九三郎(ここのつ さぶろう)

九三郎(ここのつ さぶろう)

最近の記事

暑くない日の午後に降った雨 ある油絵画家の日記

額縁の隅に、てんとう虫が止まった。 急な雨に逃げて来た。かたつむりに乗って。 逃げ込んできた大きな窓に、1人でお祈りをした。 グレーのペンキが乾いてないみたいだった。   ベーコンとレタスとチーズのサンドイッチの レタスを散切って、ありがとうと言った。 かたつむりは触覚でお辞儀をした。   アリたちは溺れて死んだ。 カエルは幸せに溺れた。 鳥たちは眠った。 私は、ブランケットを広げた。

    • 『カップルで学ぶ正しいサキュバスとの付き合い方』

      発行元:HHRI(Human Health Research Institute) 序文 「サキュバス」という存在は、今や我々の生活の中に共存する様々な魔族種の中でもかなりあり触れた存在になりました。歴史を辿れば約1000年程前からその存在を確認されているサキュバスは、当初淫魔族の中の1種として繁栄し、約500年の歳月を経て他の淫魔族の個性も飲み込むような形で現在にまで受け継がれる姿に進化を遂げました。その後は社会的変革に際し、人口を減らしながらも人類と広く交流を持つ中で、

      • 人類牧場:地球

         家畜化とは、野生の生物を捕獲し手懐けた上で意図的に交配を行い、消費者または所有者の望むある目的の為に、生命の在り方そのものを操作する行為である。現にこの地球では人類によって牛、豚、鶏、羊など多くの生物が長い年月をかけて先祖となる原種からより人類に都合の良い姿、身体に改良されてきたのだ。  しかしながら、この世に星の数ほど存在する種の生物の全てが必ずしも家畜化に適しているとは言えないのである。そんな中でも数ある動物種の中から前述したようなメジャーな家畜を作り出せたのは、一重に

        • 暗夜香

          紫色の雲は過ぎたよ どこを見たって薄ら明るい灰色の雲がよ 夜だって街道は車が通っていて 僕や隣人たちを寝かしつける為のプロペラは回り続けている 早い者勝ちに負けてまた寝れずにいる   白昼夢 日射しの暑さ ねむる猫 外したヘッドホンから漏れるギターの音 食べ損ねたお昼ご飯 喉も乾かず 窓を開けて風を入れる 一度沸かしたケトルの湯が 使われることもなく冷めてしまった 無駄な30分 俺の1時間はどこへ消えた どこへ消えた どこへ消えた 耳元に聞こえた気がした笑い声を思い出してみた

        暑くない日の午後に降った雨 ある油絵画家の日記

          早朝の庭の景色

          白靄の中に立っている 朝の日の逆光を浴びている 湿った草を踏んでいる 冷たい足を生やしている 手の甲の皺を遊ばせている 冷えた頬を撫でようとしている 鳥が鳴き始めるのを待っている

           豚に真珠 猫に小判  裂けた口に水鏡   嘘という言葉をなぜ美しさに結びつけたくなるのか 私にとって美しさとは 本性 体温 言葉 優しさ あの時私を励ましてくれた言葉の裏に 都合が隠れていた 私は励まされる人間で 頑張るべきだった 明日が晴れると予報が言うくらい 何気なく口からこぼれた 私は、不釣り合いなモノに囲まれている 私は、私の、 白い首にかけられたネックレス 彼女の、白く長い髭の先が、 世界に熔ける   猫の髭は異次元と繋がっていて 猫が時折平然と見せつける予知のよ

          煙草と詩

          詩を書くのは、多分、煙草みたいなことなんだと思う。 ぼくにとって詩は モヤモヤ素敵な言葉を並べるとか ボヤボヤ高尚な事を天に唱えているとか そう言う事にはなってないと思う。 それでもいいのかもしれない しれないけど。   こうして今だって文字を並べて、 改行して 偶にぼぅっと天井見て、 そしたら今度は画面をぼぅっと見て、また 思いついた事を書いていく。   これってなんだか煙草みたいだと思った 吸って 一旦煙吐いて ぼぅっと天井見て、 火のついた煙草の先をぼぅっと見て そした

          静かな水の中の景色

           花  花弁の先を桃色に染めた花が寒そうにめしべを覆っている  茎  黄金比の引用 つくえ 重く冷えた木肌は眠る赤子の頬を覗いて産毛を撫でる あ し 消え入る意識の切れ間に伸びる影の記憶       カメラ わたし     指   わたしの手     首   わたしの頭   心にもないことばを並べて わたしの景色に色は着くか わたしの心からこぼれおちたことばに いくつの私の魂が 宿ろうか 宿っていたか 指の間 星屑の残像 飛蚊症 乱視で歪む月   平凡な言葉に甘えたいぼくがい

          善戯

          どうしたの 寂しそうな顔して 別に気にしてないよ 僕に相談できる事なら気軽に相談して うん うん 君は悪くないよ 誰だってそう思うよ 僕だってそう思う 当然だよ だから落ち込まないで 君が悲しい顔をしているのは似合わないよ 折角だし今日は美味しい物でもご馳走してあげる 大丈夫 気にしないで 辛い時は楽しい事をして思いっきり発散しよ

          10代

          10代 ぼくはトガっていた 10代 ぼくはスゴいやつだった 10代 ぼくはさいこうにクールだった 10代 ぼくができないコトはできなくていいコトだった 10代 なにもキマっていなかった 10代 なにもかもワケわかんなかった 10代 不安だった。 10代 不安だった。 10代 本当にワケわかんなかった。 10代 良いコトだって教わったコトがなにも良いコトじゃなかった 10代 クソミソのどん底なんじゃないかって思った。 10代 俺だけが不幸なんだそうにちがいない 10代 なんでも

          芸術の[価値]とは何か。なぜ1億円の絵が存在するのか。偶には証券マンの真似事を。

          [1億円の絵]この記事に興味を持った人が一度は思った事のある 「1億円の絵はどこに1億円の価値があるの?」 という、この疑問。   この記事がまず目指す大きな目標がこの疑問への回答だ。 恐らく答えは1つではない。 しかし、今の私はこう考えていて、 この文章が誰かの疑問へのささやかな助けになればいいとも思っている。   そして、そこから、今の拙い私が考える[価値]とは何かについて、 少し雑談をしたいと思う。 [高額な作品]と[無料の作品]わたし達は色んな作品を見てきた。 見

          芸術の[価値]とは何か。なぜ1億円の絵が存在するのか。偶には証券マンの真似事を。