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ハイウェイ

 高速道路から見える景色は、乱反射を繰り返し私の眼に入ってくる。窓枠が切り取る世界は私の舞台の1セットだ。私は大人びたワンピースと振る舞いで武装し、間違いなく一番かわいい「私」を助手席に座らせている。しかし、隣で運転している彼は唇に余裕を携えて、遠くの景色を見ている。私はその遠くの景色の先を共に見て、自分の未来を重ねてみたりする。まるで安いメロドラマだ、なんて台詞すら言ってしまいそうだ。私は浮かれている。さっきからBGMは彼のお気に入りの洋楽が流れていて、何を言っているかわからないけど、どれもラブソングだな、なんて思う。だって優しいから。

 深夜の大橋はよく濃霧を纏う。今日もぼんやりと街頭の明かりだけが浮かび上がる。隣の鉄橋を、米原行き新快速の明かりが駆け抜けていく。それを横目で見ながらこの車はどこへ行くのだろうと考える。この橋を渡れば阪神高速はビル街を急カーブで縫いつないでいく。赤い赤いこの小さな車でその上を駆け抜ける。タバコの火はジリジリと音を立てて半分近くを燃やしていて何かしらカウントダウンようだ。青いカンカンのコーヒーは少しぬるくなっている。赤い車は合流を繰り返す。タバコは2本目に行く。コーヒーはまだぬるい。少し安心する。

 気づけば靄も明けて、ミナミの街並みの中を車はヒュンヒュンと音を立てて駆け抜ける。「そういえば今度アメ横のライブハウスにあのバンドが来るよ」と急に君。「チケットを2枚取っているのだけど。」ザザザとノイズ音が心でざわめく。隣を見ると君がカーステレオをラジオに切り替えて802と数字を合わせていた。陽気なDJの声から引き継がれて流れたメロディーは言葉を重ねてこう奏でた。
「I love you って空耳してもいいかな」



Highway Cabriolet / 赤い公園

I Love Youって空耳してもいいかな
それともこれくらい君はなんてことないの

今にも黄昏があふれ出す
とどめたい心の奥で光るPassenger Lamp
唇にほんのちょっと携えた余裕
Car Window はまるで超高速の映画
優しい目尻、射るような視線
どうにもならない熱帯夜

Highway Cabriolet 二人を乗せて
果てまで泳いでく遊覧船
目を光らせたガイコツも呆れて
煙を吐いてる遊園地
BGM おまかせDJカゼマカセ
あらゆるHzの観覧車
回しても回してもLove Song

I Love Youって空耳してくれるかな
それとも気づかないフリを決め込んでるの

喉元を上下して空きっぱなしのキャップ
当然ぶった右手受け取る左手
咳払いひとつ、受けてもうひとつ
どうにもこうにも熱帯夜

Highway Cabriolet 二人潜り込む
彩りをHackした鍾乳洞
Yellow 混じりでもRedCardギリギリ
しつこいBeamの乱反射
BGM 波風DJウミガメ
抜けたらFlashで竜宮城
返しては寄せてくLove Song

(作詞/作曲 津野米咲)
転がる岩、君に朝が降る / ASIAN KUNG-FU GENERATION

出来れば世界を僕は塗り替えたい
戦争をなくすような大逸れたことじゃない
だけどちょっとそれもあるよな

俳優や映画スターには成れない
それどころか君の前でさえも上手に笑えない
そんな僕に術はないよな
嗚呼・・・

何を間違った?
それさえもわからないんだ
ローリング ローリング
はじめから持ってないのに胸が痛んだ

僕らはきっとこの先も
心絡まって ローリング ローリング
凍てつく地面を転がるように走り出した

理由(わけ)もないのに何だか悲しい
泣けやしないから余計に救いがない
そんな夜を温めるように歌うんだ

岩は転がって僕たちを 何処かに連れて行くようにように
固い地面を分けて命が芽生えた

あの丘を越えたその先は
光輝いたようにように
君の孤独も全て暴き出す朝だ

赤い小さな車は君を乗せて
遠く向こうの角を曲がって
此処からは見えなくなった

何をなくした?
それさえもわからないんだ
ローリング ローリング
はじめから持ってないのに胸が痛んだ

僕らはきっとこの先も
心絡まってローリング ローリング
凍てつく世界を転がるように走り出した

(作詞/作曲 後藤正文)

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