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創作大賞2023から書籍化された本、全7冊。読んで感想を書いてみた!

2024年も残りわずかだ。
振り返りをしたいなぁ思いつつ、できずにいて、でも今年は特別な年だから何かしておかないと!となんとか奮起し、
野やぎさんの100作読むシリーズや、アルロンさんのぜんぶ読んだ感想記事にパワーをいただきながら書いている。

ということで、
創作大賞2023で受賞し、今年書籍化された作品全7冊を読んだので、感想を書きます!!

◆『ナースの卯月に視えるもの』秋谷りんこ(文春文庫、2024/5/8)
◆『ナースの卯月に視えるもの2絆をつなぐ』秋谷りんこ(文春文庫、2024/11/6)

創作大賞で文藝春秋賞を受賞した本作は、
人気の医療小説の中でも、珍しい看護師視点のお仕事小説であり、患者の思い残しを解決していくというミステリー小説でもある。
破竹の勢いで売れ続け、シリーズ化された(祝!)。

1巻はこちらに感想を書いたので、今回は2巻について。表紙からとてもかわいく、楽しみに購入した。

始まりからすごく良かった。短い言葉でテンポよく1巻のことを思い出させてくれるし、未読の人でもすんなりと物語の中に入っていける。
卯月自身に自分が、すっと重なっていくような感覚があった。

1巻から数年が過ぎ、卯月は大学院に通うかたわら、病院で看護師としてパート勤務を続けている。今作で卯月は、上司の思い残しを目撃し、自分の家族の難病と向き合うことになる。

治る見込みのない病気や、その先で待つ死を目の前にして、患者は、その家族は、何を思い、行動するのか。
本作は、前作以上にその機微を、丁寧に描き出している。

私には子どもがいるので、三歳の芽衣ちゃんを残して死んでしまうママが、芽衣ちゃんを思って起こす行動と思いに胸打たれ、涙した。

そして、看護師でもない、患者家族でもない、
卯月自身がこんな風に語る場面が印象的だった。

もし私が今後大きな病気をしたら、一番の支えは誰になるのだろう。家族や友達、同僚たちの顔を思い浮かべる。みんなそれぞれ力になってくれる気がするけれど……。
「もし本当に病気になったら、相手が誰であってもちょっと気を遣っちゃう気もするね」

ナースの卯月に視えるもの2絆をつなぐ』より引用

頼ってもらうことよりも、頼る方が難しいってこと、あるよなぁ。と、自身の経験に照らして思ったりする。

だけど、患者の命をあずかり、人の思い残しや同僚の体調にまで心を寄せる卯月にも、気兼ねなく支えになる人が現れてくれたらいいのに、と思う。
本作ではきっと猫のアンちゃんが癒してくれたけれど、今後、あの人やあの人とはどうなっていくのだろう……!

続巻を楽しみに待ちたい。


◆『祈願成就』霜月 透子(新潮文庫、2024/5/29)

霜月さんとは、本が発売されたあと、
編集者さんを交えて対談をさせてもらった。

私の担当編集さんはホラーが苦手らしく、読めるか心配していたので、
「私も苦手だけど、noteを読んだ感じではなんとか、大丈夫……だと思います!」と伝えた。
のだが、書籍版を読んだら、note版の何倍も怖くなっていて、ヒーヒー言いながら、でも面白くて最後まで読み切った。
(編集者さんからは後日、「すごく怖かったんですけど……」と恨めしそうに言われました……きっとホラー小説にとって最大の誉め言葉)

夏休みの最後に、5人の小学生がおこなった”おまじない”の儀式。
願いをかなえてくれるのと引き換えに、
代償を支払わなければならない。
大人になった5人を次々に襲う災厄は、
どんな願いの代償なのか?
5人はいったい、どんな代償を支払わされるのか?
5人それぞれによって語られ進む物語は、
想像もしていなかった結末を迎える。

常に夕方~夜のような、薄気味悪い雰囲気が文章全体に漂う文章。
一回目に読んだときは怖くてそれどころじゃなかったけれど、改めて読み返してみると、筆力、構成力に圧倒される。
303ページあって、たぶん7冊の中で一番分量があるのだけど、全くそんな感じはしない。読みやすく、読者を引き付ける力が強い。
話が進むにつれて、怖さが増していくのもすごい。

ホラー苦手な人は、夜に読まない方がいい。
おもしろくてついつい読んじゃうんだけど、
「なんで私はこんな時間に、祈願成就を読んでしまったんだ――!!!」と、ひとり風呂や寝床に入るときに後悔する。

昼の明るい光の中で読みましょう(それでも絶対怖い)。


◆『存在の耐えられない愛おしさ』伊藤亜和(KADOKAWA、2024/6/14)

乱暴と繊細。
ユーモアと感傷。
無関心と愛情。
強さと脆さ。

そういう一見真逆にあるようなものを、絶妙なバランスで行き来しながら、読む人の気持ちを揺さぶるエッセイ集。

文章は、海外小説みたいに淡々と美しくて、時に乱暴なのに、そこから家族や友人へのかくしきれない愛情が溢れ出ている。愛情を、こんな風に書ける人を私は他に知らない。

1話読むごとに、「なんなんだろうこの気持ち」と天を仰ぎ、その余韻に浸ってしまう。伊藤亜和さんがつむぐ言葉を一文字でも逃すのが惜しく、誰もいない静かな部屋で大切に読んだ。

好きなのは、偏った私の好みなのだけど、
『「モデルさん」になんかならない』。

伊藤亜和さんが、何者でもない自分自身と、
その先につながる可能性を、
ああでもないこうでもないと探したり見つめたり、投げ捨てたりするさまが、心を打つ。


◆『私の死体を探してください。』星月渉(光文社、2024/7/24)

編集部賞と映像化賞をW受賞し、ドラマ化された。
ドラマのオープニングの1番はじめに「原作 星月渉」と出てきたのが、めちゃくちゃかっこよかった!

小説家の森林麻美は、ブログに「私の死体を探してください。」と残して失踪する。時間設定で更新されるブログにより、ページをめくるように明かされる、麻美の現在と過去。

今、麻美は生きているのか?
死んでいるとしたら人気絶頂の中なぜ死んでしまったのか?
過去、麻美が関わった「白い鳥籠事件」の全貌も徐々に明らかになっていく。事件で亡くなった4人の女子生徒は、本当に集団「自殺」だったのか?

死んでいるはずの人間に、
翻弄され、次第に追い込まれていく、
今を生きている人ーー麻美の夫や、編集者ーーたち。

次々に生まれる謎に、ページを繰る手が止まらない、これぞエンタメ!というワクワク感が満載なのはもちろんだが、ラストも本当によかった。
登場人物たち本人でも持て余してしまうような愛情と執着が、深く熱いエネルギーを持って、作品全部を包む。

小説家が主人公で、一つの大きなテーマでもあるから、noteの中で、何かしら創作をしている人ならば、とくに強く響くものがあると思う。読んでよかったと思える作品。


◆『褒めてくれてもいいんですよ?』斉藤ナミ(hayaoki books 、2024/11/29)

なんでここまで書けるんだろうな、
斉藤ナミさんという人は。

めっちゃ面白い!と笑っちゃうエッセイがある一方で、読んでいて、自分の心臓が痛くなってしまうようなはなしもある。

『陽気国の民とキャンプに行って泥になったはなし』。
同じような場面で、
同じような行動をしている私は、
ここまで心の内側をさらけ出されると、

「え、この感情って、そんなにさらけ出してしまって大丈夫なやつだったの?」
と困惑したり、

「え、この感情って、そういうことだったんだ?」
と言語化していなかった感情のルーツに気付かされたり、

「見てみないふりしてたのに、なんてことしてくれたんだ!」
と理不尽な怒りさえ湧いてきたり、
感情がぐっちゃんぐちゃんになって、そんな自分に驚いた。

ナミさんはもちろん、自分の経験と感情を語っているだけで何一つ悪くない。
自分だったらとうてい直視して書くことなんてできない感情を、こんなに真正面から書けるナミさんって、やっぱりすごく特別な人だ。

こうやって書くことで受け止めて、
もっと陽気な人間になるにはどうしたら…!と渇望して、努力するナミさんが、人間らしくて愛おしくて、だからこの人はたくさんの人に愛されているんだろうなと想像した。

胸が痛くなるほど分かってしまう(ナミさんは分かるって簡単に言ってほしくないと思うけれど、ここではそう言わせてほしい)エピソードがある一方で、
催眠術をかけられにいくとか、沖縄で舞台に出て踊っちゃうとか、そういう発想は自分には全然ないし、周りにもそんな人いたことなくて、この人の思考回路はいったい…?と、興味深くてどんどん読んだ。

斉藤ナミさんという人間を、もっともっと知りたくなるエッセイ集だった。


◆『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(朝日新聞出版、2024/4/5)

「クリキャベ」の愛称で呼んでいただいた、創作大賞2023、第一号の書籍化作品。noterさんからいただいた感想が帯になりました。ありがたいことに重版もしました。

家事代行になって3ヶ月の永井津麦。
新しい勤務先は、6人家族の父子家庭、織野家だ。
ごく普通のマンションの一室で暮らす家の中に一歩足を踏み入れると、そこには、息苦しいほど沢山の“洗濯ものの海”が広がっていた!

仕事のやりがい、家事との付き合い方、そして家族への想い。それぞれに揺れる人々を描いたお仕事小説。

たくさんの方が、ご自身の生活や家事や仕事と、
この小説を重ねて読んでくださった。

著者自身の感想より、こちらのマガジンを読んで頂けたら、作品の雰囲気が伝わるかなと思います。

心があたたかく、“ふわりと明るくなる”と編集者さんにコピーをつけてもらいました。
手にとっていただけたら、とても嬉しいです。



創作大賞で書籍化された本。
気になるものがあった方は、ぜひ本を読んで、感想を伝えてほしい。作者はみんな、いつでも感想を楽しみに待っています!



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せやま南天
読んでくださり、ありがとうございます! いただいたサポートは、次の創作のパワーにしたいと思います。

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