogen(水素)、O