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シェイプ・オブ・ウォーター(化学的な意味で)#00

みなさん、「水」ってご存知ですか?

はい、「水」です。DHMO、あるいは水酸と呼ばれる、酸性雨に含まれていて腐食やさびの原因となるあの悪名高い化学物質……笑っていただけたなら大丈夫そうですね。

「水」の話をします。少しばかりお付き合いください。

突然ですが質問です。 あなたが「水」だと思うものを選んでみてください。

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Aですか?原子論もご存知?素晴らしいです。Hはhydrogen(水素)、Oはoxygen(酸素)です。つまり、水素原子2つと酸素原子1つから水が出来ていますよ、と読み取れますね。

Bに馴染みのあるあなたは、もしかして化学がご専門でしょうか。これはルイス構造式と呼ばれるもので、アルファベットが原子の種類を、黒点が電子を表しています。経験上、水素の周りには電子が2個、酸素には8個の電子が存在すると安定するみたいです。あれれ、だんだん難しくなってきました。

Cはもっと難解です。黒点が4つに減って、おまけに酸素から腕が伸びてV字型に折れ曲がってしまっています。なんということでしょう。

Dに至っては...これをご存知の方は、化学のエキスパートですね。酸素から「ローブ」が四方に伸びて水素を捕まえています。もはや意味不明です。

お察しの通り、これらはどれも「水」です。化学徒はAから順番に勉強していき、どの式もある意味正しく同時に不正確であることを知っていきます。

なぜこんなにたくさんの表記が生まれたのでしょう?そう、これらの表記は人類が「水」の本質に肉薄してきた歴史なのです。「水」は最も身近な物質でありながら、その全貌は未だに明らかではないのです。

ああ、何ということでしょう。つまり今後も教科書は分厚くなり続ける運命なのでしょうか?試験前の化学徒の悲鳴が聴こえてきそうです。

とっておきの裏技を思いつきました。

それは今ある最も本質的な「水」の姿を理解して、そこから歴史を辿るように古典的な姿へと遡っていくことです。これだけでテストは楽勝です。(本当かな…?)

では我々の知る最も本質的な「水」の姿を見てみましょう!

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ええ……。

話が全然違うじゃないですか。黒点、ローブ?跡形もありませんね。V字型の物の周りに雲のようなものが覆いかぶさって、それがいくつも。

これは量子論というアイデアの基に書かれた「水」です。そして、ここからスタートすればここまで登場した全てを一気に説明できるスゴイやつです。しかし悲しいかな、これは複雑な話なので一朝一夕に完全に理解した!と言えるような代物ではありません。

例えば何もない宇宙空間にポツンと浮かぶ「水」の単分子にさえ、数多の理論や複雑な物理が渦巻いています。ましてやコップの水が凍ったり、水蒸気になったりの酸性、アルカリ性、粘性や導電性……そんな無数の興味深い現象を考えようものなら、ああ……仔細を記すにはnoteの余白が少なすぎます。(当然ですが、わたしの理解も水に関する全ての極々わずかな断章にすぎません。)

この連載では詳細はそこそこに、エッセンスをお話できれば良いなと思っています。つまり、わたしが水に関する現象をどのような視座で眺め、理解しようとしているのか、そんな脳内地図を共有したいなという試みです。

身構えなくても大丈夫ですよ、なるべくまろやかに行きますので。あんまり難しい数式や高度な物理の話はしませんから。多分しないと思います。しないんじゃないかな…?まあ、ちょっとは覚悟しておいてください。

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