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018 公正証書遺言との比較

前回は、法務局における自筆証書遺言保管制度が開始されたことにより、自筆証書遺言の利用価値が高まっていることを述べました。今回は、公正証書遺言との比較について、述べたいと思います。私は、かれこれ20年にわたり相続に関する問題解決の仕事をしてきており、長らく(20年中19年は)公正証書遺言の作成を推奨してきました。それは、公正証書遺言を作成しておけば、間違いのない(瑕疵のない)遺言を作成することができ、相続開始後の円滑な手続きを期待することができると考えていたからです。しかし、い

    • 017 自筆証書遺言保管制度

      前回は、自筆証書遺言について、遺言者の死後において検認の手続きが予定されていることが、自筆証書遺言による円滑な相続手続きにブレーキをかけてしまっている側面が否めないことを述べました。今回は、自筆証書遺言の検認の手続きを不要とする法改正について、述べたいと思います。近年の法改正により、法務局における自筆証書遺言保管制度が、2020年7月1日から、施行されました。この制度は、自筆証書遺言を法務局が保管してくれるという仕組みですが、法務局において自筆証書遺言が保管されることにより、

      • 016 検認の手続き

        前回は、相続手続きにおける「難敵」は金融機関と法務局(不動産登記)であり、この「難敵」に対して円滑に相続手続きを進めるためには、遺言を作成する準備段階において、精度の高い財産の棚卸しを行い、的確な財産目録を作成することが有効であることを述べました。今回は、遺言がある場合の相続手続きと検認の手続きについて、述べたいと思います。遺言の作成方法としては、民法により、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方法が定められていることは既に述べました(本稿012)。これらの遺言の

        • 015 精度の高い財産の棚卸し

          前回は、自筆証書遺言作成の具体的な手順について述べました。そして、自分の死後における円滑な相続手続きを期待するためには、精度の高い財産の棚卸しを行い、精度の高い財産目録を作成しておくことが有効であることを述べました。今回は、精度の高い財産の棚卸しを行い、財産目録を作成することについて、さらに述べたいと思います。誤解を恐れずに言えば、相続手続きにおける「難敵」は金融機関と法務局(不動産登記)です。法律及び判例に則って相続手続きを実践していると言えばそれまでですが、融通が効かない

        018 公正証書遺言との比較

          014 自筆証書遺言作成の手順

          前回は、遺言の作成における留意点について述べました。遺言の作成において最も重要なことは、自分の財産についてよく見直すこと、そして、まずは自分でよく考えることです。遺言の作成は、まずは、自分の財産の棚卸しから始める、といったところです。今回は、自筆証書遺言作成の具体的な手順について、述べたいと思います。民法では、自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条1項)、とされています。自筆証書遺言は、文字通り、

          014 自筆証書遺言作成の手順

          013 遺言の作成における留意点

          前回は、相続対策として、自筆証書遺言の作成を推奨することを述べました。今回は、遺言の作成における留意点について、述べたいと思います。自筆証書遺言に限らず、他の方法による遺言(公正証書遺言、秘密証書遺言)を作成する際も同様ですが、遺言の作成において最も重要なことは、自分の財産についてよく見直すこと、そして、まずは自分でよく考えることです。相続は、プラスの財産に限定されず、マイナスの借金についても相続人に引き継がれることになりますので、マイナスの借金も含めてよく見直さなければなり

          013 遺言の作成における留意点

          012 具体的な対応策は自筆証書遺言

          前回は、相続対策における本人の責任について述べました。部外者任せの相続は、きっと、後悔しますので、相続を、自分の手に取り戻す、家族の手に取り戻すことを提唱しました。今回は、その具体的な対応策である遺言について、さらに述べたいと思います。遺言書の作成方法としては、民法により、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方法が定められています。秘密証書遺言という遺言書の作成方法は、法律の学習としてはなかなか興味深く、自筆証書遺言と公正証書遺言のいいとこ取りのような仕組みなので

          012 具体的な対応策は自筆証書遺言

          011 相続対策における本人の責任

          前回は、相続における様々な困難を解決する方策はズバリ遺言であることを述べました。今回は、相続対策における本人(被相続人)の責任と立ち位置について、述べたいと思います。そもそも、相続は、本人が築いた財産を次の世代に承継させる制度です。この主導権は本人にあります。相続を待たずに生前に贈与すること等を含めて、本人が、自由に、自分の財産の行く末を決めることができます。また、その道筋をつけておくことは本人の責任でもあると思います。自分が死んだ後のことは残された人たちに委ねるという意思決

          011 相続対策における本人の責任

          010 解決策は、ズバリ、遺言です

          前回は、借金の相続は資金を貸し出している債権者(金融機関)を交えた合意形成により決まることを述べました。そして、本稿においては、相続における合意形成の重要性とその困難さについて述べてきました。今回は、その解決策について、述べたいと思います。相続における様々な困難を解決する方策は、ズバリ、遺言です。相続問題の事前対策の王道は遺言であり、また、遺言が最も優れていると思います。これが、かれこれ20年にわたり相続に関する問題の解決を仕事としてきた私の結論です。遺言ってすごいんです。こ

          010 解決策は、ズバリ、遺言です

          009 マイナスの借金に関する合意形成

          前回は、マイナスの借金の相続について述べました。そして、相続のルールは、プラスの財産に関するルールと、マイナスの借金に関するルールとでは異なることを述べました。今回は、マイナスの借金に関する合意形成について、さらに述べたいと思います。マイナスの借金は、法定相続分に従って相続しなければなりません。例えば、夫が借金を残して亡くなり、その相続人が、妻、長男、次男の3人である場合、妻が借金の2分の1を、長男と次男がそれぞれ借金の4分の1ずつを相続し、その返済の義務を承継します。しかし

          009 マイナスの借金に関する合意形成

          008 マイナスの借金の相続

          前回は、遺産分割協議の対象財産について述べました。相続、そして、遺産の承継においては、法律の規定内容よりも、相続人間における遺産分割協議における合意形成が何よりも重要であることを述べました。今回は、相続財産の中でも、マイナスの借金について、述べたいと思います。相続は、被相続人が保有していた財産について、プラスの財産からマイナスの借金まで包括的に相続人が引き継ぐ制度です。平成28年12月19日によれば、プラスの相続財産は凡そ不可分であり、遺産分割協議を経て誰が何を承継するのか具

          008 マイナスの借金の相続

          007 遺産分割協議の対象財産

          前回は、相続の高齢化について述べました。遺産分割協議においては、相続財産の調査、相続人間の意見調整、相続の高齢化問題、これらの問題が立ちはだかり、多くの相続において、遺産分割協議を速やかに完了させることは困難であることを述べました。今回は、再び、平成28年12月19日の判例をとりあげ、遺産分割協議の対象財産について、述べたいと思います。本稿では、可分な財産と不可分な財産の線引きを決めているのは、蓄積された判例であることを述べました(本稿002)。言い換えれば、相続開始と同時に

          007 遺産分割協議の対象財産

          006 相続の高齢化

          前回は、遺産分割協議においては、調査や相続人間における意見の調整を行うだけでも数ヶ月があっという間に過ぎてしまい、多くの相続において、遺産分割協議を早々に完了させることは簡単なことではないということを述べました。今回は、遺産分割協議の完了を難しくしている事情について、さらに述べたいと思います。平成28年12月19日の判例によれば、遺言がない場合、相続預貯金を取得する人を決定するためには、相続人全員参加による遺産分割協議を完了させなければなりません。ここで立ちはだかる壁は「相続

          006 相続の高齢化

          005 遺産分割協議における課題

          前回は、平成28年12月19日の判例を背景として、相続預貯金を、相続開始の後、速やかに活用したいと思う相続人は、速やかに遺産分割協議を完了させなければならないことを述べました。速やかな遺産分割協議の完了は誰もが望むところですが、今回は、多くの相続において、遺産分割協議の完了までには時間を要していることについて、述べたいと思います。遺産分割協議を行うためには、その前提として、相続財産の全貌を知らなければなりません。亡くなった人が財産の一覧表のようなものを残してくれていれば別です

          005 遺産分割協議における課題

          004 相続預貯金の払戻しと遺産分割協議

          前回は、平成28年12月19日の判例を紹介し、この判例により預貯金は不可分な財産であると結論づけられたこと、現在の各金融機関における相続手続きはこの判例の考え方に則って実践されていることを述べました。今回は、この判例の具体的な影響について、さらに述べたいと思います。平成28年12月19日の判例は、遺言がない場合、相続財産である預貯金(相続預貯金)を誰が取得することになるかは、相続人による遺産分割協議により決まることを判示しました。言い換えれば、相続人による遺産分割協議が完了す

          004 相続預貯金の払戻しと遺産分割協議

          003 平成28年12月19日の判例

          前回は、相続における法律と判例の関係、相続における可分な財産と不可分な財産の線引きを決めているのは蓄積された判例であることを述べました。今回は、その蓄積された判例の中でも特に重要度の高い「平成28年12月19日」の判例について、述べたいと思います。この裁判では、共同相続された(相続人が複数人の場合の相続財産である)預貯金が遺産分割の対象となるかが争われました。最高裁判所の結論は、共同相続された預貯金は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象と

          003 平成28年12月19日の判例