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アレックス・シアラー『世界でたったひとりの子』/読書感想文(2022下半期5冊その1)

※こちらはメンバーシップ【cafe de 読書】に参加されている方、もしくは記事を購入された方が全文お読み頂けます。途中まではみなさん、お読み頂けます。

2022年下半期に読んだ本の中から、
おススメ本を5冊選んで感想文を書いていきます。今日は1冊目です。

下半期選んだ本は、この本の雰囲気がとにかく好み!というよりも、どちらかというと、「こんな本があったのか!!!」と、新しい発見に満ちた本が並びました。
自分の中で、これまであまり揺り動かされなかった部分の感情を、ユッサユッサ揺さぶってくれた本を選んでいます。

一冊目は、9月のcafe de 読書お茶会でも話題にあげたこちらの本です。

世界でたったひとりの子』アレックス・シアラー著/金原瑞人訳

この本を手に取った時期、新しく小説を書きたかったんです。少年少女が主人公の小説を。

けれど、よく考えたら、
私自身そんな時期はとっくのとうに過ぎてしまったし、しかも、最近は大人が主人公の小説ばかり読んでいたなと気づきました。
まずは、本を読んで、こどもの気持ちを思い出そうというわけです。何か良い本はないかと調べて読んだのがこちらの本でした。

現在は絶版になっているようで、新刊の販売はほぼなく、私は図書館で見つけました。けれど、絶版にするなんて、もったいない!

今読んでも、いやむしろ、
今この時代だからこそ考えることがたくさんある。そんな作品なのでは、と思っています。



不老長寿の代償に、子供が生まれなくなった世界


物語の舞台は、人が二百歳まで生きられるようになった世界です。
聖書に書かれている人間の『割り当てられた命の長さ』はスリースコア・アンド・テン。七十年。けれど、医療の発達により、人はその七十年の二倍、三倍まで生きるようになりました。四十歳頃から多くの人が老化防止薬を飲み、老いることさえ無くなります。

不老長寿の代償か、世界では子どもが生まれなくなりました。
新しいウイルスが現れて、人を子どもができない体にしたのです。ほんの少しの例外を除いて。ごくわずかな人だけが、今でも子どもを持つことができました。

子どもを持ちたい男女はたくさんいるのに、子どもがほとんど生まれないので、生まれた子どもは違法に高値で取引されます。道では、常にひとさらいが子どもを狙っています。

さらわれた子は、金持ちの家庭に売りつけられることもあります。
主人公のタリンは、子どもを持てなかった家庭に「貸し出される」子どもでした。

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