005 遺産分割協議における課題
前回は、平成28年12月19日の判例を背景として、相続預貯金を、相続開始の後、速やかに活用したいと思う相続人は、速やかに遺産分割協議を完了させなければならないことを述べました。速やかな遺産分割協議の完了は誰もが望むところですが、今回は、多くの相続において、遺産分割協議の完了までには時間を要していることについて、述べたいと思います。遺産分割協議を行うためには、その前提として、相続財産の全貌を知らなければなりません。亡くなった人が財産の一覧表のようなものを残してくれていれば別ですが、一般に、子供は親の財産の詳細をよく知りませんので、相続人が相続財産の全貌を把握すること自体、簡単なことではありません。ここから時間を要することになります。そして、相続財産の全貌が掴めた後にも様々な課題が生じます。預貯金等は額面通りの経済的な価値があると判断できますが、土地や建物といった不動産、自動車等の動産、さらには事業用の資産等、亡くなった人によって様々な資産を保有していることがありますが、これらの様々な資産の評価額をいくらと定めるかについて、相続人の意見をすり合わせることもなかなか難しいことです。例えば、自宅不動産を想定すると、相続税路線価によるか、固定資産税評価額によるか、あるいは、不動産会社に査定を依頼するか、いろいろと考え方がありますし、そもそも、売却する予定がない自宅不動産をいくらと評価したらよいかという課題に対して明確な答えはありません。このような調査や相続人間における意見の調整を行うだけでも、数ヶ月はあっという間に過ぎ去ってしまいます。遺産分割協議を完了させるための課題はまだまだありますが、多くの相続において、遺産分割協議を早々に完了させることは簡単なことではないということは、ご理解いただけるのではないでしょうか。
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