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003 平成28年12月19日の判例

前回は、相続における法律と判例の関係、相続における可分な財産と不可分な財産の線引きを決めているのは蓄積された判例であることを述べました。今回は、その蓄積された判例の中でも特に重要度の高い「平成28年12月19日」の判例について、述べたいと思います。この裁判では、共同相続された(相続人が複数人の場合の相続財産である)預貯金が遺産分割の対象となるかが争われました。最高裁判所の結論は、共同相続された預貯金は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる、という結論でした。この裁判では、要するに、預貯金が、相続における可分な財産(2分の1や3分の1といった法定相続分に従って「スパッ!スパッ!」と割り切れる財産)であるか不可分な財産(割り切れない財産)であるかが争われました。可分な財産であるという考え方に立てば、被相続人(亡くなった人)の預貯金は、相続開始と同時に法定相続分に従って相続人に対して分割して承継され、各相続人は、相続人による遺産分割協議を待つことなく、単独で、自ら承継した分について(法定相続分に従って)預貯金の払い戻しを求めることができると考えられます。これに対して、不可分な財産であるという考え方に立てば、被相続人の預貯金は、遺言により取得する人が指定されていなければ、相続人による遺産分割協議を経なければ誰が承継する財産かは決まっておらず、相続人による遺産分割協議が完了するまでは、各相続人は、単独では、預貯金の払い戻しを求めることはできないと考えられます。この平成28年12月19日の判例は、預貯金は不可分な財産である(後者の考え方)、と結論づけたのです。この判例の結論は、金融実務に大きな影響を与えました。現在の各金融機関における相続手続きは、この判例の考え方に則って実践されています。

この判例について、さらに詳細な情報を必要とされる方は、裁判所のウェブサイトの裁判例検索をご参照いただければと思います。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

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